欧州COTYを起亜EV6が韓国車初受賞! 台頭するコリアンパワーは日本車の脅威となるのか!?

■ヒョンデはドイツを拠点とした

BEVモデル IONIQ5(アイオニックファイブ)。燃料電池車FCEVのNEXO(ネッソ)とともに2022年5月から日本でもオーダー受付開始、7月からデリバリー予定だ。価格はIONIQ5が479万円~589万円、NEXOが776万8300円
BEVモデル IONIQ5(アイオニックファイブ)。燃料電池車FCEVのNEXO(ネッソ)とともに2022年5月から日本でもオーダー受付開始、7月からデリバリー予定だ。価格はIONIQ5が479万円~589万円、NEXOが776万8300円

 この韓国勢の躍進を私は今からおよそ20年以上に予測をしていた。

 ヒョンデは1978年から自動車メーカーを持たないスペインやベルギー、あるいはギリシャなどで販売を始めていたが、1991年にドイツでの販売を始めた。その時に彼らはヨーロッパの本社をドイツに置いたのである。

 ドイツは前述のように欧州最大の市場を持っているが、そこには強力な民族系メーカー(BMW、メルセデスベンツ、VWなど)が君臨しており、一朝一夕では市場に食い込むのはほとんど不可能と言われていた。

 にもかかわらず、この市場に挑戦する決意をしただけでなく、大本営をその国のど真ん中に欧州本社機能を置いたのである。

 それまで欧州に進出していた日本メーカー、ホンダや日産は英国、トヨタはベルギーに欧州拠点を置いていた。

 私は当時から英国は欧州進出には適当な場所ではないという持論を展開していた。その理由は英国がヨーロッパではないからだ。欧州で自動車を売りたいのであれば欧州内に本社機能を持つべきだ。

■日本メーカーが英国で失敗した理由

 英国はそれまで長い間成立を目指していたEU(欧州同盟)への加盟に対してイエス&ノーと煮え切らない態度を示しており、1992年の準加盟に際しても自国の通貨(ポンド)に固執し、ユーロ導入には賛成しなかった。

 確かに工場まで作ったホンダは、最初は台数こそ伸びたが、やがては尻すぼみになり、現在では結局EU離脱後に工場を閉鎖する羽目になっている。

 理由は英国では自動車開発、さらには販売に対するインプットが少ないのである。

 クルマの進化は自動車先進国で行われ、それはそこにいなければ自分の製品に反映させるのは難しいのだ。最初はご当地でのご祝儀でクルマは売れるかもしれないが、長期的に見ると競争力はなくなる。

 さらに欧州(EU)内での自動車に関わる新しい排気ガス規制などの決定はEUの本拠地であるベルギーのブリュッセルで行われる。

 ゆえにここに欧州本部を置いたトヨタは、政治的な意味では正しかった。

■一流デザイナーを使ったデザイン戦略

 しかし、自動車技術が進化している場所はドイツである。ヒョンデは敢えて敵地に乗り込んだのである。

 しかも首都ベルリンではなくドイツの国際空路のハブである、フランクフルトに近い場所だ。

 さらにヒョンデグループはここで巧みなヘッドハンティング作戦を展開し、まずはアウディでTTクーペを指揮したスターデザイナーのペーター・シュライヤー氏を起亜のデザイン担当副社長へ就任させた。

 彼はここで起亜の現在のデザインアイコンである「タイガー・マウス(虎の口)」と呼ばれるグリルを手始めに次々にヒットを飛ばした。

「デザインは組織ではなくて、他人が作るもの」、正確には強力なリーダーシップがなければダメなことを理解したうえでの決定であった。

 この戦略は現在も続いており、シュライヤー氏がブランド相談役として一線を退いたあとにはルーク・ドンカーヴォルケ氏を後任に任命、現在は高級路線のジェネシスで副社長として活躍している。

 彼はVWグループのベントレーデザインを担当していた経験を持っており、ラグジャリー・ブランドを目指す「ジェネシス」には最適な人材である。いや、それだけではない。ヒュンダイにおける最近のスポーツ・ブランド「N」を立ち上げたのは元BMW・M社の副社長アルベルト・ビアマンである。

 彼が最初に手がけた起亜スティンガーは素晴らしい出来栄えで大ヒットとなり、起亜のスポーツモデルの認知度を一気に引き上げた。

 そして、その直後から市場に提供されたヒョンデの「N」シリーズはWRC参加による後押しもあって欧州では人気を得ている。

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