日本のコンパクトスポーツは世界一なのか?【世界コンパクトスポーツ・トーナメント戦開催!】

 このところ日本のコンパクトスポーツが盛況だ。ヴィッツのGR系、ノートやマーチのNISMO系、フィットRS、デミオ15MB、スイフトスポーツなど、Bセグメントにはキャラの立ったモデルが増えてきた。価格もそれほど高くない。

 一方、ホットハッチの本場であるヨーロッパには、VWポロGTI、ルノールーテシアRS、プジョー208GTi、ミニクーパーS、アバルト595、DS3、トゥインゴGTといったモデルが並ぶ。

 はたして、日本車のコンパクトスポーツ軍団は世界に通用するのか? 今回はベスト5やベスト10といった形式ではなく、ハラハラドキドキするトーナメント方式で、コンパクトスポーツの世界チャンピオンを決めたいと思う。

 その選者はモータージャーナリストの岡本幸一郎氏。はたして、コンパクトスポーツ世界一はどのクルマになるのか?

文/岡本幸一郎
写真/ベストカー編集部


■まずはベスト8を選び組み合わせを決める

日本、世界のコンパクトスポーツ8強に勝ち上がった車種によるトーナメントの組み合わせ

 まず、日本勢、海外勢からコンパクトスポーツの8強、ベスト8を選出した。どう絞るかも大変なのだが、そこは本質的な「走りの楽しさ」を基準に独断で選ばせてもらった。

 さらに、組み合わせは、ボディサイズ、エンジン排気量、パワー、価格なども検討しつつ、やはり、走りの楽しさの決め手ともいえるパワーウエイトレシオにしようと思った次第である。

 セレクトした日本勢と海外勢4台ずつの基本スペックは以下のとおり。

●日本車勢

■スイフトスポーツ(MT)
価格:183万6000円
エンジン:1.4L、直4ターボ
最高出力/最大トルク:140ps/23.4kgm
車両重量:970kg
パワーウエイトレシオ:8台中4位の6.93kg/ps

■ノート NISMO S
価格: 232万8480円
エンジン:1.6L、直4自然吸気
最高出力/最大トルク:140ps/16.8kgm
車両重量:1080kg
パワーウエイトレシオ:8台中6位の7.71kg/ps

■デミオ15MB
価格: 156万600円
エンジン:1.5L、直4自然吸気
最高出力/最大トルク:116ps/15.1kgm
車両重量:1020kg
パワーウエイトレシオ:8台中7位の8.79 kg/ps

■ヴィッツGRスポーツGR(MT)
価格: 229万2840円
エンジン/1.5L、直4自然吸気
最高出力/最大トルク:109ps/14.1kgm
車両重量:1050kg
パワーウエイトレシオ:8台中8位の9.63 kg/ps

●輸入車勢

■プジョー208GTi
価格: 322万円
エンジン:1.6L、直4ターボ
最高出力/最大トルク:208ps/30.6kgm
車両重量:1200kg
パワーウエイトレシオ:8台中1位の5.77 kg/ps 

■ルーテシアRSシャシーカップ
価格: 315万円
エンジン:1.6L、直4ターボ
最高出力/最大トルク:220ps/26.5kgm
車両重量:1290kg
パワーウエイトレシオ:8台中2位の5.86 kg/ps

■VWポロGTI
価格: 344万8000円
エンジン:2L、直4ターボ
最高出力/最大トルク:200ps/32.6kgm
車両重量:1290kg
パワーウエイトレシオ:8台中3位の6.45 kg/ps

■アバルト595(MT)
価格: 299万円
エンジン:1.4L、直4ターボ
最高出力/最大トルク:145ps/18.4kgm
車両重量:1110kg
パワーウエイトレシオ:8台中5位の7.66 kg/ps

 ざっと見わたしても明らかなとおり、こうも違うのかと思うくらいスペック的には海外勢が圧倒的だ。日本勢、だ、大丈夫か……?

■1回戦組み合わせ1:スイフトスポーツ×プジョー208GTi

日本を代表するコンパクトスポーツ。140ps/23.4kgmの1.4L、直4ターボを搭載。パワーウエイトレシオは6.93kg/ps

208ps/30.6kgmの1.6L、直4ターボを搭載。パワーウエイトレシオは8台中1位の5.77kg/ps。スイフトスポーツより138万4000円高い322万円

 まずはスイフトスポーツ×プジョー208GTi。いきなり本命対決といえそうな組み合わせだが、率直に申し上げて、排気量、パワーなど性能的には208GTiがだいぶ上か

 208psの1.6Lターボのプジョー208と、140psの1.4Lターボエンジンのスイフトスポーツ。プジョー208はエンジンがハイパワーなうえに、足回りがスポーティななかにもプジョーらしいしなやかさを感じさせるところも心憎い。

 なお、より走りに特化した「プジョースポール」というモデルもあるのだが、ルノーにおけるRSほど一般的でないので、ここでは通常の208GTiとした。

 対するスイフトスポーツも、走りの楽しさはすでに多方面で報じられているとおり。それをこの価格(183万6000円)で実現できたところが驚異的。その点では世界一に違いない。

 どちらもよくできているのだが、やはり200万円以下で買えるということは何事にも代え難いということで、スイフトスポーツの勝ちとしたい。

●スイフトスポーツの勝ち!

■1回戦組み合わせ2:ノートNISMO S×ルーテシアRS

140ps/16.8kgmを発生する1.6L、直4自然吸気ガソリンエンジンを搭載するノートNISMO S。e-POWERもあるがガソリンエンジンを選んだ

220ps/26.5kgmを発生する1.6L、直4ターボを搭載するルノールーテシアRSシャシーカップ。トロフィーはサーキット走行を想定したモデルで、こちらのシャシーカップはサーキットから街乗りまで両立させたオールラウンダー

 続いてはノートNISMO S×ルーテシアRSシャシーカップという、偶然にも同門対決。

 この2台、基本骨格が親戚みたいな関係にあるわけだが、ドライブした印象は別物だ。まずシャシーの味付けが対照的で、ノートNISMO Sはボーイズレーサー的な、足まわりを硬めて動きを抑えて俊敏なハンドリングを誰でも楽しめる味付けであるのに対し、ルーテシアRSは引き締まっていながらもしっとりしなやかで、乗り心地もそれほど硬くなく、それでいてより「意のまま」の走りを楽しめる感覚がある。

 ノートNISMO Sは今回の日本勢のなかでも走りはもっとも刺激的でわかりやすいのに対し、ルーテシアRSは誰でも乗りこなせるとっつきやすさと、ウデに覚えのある人も唸らせるフトコロの深さを併せ持っている。

 エンジンは1.6L、直4同士だが、自然吸気とターボゆえスペックにも大きな差がある。これは、ルーテシアの勝ちだ!

●ルーテシアRSシャシーカップの勝ち!

■1回戦組み合わせ3:デミオ15MB×ポロGTI

1.5L、直4エンジンは116ps/15.1kgmとほかのモデルに比べると非力さは否めないがけっこう気持ちいい走りをみせてくれる。パワーウエイトレシオは9.63kg/ps

2018年7月に日本デビューをはたした新型ポロGTIは歴代最強の200ps/32.6kgmという2L、直4ターボエンジンを搭載してきた。パワーウエイトレシオは6.45kg/ps

 お次はデミオ15MB×VWポロGTIと、ちょっとお堅い感じのする2台の組み合わせ。デミオ15MBは、モータースポーツベース車両として、エンジンとトランスミッションを換装したほか、装備の簡略化による軽量化などしただけでなく、ねじれ剛性を高めたほかサスペンションジオメトリーを見直すなどしていて、完成度はかなり高い。

 デミオは最高出力116ps、最大トルク15.1kgmとスペック的にはたいしたことはないが、出力特性にこだわっていて、加速感はなかなか気持ちがよい。

 対するポロGTIは、今回最大となる2Lの4気筒ターボで、ゴルフGTIと同じ排気量(ゴルフGTIは230ps/35.7kgm)ながら、ゴルフGTIのエンジンよりも1世代新しい、ミラーサイクルの概念を採り入れた第3世代のEA888型エンジン。

 もっとパワーを出せたはずのところをあえてほどほどに抑えて扱いやすさを重視したようで、排気量があるぶんトルクも太くて乗りやすい。湿式多板6速DCTもスムーズかつダイレクト感もあり、とてもよい仕事をしている。

 ちょっとクラスが違う感じ。新型ポロGTIは、歴代最速に加えて、さらに洗練されてゴルフGTIに近い走りの質感を実現していることも強みだ。

 デミオ15MBは気持ちいいクルマだが、残念ながら相手はかなり手強かった。ポロGTIの勝ち。

●ポロGTIの勝ち!

■1回戦4:ヴィッツGRスポーツGR×アバルト595

GRスポーツGRは109ps/14.1kgmの1.5L、直4自然吸気エンジンを搭載する。パワーウエイトレシオは9.63kg/ps

145ps/18.4kgmを発生する1.4L、直4ターボを搭載。パワーウエイトレシオは7.66kg/ps

 1回戦最後はヴィッツGR×アバルト595だ。ヴィッツGRはトヨタらしく、キッチリとそつなくまとまっている。足まわりはアクセルワークで姿勢を積極的にコントロールできるツウ好みの味付けで、攻めて走ったほうが楽しい。

 ただし、GRはエンジンには手を入れないのがお決まりとなっているので、むろん非力なまま。そこにあまり面白みない。

 一方のアバルトは、ご存知のとおりフィアット500のチューニング版であり、内外装もアバルトらしくドレスアップされていて見た目の魅力もある。

 ちなみにアバルト595には、145psのベースモデルのほか、165psで上級仕様のツーリズモ、180psで上級かつ高性能版のコンペティツィオーネという3モデルがラインアップする。

 ヴィッツにも、「GR SPORT」、「GR」、「GRMN」という3モデルがラインアップされているが、中堅のGRですらエンジンはノーマルのままというのがちょっと惜しい気も。その点アバルト595は、595のなかに3タイプの個性があるところがポイントだ。

 思えば欧州勢はそういうクルマが多く、今回のルーテシアRSや208GTiもそうなら、MINIにもクーパーとクーパーSとJCWという3段階が用意されている。

 やはり欧州ホットハッチの面々は層が厚いなとつくづく思う次第だが、アバルト595に話をもどすと、ベースモデルですら、その走りはなかなか刺激的だ。

 パンチの効いたエンジンとはじけるエキゾーストサウンド、キビキビとしたハンドリングなど、「痛快」という言葉がこれほど似合うクルマはない。それをユニークなデザインとともに楽しめるという稀有な存在である。

 粗削りな面も感じるものの、楽しさではピカイチだ。そつのないヴィッツGRに対し、楽しさではアバルトという感じ。優劣の問題ではないのだが、ここではその楽しさとキャラの濃さでアバルトの勝ちとしたい。

●アバルト595の勝ち!

■ベスト4準決勝対決1/スイフトスポーツ×ルーテシアRS

スイフトスポーツのコクピット。ショートストローク、クロスレシオ化された6速MTのポイントも高い

随所に赤いアクセントが入るルーテシアRSシャシーカップのコクピット。トランスミッションはデュアルクラッチの6速EDC。RSドライブと呼ばれる走行モード切り替えスイッチでノーマル/スポーツ/レースに切り替えられる

 ではベスト4の準決勝の対戦、まずスイフトスポーツ×ルーテシアRSでは、MTが選べるのはスイフトの強みだが、クルマの実力はほぼすべてにおいてルーテシアのほうが高い。

 動力性能は数値のとおりで、フットワークについても、スイフトスポーツもこのクラスでは相当にハイレベルだが、ルーテシアRSはフロントのグリップがとても高いうえにリアもよく粘って限界性能が高く、すべての操作に対してクルマが素直に反応する感覚がある。

 走りの質感も高い。スイフトスポーツは相手が悪かった。ここは負けを認めねばなるまい。ルーテシアRSシャシーカップの価格は315万円、スイフトスポーツは183万6000円。1.7倍近い価格差があるとはいえ、くぅ〜、ここで、日本車は惜しくも敗退することになった!

●ルーテシアRSの勝ち!

■ベスト4準決勝対決2/アバルト595×ポロGTI

スパルタンなアバルト595のインパネ。トランスミッションは5速MTと5速シーケンシャルAT

赤いダッシュパネルや赤いステッチが入ったステアリング、GTI伝統のタータンチェック柄シートが映えるポロGTIのコクピット。トランスミッションはデュアルクラッチMTの6速DSG

 一方のアバルト595×ポロGTIは、これまた正反対のキャラの対決。イメージどおり完成度や洗練度ではポロGTIがだいぶ上なのに対し、楽しさではアバルト595……といいたいところだが、楽しさについてもポロGTIはアバルト595とは質の違う楽しさをしっかり持っている。

 しなやかに路面を捉える足まわりと、一体感のあるハンドリング、フラット感のある走り。しかも乗り心地も上質で快適だ。やはりポロGTIの勝ち。

●ポロGTIの勝ち!

■決勝はルーテシアRS×ポロGTIの対決。日本車勢は準決勝敗退!

決勝はルーテシアRSシャシーカップと、VWポロGTIの対決となった。惜しくも日本車は準決勝どまりに終わった

 ということで、決勝は、ルーテシアRS×ポロGTIの対決。この2台はキャラクターも車格感も近く、登場から時間が経過したルーテシアRSが洗練されているように感じる面もあれば、後発のポロGTIがそのぶん進化しているように感じる面もあり、甲乙つけがたいところだが、やはりプラス400ccと新世代のグローバルプラットフォームを得た5年分のアドバンテージは確かにある。世界最強のコンパクトスポーツはポロGTIとしたい。

☆優勝はポロGTI!☆

欧州Bセグメントでありながら、ゴルフGTIと同じ2L、直4エンジンを積んだポロGTI。パワーフィールもさることながら、しなやかな乗り心地も評価された

 というわけで、残念ながら日本勢は、スイフトスポーツが準決勝で敗退し、決勝戦には残れなかったわけだが、正直ひとくちにコンパクトスポーツといっても、日本勢は海外勢とはまだ同じ土俵に上がれていないように思えてならない。

 むろん日本勢もがんばっていることは承知しているとはいえ、海外勢に比べるといろいろ見劣りする感があるのは否めない。

 そもそも圧倒的に非力な点で分が悪いし、シャシーのチューニングも、日本勢に見られる古典的な味わいもそれはそれで好まれる分野でもあるものの、海外勢のほうがだいぶ先を行っている印象が強い。

 その点では、もっともグローバルを意識したスイフトスポーツが現状の日本勢の中では異彩を放っていたことには違いなく、海外勢に一矢報いることもできていたように思う。

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