いつも「商売上手だなー」といつも思うのがスズキのラインナップ。ちょっと手を加えるだけで(もちろん開発費はかかるが)、まったく異なるテイストを演出してしまう。
特に当企画で扱うスペーシアのお化粧直しバージョン「スペーシアギア」は、昨今の「SUV風味」ブームに一石を投じた。
本格クロカンであるジムニー人気も冷めやらぬなかでの投入だけに、スズキがオフロードイメージのカテゴリーにいかに力を入れているかわかるはず。
そんなスペーシアギアのライバルである、ハスラー、キャストアクティバ、そして発表されたばかりのeKクロスの3車と比較してみました。
スペーシアギアの魅力、そしてライバルに勝っている部分は?
文:渡辺陽一郎/写真:スズキ、ダイハツ、三菱
■なんでもSUVにしとけば売れる、はある程度真実?
最近はSUVの人気が高いが、このカテゴリーの条件は曖昧だ。
ボディの下側やタイヤが収まるフェンダーの縁に黒い樹脂パーツを装着して、バンパーの下側をアンダーガード風に仕上げれば、何でもSUVになってしまう。
SUVはもともと悪路を走行できるクルマとして発展したから、ボディを守るアンダーガードにも実用性が伴ったが、今は樹脂製のファッション用品になった。
つまり今日のSUVは、クルマのカテゴリーというよりも、外観の演出方法だ。分かりやすいのはスバルXVだろう。
インプレッサスポーツをベースに、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を200mmに高めて外装パーツも装着することにより、SUVに変身させた。
こうなると何でもアリだ。いろいろな車種をベースに、SUVに仕立てられる。特に背の高い軽自動車は販売台数が多いのもあり、小型/普通車で人気を得ているSUV風のモデルを加えれば、相当な台数の上乗せを見込める。
カスタムなどと呼ばれるエアロパーツを備えたグレードは、既にほとんどの軽自動車に設定されて目新しさを失ってきたから、SUVに仕立てたモデルが増えている。
最初に成功したのは、2014年に発売されたスズキハスラーだ。車内の広さやシートアレンジは先代ワゴンRと同じ。
しかし丸型ヘッドランプを装着するなど、本格オフロードSUVのジムニーに似た特徴を持たせた。
実用性とカッコ良さの両立は、SUVというカテゴリーが備える魅力とも合致して、発売直後は好調に売れた。
2015年にはダイハツキャストが発売された。ハスラーの対抗車種とも受け取られたが、キャストはSUV風のアクティバ以外にも、内外装を上質に仕上げた都会的なスタイル、ターボエンジンのみを搭載するスポーツの3シリーズを用意する。
1車種で3つの個性という着想はユニークだが、イメージが統一されず、発売直後から売れ行きが伸び悩んだ。
そして2018年にはスペーシアギアが加わった。2017年に発売された背の高い軽自動車のスペーシアをベースに、内外装をSUV風に仕上げた。
スライドドアにSUVの外観を組み合わせた軽自動車は、スペーシアギアのみになる。販売は好調で、スペーシア全体では、国内販売台数ランキングがホンダN-BOXに続いて2位となった。
2019年には三菱eKクロスが登場する。LEDヘッドランプを並べたフロントマスクが特徴で、マイナーチェンジ後の三菱デリカD:5との共通性も感じる。
このように背の高い軽自動車のSUVが出そろったので、各車種の「SUVらしさ」を比べたい。
外観の評価は見る人によって異なるが、ハスラーは最もバランスが良い。
スペーシアギアやeKクロスがフロントマスクなどの一部を変更したのに対して、ハスラーはSUV専用ボディになるからだ。
装飾類をゴテゴテさせず、SUVの野性味をストレートに表現した。ほかの3車種とは外観の見せ方が本質的に異なる。
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