【Q2】内燃機関ではカーボンニュートラルは達成できない?
これも一見すると正しいように思えるけれど、実際には間違っている情報だ。
材料の採掘から精製、成形して部品にするまでの間には、電力や輸送の燃料などあらゆる部分でエネルギーを消費する。プラスチックなら一般的には石油から作られるし、鉄やアルミなどの金属は精製時に電力をたくさん使っている。
EVに搭載されているリチウムイオンバッテリーは、リチウムの精製時やバッテリーを製造する際にたくさん電力を消費する。
さらに耐久消費財としての寿命を迎えたクルマはリサイクルされることになる。クルマは全体の95%がリサイクルされる、リサイクルでは優等生と言われるものだ。断熱材(これ自体がリサイクル素材が多いのだが)以外はほとんどの部品がリサイクルされているが、リサイクル時にもたくさんの電力を使う。
こうして素材の製造から廃車のリサイクル時まで含めた、トータルなCO2の排出による環境への影響を評価するのが、LCA(ライフサイクルアセスメント)なのである。
こう考えれば、製造時や使用時、リサイクル時にCO2を排出する電力を使用していれば、EVもカーボンニュートラルとは言えないことになる。
一方、エンジン車でも製造時やリサイクル時は再生可能エネルギーによる電力を使い、燃料はバイオ燃料やeフューエルなど合成燃料を使えば、完全なカーボンニュートラルを実現できることになる。
日本の電力の半分が再生可能エネルギーによるグリーン電力になっても、クルマの生産やリサイクルがすべてグリーン電力で賄える訳ではないから、実際にはなかなか実現は難しいが、理論上はそういうことなのだ。
なんだか矛盾してしまうようだが、EVでカーボンニュートラルを達成できる社会が実現できる頃には、エンジン車もほぼカーボンニュートラルを実現できてしまうかもしれない。
【Q3】電動化にはハイブリッドは含まれない?
これはおそらく中国のNEV規制(新エネルギー車=EVの販売を促進する規制)が影響しているもので、間違っているというより、古い情報だ。
電動化というのは、電気モーターだけで走るクルマにする訳ではなく、走行のための駆動力にモーターも利用すること全てを含むことを意味する。エンジンだけで走っていたクルマにモーターを追加してハイブリッド化することも電動化なのである。
それでも電動化の目的がCO2排出量を抑えることであり、マイルドハイブリッドのように走行中のごく限られた領域だけモーターでアシストするような仕組みでは、なかなか充分な燃費性能にまで引き上げられないから、中国のNEV規制はプラグインハイブリッドとBEVだけを電動化車両として優遇するようにした。
けれども、これは自国の産業保護という側面もあって、実態にそぐわない部分もあるため中国のNEV規制では、ハイブリッド車もNEVに含むように今年、改訂されている。
日本が目指すカーボンニュートラルへのロードマップにはクルマの電動化が大きな柱になっているが、こちらにもハイブリッド車は含まれている(というか政府内でも理解が進んでいない、という噂も…)。
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