カーボンニュートラルに逆行!? スズキソリオがストロングハイブリッドを廃止した理由と今後の動向

 2020年11月にスズキで最も販売台数が多い小型車のソリオがフルモデルチェンジで刷新された。

 標準タイプとエアロのバンディットというラインナップは同じだが、旧型ではマイルドハイブリッドとストロングハイブリッドの両方をラインナップしていたが、新型ではストロングハイブリッドが消滅してしまった。

 世界的にカーボンニュートラル、電動化に舵を切っているなか、なぜスズキは燃費性能に優れるストロングハイブリッドを消滅させたのかが謎だ。

 今後スズキからはストロングハイブリッドが消滅するのか? または新たなストロングハイブリッドが登場するのかなども含め、ソリオからストロングハイブリッドが消滅した理由について考察していく。

文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI

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スズキの2020年の小型車販売は10万台超え

2020年、スズキの小型車で最も売れたソリオ&ソリオバンディット。2020年11月にフルモデルチェンジして登場

 スズキは軽自動車を中心に販売するメーカーだが、最近は小型/普通車にも力を入れる。2020年に国内で新車として売られたスズキ車のうち、17%を小型/普通車が占めた。登録台数は10万台を上回り、スバルの小型/普通車よりも多い。

 今の国内販売状況を見ると、軽自動車比率を高めるメーカーが増えた。ホンダの場合、2020年に国内で新車として販売されたクルマの53%が軽自動車だ。日産も43%に達するが、軽自動車が中心のスズキは小型/普通車へのシフトを進めている。

 その理由は、今後の軽自動車需要が不透明であるからだ。軽自動車税は、乗用車の場合、以前の年額7200円から1万800円に値上げされた。

 そのいっぽうで自動車税は値下げされ、排気量が1L以下の小型乗用車は、従来の2万9500円から2万5000円へ大幅に下がった。軽自動車税の割安感が以前に比べて薄れている。

 ダイハツもスズキと同様、最近は小型車に力を入れる。ダイハツの2015年の小型/普通車登録台数は、1年間にわずか1624台だったが、2020年は5万6054台まで増えた。5年間で35倍に急増しており、この背景にも今後の軽自動車需要の不透明感がある。

スズキでいま最も売れているのがスペーシア。軽自動車の販売は今後不透明でありスズキも危惧している
最近では小型車にも力を入れているスズキ。2020年に登録された新車の17%は小型・普通車が占めている

新型からはストロングハイブリッドが消滅

先代ソリオはストロングハイブリッド/マイルドハイブリッドの2パターンを用意。新型はマイルドハイブリッドに一本化された

 そして2020年にスズキで最も多く売られた小型/普通車がソリオであった。ソリオは歴代モデルにわたり全長と全幅が小さく、なおかつ全高は1700mmを上回る。運転しやすいコンパクトなボディと、広い室内を併せ持つ。

 後席側のドアは、2世代前からスライド式を採用して、スペーシアのような背の高い軽自動車、あるいはミニバンに準じた空間効率と使い勝手を備える。ソリオは軽自動車の空間効率を生かしたクルマ造りで、売れ行きを伸ばした。

 ソリオは2020年11月にフルモデルチェンジを行ったから(発売は12月)、2020年の大半は先代型を売っていた。売れ行きが最も下がる時期だが、登録台数は1カ月平均で3362台となり、インプレッサを上回った。

 先代ソリオは、2015年にマイルドハイブリッドを搭載して発売され、2016年にはストロングハイブリッドも追加した。2種類のハイブリッドを用意する車種は珍しい。

 ところがフルモデルチェンジされた新型ソリオには、ストロングハイブリッドが用意されない。

 これから2030年に向けて、規制に対応する意味でも燃費性能を向上させる必要があるが、新型ソリオは本格的なストロングハイブリッドを廃止した。背景にはどのような理由があるのか。

先代から全長を70~80mm延長し、後席と荷室を拡大。居住性アップを図った

販社はストロングハイブリッドを積極的に売らなかった!?

 この点を開発者に尋ねると、「ソリオ全体に占める(ストロングハイブリッドの)比率は、5~10%と低かった。売れ行きが伸びなかったから廃止した」という。

 ストロングハイブリッドの比率が低い理由として、マイルドハイブリッドと比べた時の燃費と価格のバランスがあった。

 先代ソリオのストロングハイブリッドの価格は、マイルドハイブリッドに比べて22万円ほど高かったが、当時のJC08モード燃費はストロングハイブリッドが32.0km/L、マイルドは27.8km/Lであった。

 そうなるとレギュラーガソリン価格が1Lあたり140円、実用燃費をJC08モードの85%で計算して、価格差を燃料代の差額で取り戻すには27~28万kmの走行を要する。ストロングハイブリッド搭載車を購入しても、燃料代でトクをするのは難しい。

旧型ソリオのストロングハイブリッド搭載車に組み合わされていた5AGSはCVTと運転感覚が異なり、賛否が分かれた

 トランスミッションの違いもあった。ストロングハイブリッドに組み合わせるのは、5速AGS(オートギヤシフト)だ。1組のクラッチを使う有段式の電子制御ATになる。

 このATは、マイルドハイブリッドが搭載する一般的なCVT(無段変速AT)に比べると、加速時のシフトアップが滑らかに行われにくい。シフトアップに時間が掛かり、エンジン回転を下げてしまうからだ。

 そこでスズキの5速AGSは、シフトアップのタイミングを見計らって、反応の素早いモーターの駆動力を強める制御を行う。

 この効果により、1組のクラッチを使う有段ATの中では加速を滑らかに仕上げたが、それでも多くのユーザーが使い慣れたCVTとは運転感覚が違う。アクセルペダルを穏やかに操作すれば不満はないが、ラフに扱うと違和感が生じやすい。

 こういった事情があるため、販売店では、「お客様にストロングハイブリッドを積極的に推奨する売り方はしていない」という。販売比率も前述の5~10%と伸び悩み、新型ソリオはストロングハイブリッドを採用しなかった。

スイフトのストロングハイブリッドは継続!?

ストロングハイブリッド搭載のスイフトハイブリッドSZ。マイルドハイブリッドとの燃費差は2km/Lだが、価格はストロングハイブリッドのほうが20万7900円高い

 現時点でストロングハイブリッドを搭載するスズキ車は、スイフトハイブリッドSZのみだ。販売店によると、「スイフトで好調に売れるグレードはRSとXGになる。ストロングハイブリッド(SZ)は、価格が200万円を超えることもあってあまり売れていないが、廃止する話も聞いていない」という。

 スイフトの場合、マイルドハイブリッドのWLTCモード燃費は21km/L、ストロングハイブリッドは23km/Lだ。燃費数値は2km/Lしか違わないが、価格はストロングハイブリッドが20万7900円高い。

 こうなるとストロングハイブリッドは割高と受け取られ、先代ソリオと同様、大半のユーザーがノーマルエンジンかマイルドハイブリッドを選ぶ。

スズキとダイハツがトヨタのハイブリッドを搭載する可能性

ヤリスハイブリッド(ストロングタイプ)のWLTCモード燃費は35.4~36km/L

 このように見てくると、ソリオがストロングハイブリッドを廃止したことは仕方なく思えるが、ほかのコンパクトカーの多くは、いずれも成功させている。

 例えばヤリスのハイブリッド(ストロングタイプ)は、WLTCモード燃費が35.4~36km/Lに達する。

 ヤリスハイブリッドなら、スイフトのストロングハイブリッドに比べて、数値上は燃料代を35%節約することが可能だ。二酸化炭素の排出抑制を含めて、環境性能も優れ、燃費規制でも有利になる。

 ヤリスハイブリッドの価格は、1.5Lノーマルエンジンに比べて約37万円高いが、装備の違いと購入時の税額を補正すると実質差額は約30万円に収まる。

 こうなるとスズキも、燃費性能の優れたストロングハイブリッドを用意せねばならない。スズキはハイブリッドが得意なトヨタと業務提携を結んでおり、パーツの共通化などにより、高効率と割安価格を両立できる可能性もある。

 さらにいえば、ダイハツもマイルドハイブリッドを含めて、電動機能を備えた車種を自社開発していない。開発中という話も聞かれるが、問題はコストだ。高コストでは価格も高まり、軽自動車や低価格のコンパクトカーには搭載しにくい。

 そこで新たに高効率で低コストのストロングハイブリッドを開発し、業務提携を生かして、スズキとダイハツで共同利用する方法もあるだろう。

 このような量産効果に基づくコスト低減の手段を取らないと、低価格車にストロングハイブリッドを搭載するのは難しい。

 共通化を進めてコストを抑えながら、メーカーやブランドの個性をしっかりと打ち出すクルマ造りが2021年には進化しそうだ。

RAV4のOEM、スズキアクロス。スズキはトヨタと業務提携を結んでいる。部品の共通化を進めれば、環境性能に優れたトヨタのストロングハイブリッドを導入することも不可能ではない

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