驚愕の7年ぶり高値! 今入れるか もう少し待って入れるのか どっちが正解?

驚愕の7年ぶり高値 ハイオク176円 レギュラー165円! 今入れるか もう少し待って入れるのか どっちが正解?

 資源エネルギー庁が10月20日(水)に発表した10月18日(月)時点での全国平均の店頭現金価格はレギュラーガソリンが164.6円、ハイオクガソリンが175.5円と7週連続で値上がりし、2014年7月以来、7年ぶりの高値となった。

 クルマを生活の足にしているユーザーはもちろん、コロナ禍が落ち着き、やっとドライブに出かけられると思っている人には厳しい状況だ。

 そこで、なぜこれほどガソリン価格が高騰しているのか? その要因と、今後まだまだガソリン高騰が続くのか、迫ってみた!

文/柳川洋
写真/柳川洋、Adobe Stock (トビラ写真/mikitea@Adobe Stock)

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■7年ぶりに高値更新! 全国のガソリン平均価格はレギュラー164.6円、ハイオク175.5円!

都心のガソリンスタンドの看板。レギュラーガソリン価格は166円、ハイオクガソリンが177円と全国平均とほぼ同等。出所:筆者撮影

 コロナの緊急事態宣言も終わり、「週末久しぶりにドライブ行こう」と思ってお出かけになられた方も多かったことだろう。

 自分の好きなタイミングで好きなところに自分のクルマで行かれて、好きな人に会ったり好きなことをする、というこれまで当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではなく、ありがたいことだったことを今回のコロナ禍で改めて気付かされた。

 だが同時に、否応なく気づかされるもう一つのことがある。ガソリン価格の高騰だ。久しぶりに愛車を満タンにしてみたら、お支払いが1万円を軽く超え、驚かされたと同時に懐にも大きなダメージを受けた。高速道路のSAでの給油だったからかな、と思い、下道のガソリンスタンドの価格を見てみたけれどあまり変わらず、ハイオク170円台、レギュラー160円台が当たり前。

 以下のグラフは、資源エネルギー庁が毎週発表している給油所小売価格調査による、過去10年間のガソリン価格の推移。

わずか1年半前には125円ほどだったレギュラーガソリン全国平均価格は現在165円、3割を超える値上がりだ。出所:資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」

 最新の10月18日時点での全国のガソリン平均価格は、レギュラー164.6円、ハイオク175.5円と7年ぶりに高値を更新。

 離島が多く、ガソリンが全国で最も高い長崎県では、レギュラーでリッター170.4円、ハイオクで181.2円。この水準が続くと、クルマがないと生活できない地方を始め、我々の家計に大きく影響する。

 このガソリン価格の上昇の理由と、値段の高騰は一時的なものなのか、しばらく続くのだろうか、専門家である、グローバル金融機関の商品(コモディティ)トレーディングアジア統括責任者X氏と、国内元売り大手製油所の責任者Y氏に話を聞いてみた。

■コロナで抑えられていた需要が急激に顕在化したことが急騰の短期的要因

 話を聞いたのは、グローバル金融機関で商品トレーディング部門のアジア統括責任者をしているX氏。匿名を条件に石油高騰の要員を分析してもらった。

 中国、日本、オーストラリアからインドまで、アジアの有名企業やヘッジファンドなどの顧客相手に、原油・LNG・石炭・鉄鉱石・貴金属などのトレーディングを行なっている、業界歴四半世紀以上のプロ中のプロだ。

筆者:「突然ですが、最近ガソリンが高くなっている理由ってなんですか?」

X氏:「短期的な理由と、中長期的な理由が絡み合って値段が上がっている、ということだと思います。

 日本のガソリンは、中東からの原油で作られています。中東ドバイの原油先物価格の円建て価格の推移を見ればわかる通り、現在の価格水準は、過去5年でのほぼ最高値圏。最近一番の安値だった2020年4月下旬のおよそ4.5倍まで上昇しています」

コロナショックで相場が急落してから直近までの円建てドバイ原油価格の上昇幅は4.5倍にもなった。出所:各種公表資料より筆者作成

 さらにX氏はこう続ける。

X氏:「この価格上昇の短期的な理由の一つは、コロナのペントアップデマンド。つまりこれまで新型コロナ感染拡大のせいで抑え込まれていた世界中の需要が、感染が下火になったことで一気に息を吹き返してきたことによると思います。

 結果、経済が活発になり、鉱工業生産も輸送量も増え、ガソリンや原油の需要が急増していあす。たとえば、コロナ禍では海外製の製造機械が故障してもエンジニアに修理に来てもらえなかったのが、移動制限の緩和で国を跨いでクルマや飛行機に乗って現地に行かれるようになりました。

 アメリカではワクチン接種済みの外国人ビジネス客・観光客の受け入れが来月から始まるため、世界中の航空会社がチケットの売れ行きを見ながらジェット燃料の購入量を増やす検討を始めています。

 加えて中国では、あと4ヵ月後に北京冬季オリンピック・パラリンピックが行われます。だから、大気汚染防止のために発電量の7割を占める石炭火力に使われる石炭の生産を制限していました。

 だがコロナ後エネルギー消費が急増したせいで、このままでは燃料足りなくなるのでヤバイ、やっぱり石炭作ろう、となったが、炭鉱は一度生産を止めると再開するには時間がかかるうえ、最近鉱山での事故が相次いだせいで、安全対策に念を入れる必要もあります。

 その結果、中国のモノづくりの中心地、国内総生産の11%を占める広東省を含む多くの地域で、電力不足が深刻化して工場の操業時間が制限されるなど、深刻な影響が起きています。当然電力・石炭不足を補うため、石油や天然ガスへの需要が急増している状況にあります」

筆者:「それはまた値段がめちゃくちゃ上がりそうな材料ですね」

X氏:「その通りです。価格は需要と供給で決まるけれど、需要サイドだけでなく供給サイドも逼迫しています。OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどのOPEC非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は、最近の石油価格の上昇と、アメリカからの「増産しろ」というプレッシャーがあったにもかかわらず、大して供給を増やさなかったのです」

筆者:「どうしてですか? 今原油を増産すれば、高値で売れて儲かりそうなのに。」

X氏:「さまざまな理由があるけれど、一番大きいのは、たくさん増産すると決めると、一転して供給過剰になるかもしれないから。2020年初めにコロナのせいで原油価格が暴落した時、OPECプラスで減産に合意して価格を維持しようとしましたが、ロシアが抵抗したために減産がうまくいかず価格の下落が止まらなかった。

 その記憶もまだ新しいので「たくさん作ってOK」となったら、みんなが一気に増産して急激に値崩れするかもしれないという警戒感が強く出てきて、現在は様子見をしている状態です」

著者:「暑くて“強”にしたら凍えるほど寒くなって、“弱”にするとまた超暑くなる、昭和のクーラーみたいですね」

X氏:「本当にそうですね。また8月末に大型のハリケーン“アイダ”がアメリカの産油地帯であるメキシコ湾岸を襲ったせいで、石油の生産量が2005年以降で最大の落ち込みになり、アメリカのガソリン在庫もここしばらくの最低水準に近いところまで減少している状況だから、値段が上がりやすい状況になっています」

2020年はコロナのせいでガソリンがダブついていたが、今年は季節要因を考慮しても過去5年のレンジで見てアメリカのガソリン在庫は最低水準に近い。出所:アメリカエネルギー情報局石油在庫統計より筆者作成

筆者:シェールオイルの生産量増加も影響しているのでしょうか?

X氏:「これまでは、需給が引き締まって原油価格が上昇すると、アメリカでシェールオイルの生産が増えてマーケットを冷ましていたんだけれど、民主党政権になってからシェールオイル・ガス採掘の環境規制も厳しくなったこととコロナによる人手不足、物流の混乱で、シェールオイルの供給も限られています」

 欧州・イギリスも酷い。イギリスではブレクジットの混乱の余波とコロナのせいで、大型トラック免許の更新試験が止まり、また移民が多かったトラック運転手が欧州大陸から来ることができなくなり、不安になった消費者がパニック的にガソリンスタンドに殺到。9月終わりから10月にかけてガソリンスタンドの多くでガソリンが売り切れ、社会問題化し、軍がガソリン輸送で動員されたほどでした。

 欧州の主要なエネルギー源である液化天然ガスの在庫も、昨年からずっと低水準だったところに、再生エネルギーへのシフトが大きく進んでいる南欧で異常気象が発生。夏場の天候が冴えず、太陽光や風力の発電量が低迷して電力不足が起きた。そのせいでスペインの電気料金は3倍に跳ね上がっています」

筆者:「今から北半球では冬を迎えてエネルギーへの需要が高まるのに大丈夫ですか?」

X氏:「今年はラニャーニャ現象が発生して寒い冬になるといわれているのも気がかりです。OPECプラスが近いうちに増産に踏み切れば、当面はなんとかなるかもしれないけど、年内にガソリンの値段が一気に下がるというのは、よほどのことがない限り考えにくいですね」

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