■池袋暴走事故は、EDRでどこまでわかったの?
「池袋暴走事故」の裁判でもこれまで通り、多くの状況証拠が集められ、それらを検証、解析して裁判が行われている。「EDR」に関していえば、実際に事故を起こした車両の「EDR」に記録されたデータの読み出しと解析が行われた。
判決文を読むかぎり、「アクセル開度」「ブレーキ圧」「車速」「イグニッション回数」などのデータが、加害者側弁護人の指摘に対する検証資料(証拠)として用いられていた。
結論を言うと、「EDR」に記録されたデータの解析結果は明解だったようで、「アクセルペダルが最大限まで踏み込まれていた」、加えて、「ブレーキペダルが踏まれておらず待機状態にあった」と記されており、さらに、「弁護人が指摘するような可能性をうかがわせる事情は証拠上一切認められない」(いずれもカッコ内は判決分から引用)と、「EDR」のデータが示す客観的な事実を証拠として認定しているのだ。
■EDRはどこに付いているの? 後付けできるの?
「EDR」の記憶装置はエアバッグ・コントロール・モジュール(ACM)内に内蔵されていて、ACM本体はおおよそ車両の中心部分に搭載されている。これは車両に取り付けられた各種センサー類からの距離を四方均等に保つことと、車両の姿勢を検知するセンサーも内蔵しているためだ。
また、「EDR」がACMと一体化している理由は、「EDR」のデータを記録、保存するきっかけが、事故発生時に作動する乗員保護装置(シートベルト・プリ・テンショナーや各部のエアバッグ)と連携しているからだ。
実際には「EDR」のデータは、エアバッグが作動しない「非展開記録」と、作動した場合の「展開記録」の2種類に大別されるが、展開、非展開の判断は、事故の衝撃値が一定の閾(しきい)値(作動させるための一定条件)に達した時点で判断するように設計されている。
このように「EDR」は、ACMと連携した高度なシステム構成に組み込まれているので、古いクルマに「EDR」を取り付けたいと思っても、事実上、不可能と言わざるを得ないのだ。
■自分のクルマにEDRは付いてるのか? その見分け方は?
「EDR」は2022年7月以降の新型車から搭載が義務化されることが決定しているが、すでに生産、販売されたクルマでも、「EDR」のデータを読み出すことができる車両も存在する(年式、車種、仕向け地などによって異なる)。
自分の愛車に「EDR」が搭載されているかどうかを確認するには、まずオーナーズマニュアルを参照してほしい。自動車メーカーは告知義務に従い、「EDR」装着車両であれば、その車両のオーナーズマニュアルに、「EDR」に関する注意事項を記載している。その記載があれば、データの読み出しは別として、「EDR」搭載車であることが識別できる。
参考までに紹介しておくと、国産メーカーではトヨタ自動車が圧倒的に先行していて、2000年のセルシオ、アリスト、マークIIまで遡って対応できる。日産は2019年以降のデイズ、キックス、ノート、ロックス、セレナ、三菱は2007年以降のデリカD:5が対応可能だ。
一方、輸入車は、VWの場合、2018年以降のアルテオン、ゴルフ、パサート、ポロ、T-ROC、ティグアン、ゴルフトゥーラン。アウディは2018年以降のA3シリーズ(含むS3、RS3)、A6系(同S6)、A7(同S7、RS7)、A8(同S8)、Q2、Q8。BMWは2019年以降のほぼ全モデルで「EDR」のデータ読み出しに対応している。
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