380馬力の“世界最強ヴィッツ”、ヤリスWRCはどこが違う!? 何が凄い!?

380馬力の“世界最強ヴィッツ”、ヤリスWRCはどこが違う!? 何が凄い!?

ヴィッツといえば、多くの人が生活の足として使う実用コンパクトカー。海外ではヤリスの名で販売され、その名を冠した最強のマシンがヤリスWRCだ。WRCでトヨタは直近のドイツ戦での優勝も含めてここまで9戦中3勝。ポイントランキングでもヒュンダイに次いで2位につけ、チャンピオン獲得の可能性を残すなどヤリスWRCは高い競争力を誇る。

量産車のヴィッツとは“別格”の存在だが、世界最強・最速のヴィッツは、いったいどのような“クルマ”なのか? WRCドイツの現場でヤリスWRCを最近実際にドライブしたばかりという日本人ドライバー、新井大輝選手に聞いた。

取材・文:ベストカーWeb編集部
写真:ベストカーWeb編集部、TOYOTA


ヤリスWRCの運転席と助手席の間隔は軽並み!?

WRCドイツのサービスパークでマシン整備を行うヤリスWRCと新井大輝選手

ヤリスWRCといえば、言わずと知れた世界最高峰のラリーマシン、WRカーのひとつ。

現在そのマシンのレギュラードライバーは、3人とも欧州出身だが、ちょうど直近でヤリスWRCを実際に“試乗”した日本人がいる。WRCの下位カテゴリーなど欧州で武者修行中の新井大輝だ。

トヨタのラリーチャレンジプログラムのドライバーでもある彼がヤリスWRCをドライブしたのは2018年8月のこと。WRCラリー・フィンランド後に同国内で試乗する機会を得たという。

そんな新井選手にヤリスWRCの実車を目の前に、ポイントを解説してもらった。

◆  ◆  ◆

 市販車のヴィッツとヤリスWRCは、もちろん別格のクルマですが、あえて例えるなら軽トラックと4WDターボのスポーツカーくらい違います。

まずエンジンは、1.6Lの直列4気筒ターボ。WRカーは他のラリー車よりもリストリクター径※が大きく、最高出力は約380馬力に達します(※エンジンの吸気量を制限する装置、径が小さいほど吸気量は減り、そのぶん出力は絞られる)。

ただ、同じ380馬力のなかでも、パワーの使い方やトルクバンドの出し方は、考え方によって変わってきます。

そのため、「何千回転まではトルクが凄く太くて、何千回転からはトルクが薄くなってくる」といった細かい特性は、チーム・マシンによって違います。

パナソニックとミシュランのデカールが貼られた黒いパーツがカナード。また、エンジンは重心を下げるため、この角度からは見えないほど低い位置に搭載されている

では、ヤリスWRCのフロントを見てみましょう。ここで一番違うのは、カナードの部分です。

フロントのダウンフォース(車を抑えつける力)を出してあげないと、ジャンプをする時にリア下がりになってしまうため、フロントを抑えつける目的で、このような空力パーツが取り付けられています。

これが私が乗っている下位マシンと比べた大きな違いで、カナードの大きさも初期よりかなり大型化されています。

続いてはマシンの後部。大きなリアウイングがヤリスWRCの最も特徴的だと思います。このウイングは、実際にTMG(ドイツに本拠を置くトヨタのモータースポーツ部門子会社)の風洞を使い、どの位置に取りつけると効率よくダウンフォースを稼げるのかを考えられた設計になっています。

ヤリスWRCの後部。巨大なリアウイングが特徴的。タイヤは18インチのミシュラン製(ターマック仕様の場合)

もうひとつ興味深いのが車内のレイアウトです。もちろん、シートは前席の2座しかないのですが、実はこの2つのシート、車両の真ん中に寄った位置にセットされています。

イメージ的には軽自動車の車内と同じくらい左右のシートの距離が近いですね。ロールセンター(車が傾く際の中心点)を下げる目的からこのような設計になっているのだと思います。

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