新車販売2位の実力車! 欠点まで味方に付けた!? ルーミーがメガヒットした理由

■販売好調の理由は年齢を問わず幅広い客層に受け入れられたこと

 ルーミーの販売が好調な理由は、ボディサイズと天井の高さにある。全長は3700mm(標準ボディ)と短く、最小回転半径も4.6~4.7mに収まるから、混雑した街中でも運転しやすい。その一方で全高は1700mmを上まわり車内も広い。後席を格納すると大容量の荷室になり、自転車のような大きな荷物も積みやすい。

 しかも後席側のドアはスライド式だから、乗降性も良好だ。つまりルーミーは、軽自動車のN-BOXやスペーシアを小型車サイズに拡大したようなクルマになる。

 そしてN-BOXやスペーシアが、販売ランキングで上位に入ることからも分かる通り、いわゆるスーパーハイトワゴンは人気のカテゴリーだ。軽乗用車の場合、50%以上をこのタイプが占めており、ルーミーもコンパクトカーながらスーパーハイトワゴンだから、人気を高めることができた。

ルーミーのボディサイズ及びシート配置。3.7mちょっとの全長に2.1m超えの室内長と1.35mの室内高がもたらす驚異的な広さは軽自動車で培ったノウハウがいかんなく発揮された賜物だろう
ルーミーのボディサイズ及びシート配置。3.7mちょっとの全長に2.1m超えの室内長と1.35mの室内高がもたらす驚異的な広さは軽自動車で培ったノウハウがいかんなく発揮された賜物だろう

 そしてルーミーを含めてスーパーハイトワゴンが人気を得た背景には、運転しやすいサイズ、広い室内、スライドドアの装着といった機能のほかに別の理由もある。それはミニバンで育った世代が今では大人に成長して、自分でクルマを選ぶようになり、スライドドア装着車を希望する傾向が強いことだ。

後席を利用する全て世代に優しいのが低床フロアと段差のない昇降口。ボディの構造上高いサイドシルの存在するヒンジドアでは実現困難なことをスライドドアで実現!
後席を利用する全て世代に優しいのが低床フロアと段差のない昇降口。ボディの構造上高いサイドシルの存在するヒンジドアでは実現困難なことをスライドドアで実現!

■実はミニバン世代も第2世代へ!ミニバン育ちはやはりミニバンを選ぶ⁉

 ミニバンが本格的な普及を開始したのは、初代ステップワゴンやライトエースノア&タウンエースノアなどが発売された1996年以降だ。この時に6歳で小学校に入学した子供は、1990年生まれだから、2022年には32歳になる。まさに子育て世代で、スライドドアを備えた背の高いクルマを選ぶ傾向が強い。

 メーカーの開発者は、この点について以下のように説明した。「1990年以降に生まれたお客様は、幼い頃からミニバンに親しんで育った。そのためにスライドドアを備えた背の高い2ボックスタイプのボディを好む。スライドドアを装着したクルマの人気が高まった背景には、この比較的若いお客様の需要もある」。

ルーミーに限らずミニバンで幅広く採用された後席スライドドア。もともと商用車に採用されてきたこの装備をミニバンに採用にあたって電動化により利便性を向上。市民権を得た
ルーミーに限らずミニバンで幅広く採用された後席スライドドア。もともと商用車に採用されてきたこの装備をミニバンに採用にあたって電動化により利便性を向上。市民権を得た

 スライドドアには、開閉時にドアパネルが外側へ張り出さないから狭い場所でも乗り降りしやすい、電動開閉機能を装着すると子供を抱えた状態でも乗り降りできて便利、といったメリットがある。

これもスライドドアを装着したルーミーや軽自動車を選ぶ理由になり得るが、若年層にとっては、それ以前にスライドドアがクルマ選びの基本になっている。1990年頃までのクルマ選びでは、セダンが基本だったが、今は同様のことがスライドドアに当てはまる。

■ルーミーの好調はトヨタ販売戦略にも支えられる

 次はトヨタの販売店に、ルーミーの販売動向を尋ねると、以下のように返答された。「ルーミーを購入するお客様の年齢層は幅広い。若いお客様は、運転免許を取得して、最初のクルマとして選ばれる。

子育てを終えてミニバンが不要になり、シエンタやヴォクシーからルーミーに乗り替えるお客様もいる。ヴィッツなど背の低いコンパクトカーを使うご家庭に子供が生まれて、ミニバンではなく、ルーミーに乗り替えることもある」。

 このようにルーミーは、いろいろな人達に対応できるから、売れ行きを伸ばしている。独身者、子育て世代、高齢者のすべてが便利に使えるため、一生をルーミーで過ごすことも可能だ。そこにこのクルマの凄さがある。


 トヨタの販売網と、豊富な保有台数も、ルーミーの販売が好調な理由だ。ルーミーの2021年における登録台数は、前述のように1ヵ月平均で1万1233台だったが、製造メーカーとなるダイハツブランドのトールは1232台だ。基本的には同じクルマなのに、ルーミーはトールの約10倍売られている。

兄弟車のダイハツ「トール」。このシリーズの開発・生産はダイハツが担当しているが、販売ではトヨタに大きく水をあけられている。ダイハツディーラーはやはり軽自動車販売がメインなのだ
兄弟車のダイハツ「トール」。このシリーズの開発・生産はダイハツが担当しているが、販売ではトヨタに大きく水をあけられている。ダイハツディーラーはやはり軽自動車販売がメインなのだ

ダイハツは軽自動車が中心のメーカーだが、トヨタは小型/普通車が主力で販売店も多い。シエンタやヴォクシーも扱うから、小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングの需要も豊富だ。これらの理由により10倍の差が開いた。

 また2016年に発売された時は、トヨタ店とカローラ店が販売するルーミーと、トヨペット店とネッツ店が扱うタンクに分かれていた。この後、トヨタの販売体制が変わって全店が全車を売るようになり、タンクは2020年9月のマイナーチェンジで廃止された。

 その結果、タンクの需要もルーミーに向けられ、売れ行きが急増した。2021年1~6月のルーミーの売れ行きは、タンクを廃止した直後とあって、前年の約2倍に達している。幅広いユーザーニーズに応えるスーパーハイトワゴンだから、その後の需要もあまり下がらず、今でも販売ランキングの上位に喰い込む。

トヨタ「タンク」。販売当初販売店別モデルとして「タンク」「ルーミー」が存在した。販売数はほぼ拮抗していたが、トヨタ販売店統合によりルーミーへ一本化されタンクは役目を終えた
トヨタ「タンク」。販売当初販売店別モデルとして「タンク」「ルーミー」が存在した。販売数はほぼ拮抗していたが、トヨタ販売店統合によりルーミーへ一本化されタンクは役目を終えた

次ページは : ■売れ行き好調のルーミーだが、購入にあたっての注意点もある、要チェックだ

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