【日本はスライドドア天国!!】軽からミニバンまで百花繚乱 スライドドアの利点と欠点

 日本は世界一のスライドドア天国です。軽自動車からコンパクトミニバン、Lクラスミニバンまで、実に37車種がスライドドアを採用しています。

 一度使ってしまうと、なかなか普通のドアのクルマに戻れないという人や、スライドドアなんて本当に必要なのかと、賛否両論かもしれません。

 ここで改めて、スライドドアのメリット、デメリットについて、明らかにしていきたいと思います。

文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部


■スライドドアはそもそも商用バンから生まれた

国産車で初めてスライドドアを採用したのは1964年発売のダットサン・キャブライト

 スライドドアは今や軽自動車からミニバン、ワンボックスまで、後席用ドアとして幅広く使われているが、そもそもは商用バンのために生まれたドア構造だった。

 開口部が大きく、ボディ側面から荷物を積み下ろしできるだけでなく、開いたドアが荷物を運ぶ際に邪魔になるようなことがない。さらに荷物を抱えたまま乗り降りするような使い方には、ヒンジドアよりはるかに使い勝手が良かったからだ。

 国産車で初めてスライドドアが採用されたのは1964年に登場したダットサンキャブライトというライトバン。片側(助手席側)をスライドドアにした利便性が評判になり、その後登場した初代マツダ ボンゴ(1966年)や初代トヨタ ハイエース(1967年)など、1BOX(キャブオーバー)を中心に採用されていくことになる。

1982年、日本車で初めて両側スライドドアを採用した日産プレーリー

 両側スライドドアを初採用した乗用車は1982年に登場した初代日産 プレーリー。このプレーリーは両側ともセンターピラーをなくしたため、開放感抜群だった。ただし当時の技術ではまだ剛性面で課題があったのだろう、2代目からはセンターピラーを備えた構造になっている。

 そうしてワンボックスのバンと、それをベースにした乗用車となるワゴンで普及してたスライドドアは、ある時を境に爆発的に増殖していく。そう、ミニバンブームである。1990年代のミニバンブームで本格的な普及を果たすのだ。

■スライドドアのメリット

狭い駐車場に停める際に普通のヒンジドアのクルマと違い、ドアを隣のクルマにぶつけるという心配がいらない

 駐車場が狭い日本の都市部では、ドアを開けても張り出しが抑えられるため乗降性が高いのが大きなメリットだ。室内空間を広げるために車幅を拡大すると、築年数の進んだ一戸建ての駐車場など小さめな駐車スペースに止めると乗降性が問題となるが、スライドドアならボディがワイドになっても、乗降性はむしろ向上する。

 そのため広い居住空間や、郊外型店舗への買い物でたくさんの荷物を積み込みたいファミリー層にミニバンが大ウケしたのだ。普通のドアを子供が勢いよく開けて、隣のクルマにぶつけるという心配がいらないというものも大きいだろう。

 軽ハイトワゴンでは、さらに別のメリットも生じる。限られたボディ寸法で最大のスペース効率を目指したクルマには、大開口を実現する手段としてスライドドアが最適なのだ。

 ボディは軽自動車規格でも室内広く、乗り降りも楽チン、小さなお子さんを抱えたまま乗り降りするパパやママには、圧倒的に便利。

 足腰が弱ってきたお年寄りにも、タイヤが小さくフロアが低いだけでなく、大きく乗降口が開いてつまずく心配の少ないスライドドアの軽は、嬉しい存在なのである。

赤ちゃんや小さい子供がいる家庭にはスライドドアは重宝する

■スライドドアのデメリット

ヒンジドアは自動で開閉できないが、電動スライドドアは電動リモコンで開閉することができる。ただ車種によっては開閉時間が長くイライラすることもある。ちなみにマイナーチェンジしたJPNタクシーはスライドドアの開閉時間をこれまでの6.5秒から5秒に短縮している

 しかし、スライドドアには弱点もある。スライドレールの形状で前後方向の力を使ってボディに押し付けるため、勢いが足りないと半ドアになりやすい。ミニバンなどの場合、スライドドアが重くなったり、スライド量が短くなるとさらに閉めるにはコツがいる場合もある。

 そんな弱点を解消するために採用されたのが、ドアキャッチを電動化したイージークローザーだ。ボディのストライカーをドアキャッチに当てるだけで、モーターの力でストライカーをくわえ込んでドアをしっかりと閉めてくれる。

 さらに現在はドアハンドルを軽く引っ張るだけ、室内からはスイッチひとつで開閉できる電動スライドドアが増えてきた。電動化によってドアの重量増も許容されることになったことから窓の開閉機構も組み込みやすくなり、解放感や外の風を感じたい乗員の願いも叶えられるようになった。

 こうして弱点を次々克服していったスライドドアだが、まだ完全に弱点が解消されている訳ではない。

 開口部が大きいということは、残ったボディパネルで走りを支える必要がある。つまりスライドドアのクルマは、ボディ剛性を確保するのが難しいのだ。

 現行のアルファード/ヴェルファイアでも、ボディ剛性の低さを感じるので、このあたりはいかんともし難いのだろう。欧州のミニバンではスライドドアが少数派なのは、これが最大の理由だ。

 しかしスライドドアどころか、ピラーレスでも高い衝突安全性を実現した軽自動車も続々登場しているから、やがてはボディ剛性の高いスライドドアのミニバンが登場する日が来るかもしれない。

■軽自動車だとスライドドア車は10万円ほど高くなる

 価格も異なる。装備の違いを補正して、スライドドアを備えた全高が1700mm以上の軽自動車は、1700mm以下のヒンジドアの車種に比べて10万円は高い。

 スライドドアの電動機能は片側で約5万円だから、両側に装着された仕様を選ぶと合計20万円の上乗せだ。これを高いとみるか、安いとみるか? 総合的に見ると、スライドドア車はコストパフォーマンスは高いと思う。

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