ホンダのものづくりの現場「栃木研究所四輪開発本部」に直撃! ホンダらしさは感じられたのか?

1回の衝突実験にかかる費用は150万円! 

衝突実験施設は屋内全天候型で2000年4月に完成
衝突実験施設は屋内全天候型で2000年4月に完成

 今回の見学会の目玉の1つは、衝突実験を実際にこの目で見られること。映像で見ることはできても、なかなか自動車メーカーの衝突実験施設を見ることはできないので貴重な体験だ。

 栃木研究所内にあるこの衝突実験施設は、世界初の屋内全天候型で2000年4月に完成。この屋内全方位衝突実験施設ができる前は、外部の施設でクルマ対クルマの衝突実験を行っていたものの、屋外のためスケジュールは天候に左右されることがネックだった。

 天候に左右されないため、コンスタントにリアルワールドに近いクルマ対クルマの衝突実験を1日平均2~3台、2輪車も含め、計600回のテストが行われているというから驚き。

 法規だけに対応するのではなく、自分たちで実際に起きている事故を研究し、そこで得られた知見をもとに独自の基準を設けてテストを行い、世界トップの安全性能を目指そうと考えたという。それが、世界初の屋内全天候型全方位衝突実験施設を建設する動機になったという。

 衝突実験が行われる前に案内されたのはまるで飛行場にある管制塔のようなコントロールルーム。床上4.5mに設置されたコントロールルームからはすべてのコースが見渡せる。

衝突実験に関する制御を行うコントロールルーム
衝突実験に関する制御を行うコントロールルーム

 コントロールルームでは、衝突テストの開始/停止の操作をはじめ、照明やカメラ、実験車両の出し入れを行うシャッターの開閉や安全管理など、衝突実験に関する制御を一手に担っている。

 テストの効率化を図るため自動化システムによって、衝突形態や照明、カメラの設定を記憶しておき、類似したテストを再現する際の準備期間短縮を図っているという。

 コントロールルームからは南北方向に272m、東西方向に178m、屋根高は15mあり、130m四方にわたって柱のない空間となっている。

 ここに正面衝突の0度コースを基本に、15度刻み(180、15、30、45、60、75、90度)で合計8本のコースが設けられており、正面衝突だけでなく斜め前方からの衝突、斜め後方からの衝突、側面への衝突など、全方位からの衝突テストができるという。前面衝突は100%フルラップ、50%、25%オフセット衝突など、さまざまなオフセット率を再現することができる。

屋内全方位衝突実験施設レイアウト
屋内全方位衝突実験施設レイアウト

 衝突試験用ダミー人形の姿勢を安定させたまま80km/hまで加速できるようにするため、各コースの長さは130mとした。ここでは2台のクルマを同時に最大80km/hで牽引することが可能。また、40km/h対60km/h、40km/h対80km/hなど、2台のクルマを異なる速度で衝突させる異速度衝突も可能としている。

50%オフセット衝突実験の画像
50%オフセット衝突実験の画像

 今回、実際にフリードを使用した50%オフセットのクルマ対台車の衝突実験が行われた。20秒前からカウントダウンが始まり、フリードと台車が50kmで50%のオフセット衝突。コントロールルームのなかにいるとはいえ、ガツン!とものすごい衝突音がした。やはり現場ならではの臨場感は凄まじく、恐怖さえ感じた。

 フリードと衝突した緑色の台車はフィットe:HEVほどの1200㎏の重量(欧州や中国では1400㎏)で、デフォーマルバリアと呼ばれ、先端のほうが柔らかく後ろにいくほど固い、実際のクルマと同じエネルギー吸収構造となっているという。

様々なダミー人形
様々なダミー人形

 フリードの助手席には小柄な女性を想定したダミー人形、運転席にはより人間に近づけて開発された前面衝突試験用ダミー人形「ソアー」が装着されている。このダミー人形は大人の男性(身長約175cm、体重約77kg(付属物を含めた試験時の質量は約90kg)を模擬したものだ。

 衝突実験後のフリードを近くで見たが、キャビンがほとんど変形しておらず、ドアはしっかり開くことができていた。テスト結果は、ナスバ(独立行政法人自動車事故対策機構)が実際した、車速50㎞、台車速度50㎞/hの新オフセット前面衝突試験の結果、175.07点に準じた良好なものだったという。

 ちなみに1回の衝突実験にかかる費用は150万円ほどだという。台車の衝撃を吸収するグリーンの部分を毎回代えることでコストを削減。解析が終わると、スクラップにされるという。

リチウムイオン電池の衝突実験に対応したEVの作業場
リチウムイオン電池の衝突実験に対応したEVの作業場

 見学のメニューには含まれていなかったものの、興味深かったのはEVの衝突実験に対応した作業場だ。リチウムイオン電池は強い衝撃が加わったり、損傷を受けてしまうと発熱・発火するリスクを抱えているが、衝突した際にどうなるのかという不安があったので衝突実験ではどうしているのか気になっていたからだ。

 念のため言っておくと、ホンダ車に搭載されているバッテリーパックは発火しないよう安全性を担保しているが、やはり万一の際のリスクに対応するため、EVは専用の作業場で電解液の漏れなどの計測や整備作業を行っているという。

 ここで万が一火災が発生した場合は延焼を防ぐ作業を行いつつ、鎮火後はフォークローダーで施設の外に運び、専用に設けたプールに水没させる設備を整えている。

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