池袋暴走事故で実証 事故時の車両情報を記録する2022年7月からEDR装着義務化へ 何がどう変わる?

■EDRって誰が、どう調査するの?

研修ではボッシュ社の営業車であるプリウスを使ってEDRに記録されたデータを読みだしていく
研修ではボッシュ社の営業車であるプリウスを使ってEDRに記録されたデータを読みだしていく
EDRのデータはCDRテクニシャンないしはCDRアナリストがデータを読みだし、解析はCDRアナリストが行う。実際は所有者や弁護士の要請に基づき実施される作業だ
EDRのデータはCDRテクニシャンないしはCDRアナリストがデータを読みだし、解析はCDRアナリストが行う。実際は所有者や弁護士の要請に基づき実施される作業だ

 自分が「CDRアナリスト」資格を取ってから、多くの方々と「CDR」について話しをしてきたが、今回はそうした皆さんから聞かれた疑問点とそれへの回答と言う形で「CDR」について紹介していきたいと思う。

 まず初歩的な質問として聞かれるのが、「EDRって、誰が、どう調査するの?」ということ。「EDR」のデータの読み出しと解析は、ボッシュが認定した「CDRアナリスト」あるいは2021年11月から新たに発足した資格制度「CDRテクニシャン」でなければ取り扱えないことになっている。

 「CDRアナリスト」は、「EDR」のデータの読み出しと解析の双方が行えるのに対して、「CDRテクニシャン」は、「EDR」のデータの読み出しのみ行える。

 次に「CDRアナリスト」や「CDRテクニシャン」は、事故車両の所有者ないしはドライバーあるいは保険会社や法的機関(警察や裁判所からの命令)からの要請を受けて作業に着手していく。

 そして「EDR」のデータを読み出すには2つの方法がある。多くの場合、事故車両のOBD2コネクター(故障診断機を接続するコネクター)を経由して「EDR」のデータを読み出すが、万が一、事故車両の損傷が激しく、また電源を喪失している場合には、エアバッグ・コントロール・モジュール(ACM)を車両から取り外し、直接ACMから「EDR」のデータを読み出していく。

 いずれの場合でも「CDRアナリスト」は、読み出した「EDR」のデータに加え、従来の事故調査の定石である現場の状況、車両の損傷具合、当事者の証言などの情報を基にして事故発生前後のプロセスを再構築していく。これが「CDRアナリスト」の仕事だ。

 2021年11月下旬に行われたボッシュ主催の「CDRテクニシャン」講習会では、2022年7月から適用される「EDR」の車両への装着義務化を受け、近い将来、500人程度のCDRアナリストと4000~5000人程度のCDRテクニシャンを育成したい」と具体的なビジョンが示された。

 今後、こうした「EDR」への認知と普及が進んでいけば、これまで解決に長い時間を要した、あるいは、解決が困難だった自動車事故などの保険業務や係争がより正確かつ迅速に行えるようになる。

■EDRで何がわかるのか? ドライブレコーダーみたいなもの?

カローラツーリングの取扱説明書のなかにイベント・データ・レコーダーの説明書きがある
カローラツーリングの取扱説明書のなかにイベント・データ・レコーダーの説明書きがある

 「EDRって何?」と聞かれた場合、自分は「わかりやすく例えるなら航空機のフライトレコーダーのようなものです」と答える。すると必ずと言っていいほど、「ドラレコと何が違うの?」と聞き返される。

 その時、自分はこう答えている。「ドラレコは映像と音声の双方を記録できるけど、EDRはプライバシー保護の観点から映像や音声は記録しないです」。

 すると「えっ? 何それ?」とくるので、さらにこう付け加える。「EDRは、ドラレコじゃ記録できない車両の実際の作動状況などを常に監視しています」。

 「事故が起きた場合には、発生5秒前からの車両の作動状況(データ)を保存できます」というと、さらに顔を斜めにして、「どういうこと?」となるので、「ドラレコの映像や音声は確かにわかりやすいのですが、例えば、「オレはちゃんとブレーキを踏んでいた」とか「そんなにスピードは出してない」って言っても、ドラレコでは証明できないですよね。あくまでもその人の主観だし、曖昧な記憶でもあるわけです。

 相手方がウソを言っている可能性だってある。でも、EDRに記録されたデータは事故時の車両の状態を客観的に記録したものだから、そこに含まれている多くの情報から、ドライバーがいつ、どういう操作をしていたのか、ということがわかるし、裁判などでも客観的な証拠として使うことができる。

 このような感じで「EDR」と「ドラレコ」の違いを話していくのだが、最後にはこう付け加えている。「自らの潔白をより万全なものにするには、ドラレコのデータと併せて、客観的な車両の作動状況を記録したEDRのデータ、これら双方のデータが揃っていたほうが、より正確かつ客観的な証拠として活用できます」。ぜひ、みなさんもこのことは覚えておいてほしい。

 補足として現行カローラツーリングの取扱説明書にはEDRの説明があるので紹介しておこう。これを見ると、車両データの記録について以下のように書かれている。

 「おクルマにはイベントデータレコーダー(EDR)が装備されています。EDRは一定の衝突や衝突に近い状態(SRSエアバッグの作動および路上障害物との接触など)が発生した時に車両システムの作動状況に関するデータを記録します。

 EDRは車両の動きや安全システムに関するデータを短時間記録するように作られています。ただし、衝突の程度と形態によってはデータが記録されない場合はあります。

 EDRは次のようなデータが記録します。

・車両の各システムの作動状況
・アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作状況
・車速

 これらのデータは衝突や障害が発生した状況を把握するのに役立ちます」。

 これに加え、注意と書かれているのは以下の通り。

 「EDRは衝突が発生したときにデータを記録します。通常走行時にデータを記録します。通常走行時にはデータは記録されません。また個人情報(例:氏名・性別、年齢・衝突場所)は記録させません。

 ただし、事故調査の際に法執行機関などの第三者が通常の手続きとして収集した個人を特定できる種類のデータとEDRを組み合わせて使用することがあります」。(詳細は画像ギャラリーから)。

次ページは : ■池袋暴走事故は、EDRでどこまでわかったの?

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