リーフが危ない!? テスラ156万円値下げの真実と今後の見通しは?

テスラは今後も値下げを続けるのか?

テスラのクロスオーバーSUV、モデルX。鷹の翼のように開くファルコンウイングドアを採用
テスラのクロスオーバーSUV、モデルX。鷹の翼のように開くファルコンウイングドアを採用

 テスラの生産台数も影響を与えた。2015年は5万台だったが、2017年には10万台になり、2019年は36万台、2020年はさらに1.4倍増えて約50万台に達した。5年間で生産台数を10倍に急増させたことによるコストダウンも、テスラの価格低減を可能にした要素になる。

 テスラの大幅な値下げを見せられると「ほかの電気自動車やプラグインハイブリッドも値下げできるのでは?」と期待するが、テスラは特殊な事情と見るべきだ。

 ほかのメーカーは長年にわたり、競争しながらクルマを造ってきた。価格も既に落ち着いた状態にあり、各カテゴリーともに、売れ筋の車種やグレードは狭い価格帯に集中する。

 身近な車種でいえば、N-BOXやタントのようなスーパーハイトワゴンの軽自動車は、標準ボディの150万~160万円が売れ筋だ。NAエンジンを積んだヤリスやフィットのようなコンパクトカーのノーマルエンジン車では、170万~180万円に割安な売れ筋グレードが集まっている。

 ところがテスラは2015年が5万台、2020年は50万台という生産台数から分かる通り、急速に成長しているメーカーだ。そのために量産効果に基づく大幅な値下げも可能になった。それでも限りなく値下げを続けられることはなく、時間が経過すれば落ち着く。

 今後日本における販売台数をさらに増やそうとすれば、先に述べた販売網を充実させねばならない。その結果、販売台数が増えて量産効果も高まり、さらに値下げすることも考えられるが、逆の場合もある。

 販売網の整備に費やされるコストが高額になると、それが価格に転嫁されるからだ。営業関連のコストが日本におけるテスラの小売価格を高める可能性も否定できない。

 はたしてテスラは、大幅な値下げによって売れ行きを伸ばすのか。日本では総世帯数の40%が集合住宅に住むので、現時点では充電設備を設置しにくい。

 しかも輸入車は、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府などの都市部で好調に売れている。上記4都府県の登録台数を合計すると、2020年に国内で新車として販売された輸入車の40%を占める。そして都市部には集合住宅が特に多く、総世帯数の70%以上に達する地域もある。

 つまり日本では、電気自動車の輸入を活発化するのは、現時点では非常に難しい。この障壁をテスラが乗り越えたとすれば、快挙であり、今後の電気自動車の開発や販売、輸入車の売り方にも大切なヒントを与えるだろう。今後の動向に期待したい。

日本未発売のコンパクトSUV、モデルY
日本未発売のコンパクトSUV、モデルY

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まとめ/編集部

 今回、日本でのテスラの値下げが大きく報道されたが、実はアメリカや中国、欧州では複数回の値下げが行われている。近々では、2021年2月17日にテスラはアメリカのwebサイトで値下げを発表(日米同時)していたのだ。

 モデル3のスタンダードレンジプラスは2.6%値下げされ3万6990ドル(約390万円、1ドル=105円換算、以下同じ)、パフォーマンスバージョンは1.8%値上げされ5万5990ドル(約590万円)、2020年5月の値下げでは対象外だった日本未導入のモデルY「スタンダードレンジ」は4.8%値下げされ3万9990ドル(約420万円)、モデルYのパフォーマンスバージョンの価格は1.7%値上げされ6万990ドル(約640万円)となった。

 一方、中国では2021年1月1日、モデルYを発売したが、2020年8月に発表した予定価格から大幅に引き下げられていた。ロングレンジは48万8000元(約780万円、1元=16円換算、以下同)から33万9900元(約545万円)と235万円の値下げ、トップグレードのパフォーマンスは53万5000元(約856万円)から36万9900元(約592万円)と264万円もの大幅値下げである。

 今回、中国ではモデル3の値下げは今のところ発表されていないが、過去1年間に2度の値下げが行われている。現在の補助金適用後の販売価格はスタンダードレンジプラスが24万9900元(約399万円)から、ロングレンジが33万9900元(約544万円)となっている。

 こうしたテスラの頻繁な値下げは、静観していた人達にとっては、値下げによって購入意欲が増した一方、すでに購入したユーザーの反感が出てくるのでないか。

  しかし、中国では今後、生産能力が拡大し、1台あたりのコストがますます下がっていくことを鑑みると、これからも値下げが進んでいくことは当然の流れだろう。

 現に中国テスラの朱総裁は、中国紙のインタビューで生産能力の拡大や技術革新が続けばテスラ車の価格は下がり続けると発言している。さらに2万5000ドルのモデル3に代わる最廉価モデルが登場するとの情報も入ってきている。

 ただ、上海ギガファクトリーで生産されたモデルに対し、バッテリー発火や異常加速があり、中国の市場規制当局から行政指導を受けたり、上海ギガファクトリーで生産されたCATL製のリチウムイオン電池を搭載したモデル3が低温時に航続距離が延びないという報告が上がっている。テスラはいずれも改善を行っているが、こうしたハード面についても今後、注意深く見ていく必要がある。

【画像ギャラリー】プレミアムEVの先鞭をつけたテスラの歴代モデルとこれから発売されるモデル

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