クルマの作り方 徹底解明 〜新車「開発」はどうやって進められる!?〜

  • ・新型車の開発予算っていったいいくらくらいなの!?
  • ・そもそもチーフエンジニアってどんな仕事!?
  • ・新型車のコンセプトってどうやって決まるの!?

クルマってどうやって作られているのだろう!? 

 各メーカーの工場で生産ラインにのって、自動化が進んでいて、ロボットが……。最終組み立て工場の様子はそのとおりなのだが、では、この工場の生産ラインに乗るまでには、どのような過程を経て「新車開発」は進められていくのだろうか!?

 漠然と、チーフエンジニアと呼ばれる人が陣頭指揮を執って開発チームを動かして1台の新型車が作り上げられていく……、というイメージはあるが、では、その新型車のコンセプトはどのように決められているのか!?

 1車種の新型車が世に出るまでにはいったいいくらの予算が動き、何人の人がそれに関わり、どのくらいの時間をかけて作り上げていくのか!? そんなクルマ作りの方法を解き明かしてみたい。

チーフエンジニアの仕事は「社内の調整」に明け暮れる

 ここでは新型車開発の要ともいえる「チーフエンジニア」の仕事について明らかにしよう。

 ここでは便宜的にチーフエンジニア(以下CE)という呼び方をしているが、ホンダでは「LPL」(ラージ・プロジェクト・リーダー)、日産では以前は開発主管という役職がこれに相当していたが、現在ではCPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)、CVE(チーフ・ビークル・エンジニア)、PD(プロダクト・ダイレクター)という3人に分担されている。

 CPSは企画、コンセプトの責任者、CVEは実際のクルマ作りの責任者、そしてPDは予算管理の責任者と、各分野の責任を分担し、明確化しているのが特徴となる。これは、ゴーン体制以降に実施されたもので、いわばルノー式。

 ゴーン体制前夜の日産は、他の国内メーカー同様、新型車の開発において開発主管がいっさいの責任を負うスタイルを採用していたが、その結果が不振を招いたとルノーからやってきたC・ゴーン社長は判断し、現在のシステムに変更した。

チーフエンジニアの資質

 何人ものCEに取材をすると、誰もが口を揃えて「CEに求められる資質は、洞察力と人をまとめるリーダーシップ」と答える。洞察力とは、つまり、新型車の開発はCEに委ねられるのが発表日の3~4年前。この時間で市販開始時の市場動向を予測しなければならないのだから、深い洞察力が求められるというのである。また、CEは多くのスタッフを取りまとめなければならない。

 強力なリーダーシップとはそういう意味なのだが、同時に、スタッフがなにを考えているのか!? どのように仕事を進めていきたいのかを洞察して、スムーズに仕事を進めていくための洞察力、という意味もある。人を見る能力も求められるということだ。

 また、実際のCEを見ると、多くは開発現場の経験者である。ボディ設計だったりシャシー設計だったりと出身はいろいろだが、やはりエンジニア出身者が『クルマの作り方』を知っているぶん、CEの仕事に馴染みやすいということだ。

 ただ、まれに営業畑出身のCE、企画畑出身の非エンジニア系CEも存在するが、そのような場合は、たいていエンジニア系の補佐役が付き、開発現場の状況把握をすることになる。

実は経営会議が新車開発の出発点

 新車開発のスタート地点はCEを中心とした開発チームではない。まずは経営会議で中長期戦略が練られ、どのカテゴリーにどのようなモデルをラインアップさせるか、どこで生産するのか!? 収益性はどうなるのか!? 工場の稼働率はどうなっていくのか!? なども勘案しつつ、日本国内だけではなく、どの国、地域に投入するのか!? などのマッピングを決定することから始まる。

 これが、市販開始の5~6年前のこと。

 例えば、ここで「6年後に国内市場に2ℓクラスのFR2ドアスポーツクーペを投入する」と決定したとしよう。まだまだ漠然とした、かたちのないもので、この段階ではプラットフォームやパワートレインなどの具体的なエンジニアリング的な話はいっさいない状態。

 こうした企画を渡されたCEは1から2年の時間をかけて具体的な「かたち」にしていくのだ。この段階ではまだ開発予算は付いていない。というより、開発予算の算出と提案がCEの最初の仕事となるのだ。

 CEは社内の先行開発部門に声をかけて使えそうな新技術がないかをリサーチする。デザイン部門に足を運び、デザイナーの意見を聞いたりもする。また、販売店をまわり顧客からの声を拾い上げることもする。会社が提示する漠然とした商品概要を、具体的なかたちにまとめ上げていく作業である。

 この作業に1年ないし1年半程度の時間を要する。この時点では、当然、3年後に世に出る計画の「新型車」のデザイン案などはまったくなく、あくまでもイメージを書類と口頭で説明しなくてはならない。人気車のルーテインモデルチェンジならば関わる誰もが共通のイメージ認識を持っているため、話は早いのだが、不人気車のモデルチェンジで大きなコンセプトチェンジを行う場合や、既存車にはなかった、まったくの新ジャンル車を提案する時などは、設計部門や生産部門の理解を得るのに大きな労力を要するのだという。

 あるCE経験者は「CEの仕事の大部分は社内の調整役」と断言するほど。部下にアレをヤレ、これはダメだと怒号飛び交う開発現場……、というイメージを持つ人も多いだろうが、「現実は、各部門の担当責任者に頭を下げて協力を取り付ける仕事がほとんどですよ」という。もちろん、CEそれぞれの性格や個性によっても、違ってくるだろうが、『社内調整』がCEの大きな仕事であることは間違いない。

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