一台に5年、1000億!? 新車、F1マシン、タイヤ、信号機… 開発期間と費用の実態

 普段我々が見聞きする車の情報は、その車が世の中に出た後か、その直前のものがほとんど。

 では、そこに至るまでの期間、工程、費用はご存じ? 

 新車からF1マシン、タイヤ、信号機に至るまで、モノができるまでの知られざる裏側をお目にかけよう。

文:編集部
写真:編集部、Daimler、SUBARU、TOYOTA
初出:ベストカー2017年6月10日号


新車開発 「経営会議から5〜6年」

 新車開発のスタートは、まずメーカー全体の事業計画のなかで中長期戦略としてどのカテゴリーにどのような車種を投入するかといった全体的な計画を決めるのが、5〜6年前。

 この計画をもとに「商品企画部」と「技術部」が会議を重ねて具体的なコンセプトを提案し、会社としての承認を受けてプロジェクトがスタートする(3〜4年前)。

新車が出来るまでの流れ

 ここで、新型車開発の要といえるチーフエンジニア(以下、CE)が選任される。CEの仕事は陣頭指揮を執って開発チームを動かして新型車を作っていく。

 企画を渡されたCEは1年から2年の時間をかけてマーケティング部や先行開発部門、デザイン部門などに足を運び、商品概要を具体的な形にしていくのだ。

 こうして企画の概要がまとめ上げられ、開発予算の算定ができると経営陣に上げられ承認を得るが当然練り直しもある。

 CEが、先行開発チームが開発したエンジンやトランスミッションなどの技術を受け継ぎ、開発試作車を作り、デザインチームに具体的なコンセプトやパッケージングを伝えてデザインができ上がるのが、おおよそ発表日の1年半〜2年前あたりとなる。

 こうして各部の検討が一段落すると生産部門に移管され(1年前)、工場での生産性の確認やそれに伴う設計変更、デザイン変更などの作業に入り生産試作車によるテストを経て発表、発売を迎える。

 経営方針会議から5〜6年、正式なゴーサインから3〜4年というのが新車開発期間。

こちらはトヨタ MIRAIのラインオフ式典の様子。こうして長い年月をかけ、晴れて新車の生産・発売開始にこぎつけるのだ

 開発予算は、エンジンやトランスミッション、プラットフォームも一新する新規投入車だと約1000億円、エンジンやトランスミッションを現行型からのキャリオーバーだと約300億〜500億円。

F1マシン「開発には1年半の長期間」

 少し古いデータになってしまうが、2007年のF1マクラーレン・メルセデスのMP4-22は【表】のような開発スケジュールで登場した。おおむね開発期間は1年ちょっと。

【表】F1マシン(マクラーレンMP4-22)の開発スキーム。翌年以降のマシンをこのように開発しつつ、現在のマシンも改良していかなくてはならないのだ

 このMP4-22はその前年の2006年シーズンを戦ったMP4-21が走行する前に始まっていた。

 エアロダイナミクスのコンセプトスケッチやクラッチ、ギアボックスの設計に関する会議は2005年12月にスタート。MP4-22には膨大な4500の部品と3500枚の工具設計図が使われた。

 チームによって違いはあるが、当時での開発費は150億から600億円というから現在のF1チームではさらに高騰しているはずだ。

マクラーレンMP4-22で優勝したルイス・ハミルトン。2007年にチャンピオン争いを繰り広げたマシンの開発は2005年の年末から始まっていたのだ

スマートIC「6年、事業費約26億円」

 サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、バスストップから乗り降りできるように設置されたスマートインターチェンジ。

 全国でスマートインターチェンジを設置している箇所は96カ所ほどで現在、事業中の箇所は62カ所、準備段階は15カ所と年々増殖中だ。

 そのなかで、2018年3月開通予定の寄居PAスマートインターチェンジの場合、測量、設計を含めた事業開始が2012年度→用地買収が2013年度→文化財発掘調査&工事が2014年度→2018年3月供用開始予定というスケジュールだ。

 事業費は約26億円だという。

こちらは常磐道の水戸北スマートIC。スマートICは、SAPAに併設されるなど新設が相次いでいるが、その費用は数十億円単位。「バーとゲートを付けるだけだから簡単」というわけではないのだ。写真提供/NEXCO東日本

タイヤ「デビュー2年前に開発開始」

 純正装着タイヤは、ニューモデルが登場する2~3年前に開発が始まる。自動車メーカーは車重やクルマの性格などからサイズを決め、同サイズの既存タイヤを基準にして各性能の目標値を伝える。

 これを受けたタイヤメーカーは、目標性能に応じてモールド(金型)を作成する。純正では市場で実績のあるパターンデザインを流用することが多いが、目標性能から離れている場合には新たにパターンを開発することも。

 重要なのは、要求性能をいかに早く達成できるかということ。パッと見には同じようでも、パターンデザインは溝の深さやブロックの大きさをわずかに変えるだけで性能を大幅に変化させられる。

 つまり、ここがタイヤ設計者の腕の見せどころとなるのだ。

こちらはブリヂストンのタイヤ開発施設。近年では、さまざまな解析システムを駆使し、タイヤ開発がおこなわれている

 モールドが完成したらタイヤの試作段階に入る。コンパウンドを選び、構造をチューニングして目標値に近いタイヤを作る。

 自動車メーカーのテストドライバーは人によって重要視する性能が違い、そのことを充分理解しているテストドライバーがタイヤメーカー側にいると開発スピードが上がるという。

 試作タイヤが自動車メーカーに納品され、自動車メーカー側は試作車でのテストを実施し、改善ポイントをタイヤメーカーに伝える。

 これを2〜3回繰り返すことで改良していき、目標性能に近づけていく。その開発費は数千万~数億円にものぼるという。

信号機「市民の要望からスタート」

 信号機は道路の新設や市民からの要望を聞いた各都道府県警が、実際に要望場所での交通量や危険性などを調査して始まる。

 この調査では当然、交通事故の発生件数や学童の通学路なども考慮される。この調査結果が各都道府県警本部に届き、公安委員会が審査して必要性の高いところから信号機を設置する。

 設置までの期間はおおむね2~3カ月で、設置費用は定周期式300万~400万円。

交通安全に欠かせない信号機は2〜3カ月と比較的短期間で設置可能。
しかし、それでも1機数百万円の費用 がかかる

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