本誌『ベストカー』12月26日号より月イチで始まった注目の新連載「自動車業界一流分析」。第一回は国産メーカーの中間決算から、自動車減産と利益増加の興味深いパラドックスの逆転を論考する。
※本稿は2021年11月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年12月26日号
■トヨタ、日産、三菱は上方修正、ホンダとスバルは大きな下方修正…明暗を分けた背景
トヨタ、日産、三菱が今期業績見通しの上方修正を発表できたのに対し、ホンダとスバルは大きな下方修正を余儀なくされ、明暗が割れました。
トヨタは夏以降に急激に減産拡大でニュースが盛り上がりました。
一時はどうなるかと気をもみましたが、結果が出てみれば今期の営業利益予想は2兆5000億円から2兆8000億円へと堂々の引き上げになりました。
一方、ホンダは7800億円から6600億円へかなりの引き下げで、経営陣としては汗顔の至りであったはずです。
明暗を分けた背景は半導体不足です。
今回の半導体不足には、3つのルートコーズ(編集部註:root cause、根本原因)があります。
第1にコロナ禍による世界経済の悪化を見越した、昨年夏時点でのウェファー(半導体の材料)のインプットの削減です。
第2は、デジタル化の好景気を受けた民生電機と、突然需要が期待以上に回復した自動車産業との半導体の奪い合いです。民生電機が有利だったのですが、安定して購買を継続できる優良客のトヨタは特別扱いで優遇されました。
第3は、今年夏のアジアにおけるコロナ感染拡大の影響で行なわれた都市ロックダウンです。
半導体パッケージなどにおける生産の後工程は、多くがマレーシアに生産委託されており、前工程は増産により生産量が回復しているにも関わらず、後工程のアウトプットが滞ったのです。
この第3の影響は甚大で、2021年の後半だけで国産メーカーの世界生産を200万台も減産を引き起こす原因となりました。
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