スバルの「いまの実力」と「足りないもの」5選

スバルの「いまの実力」と「足りないもの」5選

 昨年から無資格者完成検査問題や燃費データ改ざんなど、多くの問題が噴出しているスバル。これまで「職人気質で信頼性が高いメーカー」というイメージが強かっただけに、ここ最近の事件でそのブランドが大いに揺らいでいるといえよう。

 では、肝心の商品、つまり発売しているクルマはどうなのか? やはり信頼に足るべき性能ではないのか?
 本企画では、現行スバル車ラインアップ8車種(BRZ除く)を、プロの目で、それぞれフラットに「クルマとしての性能はどうか?」でチェックしてもらった。

 またその上で、(特にクルマの技術的な面で)スバルに足りないもの、改善してほしいことを5つ挙げていただいた。

 スバルの信頼は(以前と比べると)揺らいでいるかもしれないが、その回復には「商品」の力、クルマの技術と性能にかかっている。そのさらなる研鑽と向上を期待して、本企画をお送りしたい。

文/片岡英明
写真/ベストカー編集部、スバル


■スバルのクルマはいいクルマなのか、ダメなクルマなのか? 

 まず、スバル車は本質的な部分、クルマとしての出来はいいのか、片岡英明さんに評価してもらった。

●インプレッサスポーツ/G4

2018年11月2日、発売から3年目、2度目の一部改良を受け、2018年11月2日に一部改良、オートヴィークルホールド機能を追加した

 新世代のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用し、今まで以上に動的な質感を高めた。また、自慢のアイサイトに加え、歩行者エアバッグも装備する。

 エンジンは自然吸気の水平対向4気筒DOHC、トランスミッションはCVTのリニアトロニックだけと割り切った。

 だが、今主流ともいえる、ダウンサイジングターボが用意されていないし、CVTは応答レスポンスがいま一歩にとどまる。JC08モード燃費もライバルと比べると物足りない。

 ハンドリングと乗り心地の妥協点は高く、扱いやすいが、かつてのようなキビキビ感は薄れている。また、SGPの実力をまだ使いきれていないようで、路面によっては衝撃をいなしきれていない。

【10満点で8.5点】

■XV/XVハイブリッド

2018年10月に追加されたXVのe-BOXER、アドバンスグレード。145ps/19.2kgmのFB20型2Lに、13.6kgm/6.6kgmを発生するモーターを組み合わせる

 インプレッサと同じように新プラットフォームのSGPを採用し、パワートレインも基本は同じだ。エクステリアは流行のクロスオーバースタイルでなかな好評のようだ。

 XVハイブリッドは、フォレスターと同じようにe-BOXERと呼ぶハイブリッド車を追加している。XV系はX-MODEを搭載し、滑りやすい路面での走破性と脱出性能を高めるなど、走りの実力は非凡だ。

 ただ、落ち着いた身のこなしで安心感はあるが、軽快感は薄いのがタマに傷か。やはり本命は2018年11月19日、アメリカで発表されたクロストレックPHEV(日本名、XV PHEV)だろう。

 137psの2L、水平対向4気筒エンジンに118psのモーター、8.8kWhのリチウムイオン電池を搭載、航続距離は約772kmというからかなり魅力的だ。ハイブリッドシステムは、スバル自社製ではなくトヨタ製だ。

 残念ながら今のところ、XV PHEVの日本発売はないとスバルは公言しているが、インプレッサやフォレスターのPHEVモデルの発売はあるかもしれない。

【10点満点で8点】

 

●レヴォーグ

2014年4月に発表されたレヴォーグ。年次改良を重ねるごとによくなってきた。次期レヴォーグはコンセプトカーの発表がおそらく来年の東京モーターショー。市販型が2020年になる見込み

 ボディサイズにこだわる日本のユーザーのために開発されたスポーツワゴン風の5ドアHBだ。4WDだけを設定し、水平対向エンジンにはターボを組み合わせている。燃費はそれなりで、2Lエンジンにはアイドリングストップ機構もない。

 トルクベクタリングの採用もあり、気持ちいいハンドリングを身につけた。素直な挙動をみせるが、シャシーの能力がいま一歩。

 年次改良によって、ハンドリングや乗り心地が改良されてきたが、やはりSGPを搭載しているインプレッサと比べると、シャシー性能が物足りなく感じるのだ。まだ最上級モデルのSTIスポーツが登場していないが、そのモデルに期待したい。

 2020年にデビューする予定の次期レヴォーグは、プラットフォームはSGPになり、新開発のダウンサイジングターボの直噴1.5Lターボ、1.8Lターボを搭載する予定。これはかなり期待してよさそうだ。

【10点満点で7.5点】

●WRX STI

WRX STIのデビューは2014年8月と、丸4年が経ち熟成され尽くしている

 痛快な加速フィーリングと操る楽しさは格別だ。308ps/43.0kgmを発生するEJ20型水平対向4気筒ターボエンジンはパワフルで、高回転まで元気に回る。

 ハンドリングも軽快だ。タイトコーナーでも意のままに気持ちよく走れる。4WDならではの優れた接地フィールも魅力だ。だが、アイサイトは設定されていないし、アイドリングストップもないなど、時代遅れと感じることも少なくない。19インチタイヤとの相性もいま一歩。

 だが、ハイパワー4WDスポーツとしての存在は貴重だし、次期STIからEJ20エンジンが搭載されなくなるという噂も出ているから、いまのうちに味わっておくというのも手だ。

【10点満点で9点】

●WRX S4

2014年8月に登場したWRX S4。2018年9月には最上級モデル、STIスポーツを追加した

 FA20型水平対向4気筒直噴ターボエンジン(300ps/40.8kgm)は高回転の伸びとパンチ力はいま一歩だ。熟成の域に達したEJ20型ターボと比べるとマイルドな印象だが、実用域で力強いトルクを発生する。

 CVTは加減速時のフィーリングがよくなっているが、アクセルを踏み込んだ時のリニア感とターボの瞬発力がやや鈍く感じられるのが残念。

 ただデビュー当初よりも熟成に熟成を重ねてきており、現行モデルは非常にバランスがいいクルマ。特にSTIスポーツは乗り心地とパワーとのバランスに優れている。

 ハンドリングはドライバーの狙い通りに、意のままにクルマが向きを変える。が、やや過剰演出と感じ、わずらわしく感じることもある。

【10点満点で8.5点】

●フォレスター

2018年6月に登場。184ps/24.4kgmを発生する2.5L、水平対向4気筒と、145ps/19.2kgmを発生する2L、水平対向4気筒エンジンに13.6ps/6.6kgmのモーターを組み合わせたe-BOXERをラインアップ

 オフロードや雪道だけでなく、高速道路やワインディングロードでもクロスオーバーSUVとは思えないくらい気持ちいい走りをみせる。

 代を重ねるごとに国際戦略車に成長し、ボディサイズも大きくなった。全幅は1800mmを超え、駐車場によっては取り回しに苦労させられる。

 e-BOXERはハイブリッド車としては燃費が物足りないし、モーター走行の醍醐味ももう少し強調したい。また、初代から設定していたターボ搭載車やMT車が整理されたのは残念。

【10点満点で8点】

●レガシィB4

2014年10月にデビューしたレガシィB4。いまやサイズは全長4800×全幅1840×全高1500mmと日本にはあまり適さなくなってしまった

 6代目は北米市場を意識し、世界基準の大柄なボディとなっている。キャビンは後席でも広く、快適だ。

 エンジンは2.5Lの水平対向4気筒だけと割り切り、トランスミッションもCVTの6速リニアトロニックとした。ターボのようなパンチ力はないが、フラットなトルク特性で扱いやすい。

 ハンドリングは安定志向で、乗り心地との妥協点が高い。熟成を重ねてきて、まとまりのいいセダンになったが、飛び抜けた長所がなく、薄味と感じるのが弱点。

【10点満点で6点】

●アウトバック

ワゴンベースのクロスオーバーとして先駆者的な存在のアウトバック。ブラックカラーとグリーンのアクセントが新しいX-BREAK

 レガシィのワゴン版で、広いキャビンと使い勝手のいいラゲッジルームをウリにする。最低地上高200㎜を確保しているから、荒れた路面や雪道の走破性は高い。Xモードを採用したこともあり、安心感のある走りを披露する。

 しかし、シャシー性能はフォレスターなどの最新モデルと比べると物足りない。インテリアの質感もこのクラスとしては平均レベルにとどまる。

【10点満点で7点】

※BRZ/86は共同開発車のため除外しました

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