クルマに限らず、幾多数多の新製品たちが世に送り出されるとき、その作り手たちの胸には、「果たしてこれが受け入れてもらえるだろうか」という不安と、そしてそれとは裏腹な「絶対受け入れてもらえるはずだ」という(そしてその先にはウハウハライフが待っているという)自信とが渦巻いているに違いない。
まさに我が子のごとく育ててきた新製品が陽の目を見たその瞬間──、しかしそれを目にした人々の動きは止まり、目は『ガラスの仮面』のようになる。自分から決して破ってはいけない感じの静寂が訪れる。
「やっちまったな…」「どうしてこうなった…」「バカなの死ぬの?」
登場時、そんな嗚咽がそこかしこで漏れたかもしれない9台のクルマたちを、清水草一氏に語ってもらった。
■ 【志は高かった! しかし…】 かわいそうなクルマ辞典 「狙い」がかわいそう編
■ 【かわいそうなクルマ辞典】早すぎた!? 迷走だった!?「機能」がかわいそう編
※本稿は2019年2月のものです。
文:清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年3月26日号
※当記事に一部写真の不適切な使用がございました。関係各所にお詫び申し上げ、公式写真へ差し替えました。申し訳ございませんでした。2019年4月3日
■日産チェリークーペ(初代)
今見ると個性的でとてもカワイイ! って感じもするが、それにしてもこのカクカクッと持ち上がったオケツと、すごく内股に見えるトレッド(編集部註:左右のタイヤの接地面の中心間の距離のこと)の狭さのハーモニーはとっても残念。少なくとも現役時代、私には死ぬほどカッコ悪く見えていました。
日産エクサキャノピー
珍車ゆえに、実物はほとんど見たことないが、写真を見るだけで、「このフォルムのバランスの悪さ、本人はカッコいいと思ってるのにハタから見るとメチャメチャカッコ悪い感じ、かわいそうすぎる……」でした。で、ごくたまに実物を発見すると、カッコ悪くて目が釘付け。トントン。
スズキ X-90
2シータースポーツとSUVの合体。今なら斬新なコンセプトかもしれないが、当時は斬新すぎて誰もついていけなかった。かわいそうに。実物を見ても、ロードスターをブスにして上下方向にビヨヨーンと引き延ばしたみたいで、とてもヘンテコでした。
トヨタセリカクーペ(3代目)
とにかく、国産車初のライズアップ式ヘッドランプが猛烈にカッコ悪かった! リフトバックは、かわいそうなのは顔だけだったんだけど、こちらのクーペは前から後ろまで貫通してるウエストラインのせいで、キャビンがヤケに頭でっかちに見えて、全身超カッコ悪し。無念。
■マツダ センティア(2代目)
覚えている人も少ないだろうが、マツダ稀代の駄作セダンでちゅ。初代センティアの志の高さは、販売不振により完膚なきまでに打ちのめされ、すべての志を捨ててオッサンセダンに回帰したのがこの2代目。初代センティアが本当にかわいそう。
■ダイハツ YRV
前後サイドウィンドウが段違いに前のめりになった「ダブルウェッジスタイル」が、どうにもこうにもカッコ悪かった! ヤル気はあるけど失敗続きのズッコケ青年って雰囲気が、同情の涙を誘いました。ガンバレ~!
■三菱 ミラージュディンゴ
伝説のかわいそうなデザイン車。出た瞬間に思わず爆笑してしまった! これを本当に市販した三菱自動車経営陣の勇気に脱帽。
つーかこれでヨシとしたその審美眼のなさがかわいそうすぎる。でも最近、たまたまディンゴを見かけたら、そんなでもなかったです。今はもっともっとエグいデザインだらけなので、意外とフツーでした。タハー。
■トヨタbB(2代目前期)
これまた伝説のやりすぎデザイン。妖怪みたいにしようとしたその志の高さ(?)は買うが、まだ時代は妖怪デザインに追いついていなかった。かわいそうに。
そろそろ妖怪が旬かも。出るのが早すぎたんでしょう。
* * *
とまあ、いろんな「デザインがかわいそう」な国産車がありましたが、全世界的に見てNo.1は何か? 私は、AMCグレムリンではないかと愚考します。このクルマのデザインには、志の高さとかセンスのよさとかがカンペキに皆無で、ただただ不格好! 完全にズッコケちゃっています。ある意味お手本ですね。
コメント
コメントの使い方