■4代目はハンガリー生産の輸入車だったが、人気はイマイチ。その理由は……
インテリアの質感の低さは、バレーノもほぼ同様の傾向を持っていた。ただ、インド製のバレーノに対して、エスクード(ビターラ)はハンガリー製。バレーノがほぼ途上国向け商品であるのに対して、エスクードは欧州を含む世界各地で販売されるグローバルモデルだ。
欧州といっても経済状況はいろいろで、西欧と東欧とでは所得水準も異なるが、それにしても、エスクード(ビターラ)のインテリアはプラスチック感満点で、「東欧ではこれでオッケーなのか?」と思わざるを得なかった。
もちろん、日本ではオッケーではなかった。ライバルに対して価格が大幅に安いならともかく、エスクードは200万円台という真っ当な価格帯で売られていた。
これがラダーフレームを持つ本格派のクロカン4WDなら、まだ許される面があったかもしれないが、現行エスクードはシティ派のライトクロカン。シティ派でこのインテリアでは、戦えるはずがない。
このあたり、スズキがどのような戦略を持って商品を展開しているのか、やや理解が難しい部分があった。途上国向けの安価なクルマならともかく、先進国でこのインテリアでは到底ムリではないだろうか?
■スズキ車の販売は日本の軽を除くと途上国がメイン。質感にはコストはかけられない⁉
そこで、遅ればせながら、昨年のスズキの生産台数と販売台数の地域別の内訳を見てみた。
<生産>
日本/87万4927台
ハンガリー/10万7822台
インド/166万5811台
その他(主にアジア)/21万7092台
合計/286万5652台
実は、ハンガリー工場で生産されている台数は、スズキ全体から見ると、ごくわずかであることがわかる。
<販売>
日本/60万8381台(うち登録車は9万9213台)
欧州/23万6314台
インド/139万7249台
インド以外のアジア+その他の国々/52万1902台
合計/276万3846台
日本専用である軽自動車を除くと、先進国で売られているスズキ車は、全体の1割ほどに過ぎない。日本でもそうだったが、欧州でもエスクード(ビターラ)やSX-4 Sクロスは相当なレア車で、メインは途上国向けだったのだ。途上国では、自動ブレーキなどの先進安全装備を外し、その分安く売られている。
■フルハイブリッドとはいうものの、旧ソリオ等に設定されたAGSを使ったあの方式となる……
ビターラのフルハイブリッドモデルについては、試乗がかなわないのでなんとも言えないが、伝わってくる話を総合すると、フルハイブリッドと言っても「マイルド・ストロング」の領域で、モーターのアシストは中低速域にかぎられ、エンジン回転が少し高まるとゼロになる。EVモードも存在するが、走行可能領域は非常に狭い。
また、ミッションは6速AGS(オートギアシフト)のみ。このAGS、一時スズキは国内でも熱心に展開したが、完全に敬遠され、現在は商用車のエブリイやスーパーキャリイに残るだけになっている。
欧州でも、「なぜいまさらAGSを復活させたのか」という疑問の声が上がっているという。ビターラの48Vマイルドハイブリッドモデルには、6ATが組み合わされていたのだから、当然といえば当然だ。
燃費も、48Vマイルドハイブリッドモデル(WLTPサイクル燃費17.5km/L)に対して、フルハイブリッドモデルは、わずかな向上(同18.8km/L)しか見られない。
こうしてデータを見てみると、ビターラのフルハイブリッドは、スズキ得意の実験的なモデルだろう……という結論になる。
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