スズキ アルトの圧巻すぎる安さと性能の軌跡【軽に革命を起こした風雲児が40周年】

 軽自動車の革命児が「ALTO(アルト)」だ。生み出したのは鈴木自動車工業、現在のスズキである。発表されたのは、今から40年前の1979年5月11日だった。

 この時期、軽自動車はどん底にあった。排ガス規制は厳しさを増し、1973年秋にはオイルショックが勃発。当然、販売はガクッと落ち込んだから、ホンダと東洋工業(現・マツダ)は軽自動車市場からの撤退を発表した。

 こうした背景のなか登場したアルトは、2019年5月で生誕40周年を迎えた。

 47万円という驚愕の価格で登場したアルトながら、64馬力自主規制の発端ともなったアルトワークスを発売するなど、「性能」でも軽自動車の枠を広げてきた。

 今ではN-BOXなど高価な軽自動車がもてはやされているが、軽の本流をいく“小さな巨人”アルトが果たしてきた役割は大きい。

文:片岡英明
写真:編集部、SUZUKI


驚異の47万円!! 「安さ」武器に大ヒットした初代アルト

1979年登場の初代アルト。全長×全幅×全高は3195×1395×1335mm。軽自動車史に残るエポックメイキングな1台だった

 新しいジャンルの軽自動車の開発に意欲を燃やし、社内を説得したのが、今は代表取締役会長で、当時は取締役だった鈴木修氏だ。

 常々、実用性重視の軽自動車は価格を高くすると売れない、と考えていたから「軽自動車の原点に立ち返り、コスト低減を徹底して50万円以下の低価格で販売できる軽自動車を開発しよう」と提案したのである。

 多くのアイデアが出されたなかから浮上したのが、意表をつく商用車だ。物品税がかからず、保険料も安い4ナンバーの商用車に目を向けたのだ。

 それまでの商用車は、機能だけと割り切ったデザインだったし、快適性も二の次となっていた。

 コスト低減に加え、見栄えをよくするためにスズキを代表する軽乗用車であるフロンテのボディを使い、メカニズムも可能な限り共用としている。

 ただし、軽乗用車のフロンテが4ドアであるのに対し、商用車のアルトは3ドアのハッチバックとした。

 届け出は商用の軽ボンネットバン(ボンバン)だから、後席もシンプルな簡易シート。しかも大胆に1モデルだけの設定とし、販売価格は驚異的な47万円を打ち出した。また、常識破りの全国統一価格を採用し、自動車業界を唖然とさせている。

 アルトの開発陣はバンパーをグレーのスチールバンパーと割り切り、ドアロックを解除するためのキー穴も運転席側だけにしか設けなかった。

 インパネを樹脂の一体成形とし、ドアの内張りはコスト低減のためにビニールの板張りだ。時計やラジオなどはオプション設定としたが、軽乗用車より20万円前後安かったから発売されるや爆発的に売れ、大ヒット作となっている。

 中古車の購入を予定していた人も取り込んだし、セカンドカーとしてアルトを購入するユーザーも少なくなかった。

 モデル末期に4WDモデルを加えた初代アルトは84万台を売る大ヒット作となっている。日本の自動車史に残る名車として多くの人の記憶にとどめられ、スズキも業績を一気に回復。軽自動車No.1メーカーの座を安泰にした。

「ワークス」で性能面でも軽の枠広げたアルト

1987年登場の初代アルトワークス RS-X。フルタイム4WDながら車重僅か650kgで64psを7500rpmで絞り出す刺激的なモデル。軽自動車に高性能化の道を開いた

 そして2代目ではターボ搭載のスポーツグレードも設定し、新たなユーザー層の開拓に成功。その筆頭が超ド級のパワフルなエンジンを積むアルトワークスだ。

 スズキは1986年7月にDOHC 4バルブエンジンを積む「RS」を送り出し、1987年2月には真打とも言えるアルトワークス「RS-R」を投入してライバルを突き放した。

 心臓は直列3気筒DOHC 4バルブで、インタークーラーターボと電子制御燃料噴射装置を組み合わせて64psを絞り出す。

 強大なパワーとトルクを支配下に置くためにフルタイム4WDも設定した。あまりにも刺激的で、パワー競争も激化しそうだったのでお役所は尻込みしている。

 これ以降、64psの自主規制が敷かれ、この制約は今も解かれていない。アルトワークスは、それほど強いインパクトを与えたのだった。

アルトエコ投入で「燃費」でも軽に革新

2004年登場の6代目アルト(左)と2011年に登場したアルトエコ。環境性能への関心が高まるなか、燃費で軽自動車の新しい1ページを切り開いた

 1990年春、軽自動車は安全性を高めるためにボディサイズを拡大し、排気量を110cc大きい660ccとしている。これを機に消費税が導入されたからボンネットバンは魅力を失い、再び軽乗用車の時代が到来した。

 そして、1998年秋には再び軽自動車の規格を改定し、さらに安全性能を強化。同時に再びボディサイズを拡大し、今に至る。

 1998年9月、アルトはモデルチェンジを行い、5代目となった。新安全基準にミートさせた軽量衝撃吸収ボディを採用し、新開発のDOHCリーンバーンエンジンやVVTを加えたDOHCターボも送り出している。

 力を入れたのは燃費性能だ。これ以降はベーシックミニとしてのイメージが強くなり、2009年12月に登場した7代目ではベーシックミニとしての性格を鮮明にしている。初代アルトのように装備も簡素化し、低価格路線にシフトした。

 7代目で注目したいのは、エコ路線を強く打ち出したダイハツのミライースに対抗するため、アルトエコを投入したことだ。燃費に特化した新エンジンを積み、30.2km/Lの優れた燃費を叩き出している。

現行型で原点回帰! “小さな巨人”アルトが果たした役割

ライバルのダイハツ ミライースと現行型アルト。軽自動車高価格化が進むなかボトムで84万円という価格を維持。庶民の足として変わらぬ価値を持ち続ける

 これに続く8代目の現行型アルトは、初代と2代目の魅力にもう一度スポットを当て「原点回帰」を目指した。美しく、品格のあるベーシックミニにこだわり、真っ赤なボディカラーを復活させている。

 先代のアルトエコから60kgもの軽量化を断行し、インテリアもシンプルに徹した。また、歴代アルトの持ち味である優れた経済性も継承している。それでいて快適性も安全性もハイレベルだ。走りの実力も高いレベルにある。

 ヤンチャな高性能モデルも復活させた。まずターボRSが追加され、これに続いてホットバージョンのアルトワークスが復活する。

 ALTOはイタリア語で、「秀でた、優れた」の意味だ。走りにしても経済性にしても秀でた実力を秘めているアルトは、軽自動車の危機を救ってきた救世主でもある。アルトが登場しなかったら、今の軽自動車の隆盛はなかっただろう。

 多くの車に強い影響を与え、メイドイン・ジャパンの優秀性を強くアピールした小さな巨人、それがスズキのベーシックミニ、アルトだ。果たしてきた役割は限りなく大きい。

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