圧巻のドライビングシミュレーター
ドライビングシュミレーターを聞いて、まず頭に浮かぶのはPS「グランツーリスモ」だが、ホンダのドライビングシミュレーターはどこまで精微に再現されているのか期待を胸に、オペレータールームに入る。
ドライビングシミュレーターには、大きく分けて2つの用途がある。
1:量産開発段階での官能評価・安全検証
実車テストの前段階で、走行性能や安全性の課題を徹底的に洗い出し、対策を講じることで開発効率を最大化。実車テストの負担を軽減しながら品質を高める狙いがある。
2:将来技術・商品価値の検討
実車を作らずに将来の技術や新しい価値、商品コンセプトを検証可能。コスト削減と開発期間の短縮を同時に実現し、より魅力的なクルマを迅速に市場へ届ける。
当然、クルマの開発テストはドライビングシミュレーターだけで完結していない。このドライビングシミュレーターで行うバーチャルなテストと、テストコースで行うリアルの開発テストがあり、50%ずつの割合で行われているという。
ホンダが使用しているドライビングシミュレーターには数種類あり、AD/ADAS系の機能検証に用いる自動運転/先進運転支援技術評価用ドライビングシミュレーター(視界重視型、走行感覚重視型)、開発初期段階でのコンセプト検討や方向性の確認、各デバイスや制御仕様を製作開始する前に行う最終確認時の検証に活用する小型ドライビングシミュレーター、そして、今回見学するのは、四輪ダイナミクス性能評価用ドライビングシミュレーターである。
オペレータールームから見ると右側にヴェゼルを半分切った形のドライビングシミュレーター、そこへ向かうボーディングブリッジが見える。その下にはダンパーのようなアクチュエーターが設置されている(写真参照)。
ドライビングシミュレーターの構造は、6軸アクチュエーターと3軸アクチュエーターが組み合わさることで、ドライバーがまるで本物の車両を運転しているかのような感覚を得られる。さらにボーディングブリッジの高さ調整により、シミュレーター特有の違和感を排除し、現実の乗車体験を忠実に再現。合計約3000のパラメーターと250の自由度を持っており、実際に図面に落とし込むことが可能となっている。
・6軸電動アクチュエーター:加速度や路面入力といった高周波側の動きを再現
・3軸電動アクチュエーター:加速や制動、旋回時の持続的なGを再現
このアクチュエーターはイタリアのVIグレードと、日本の鷺宮製作所が制作した2つのシステムをホンダがカスタムを依頼して作られているという。
さっそく、ボーディングブリッジを通り、ドライビングシミュレーター内の運転席に座る。設定車種は2022年式のCR-Vで、50km/h固定(クルーズコントロールなし)で走行した(ハンドルは握れなかった)が、実際の道路を精微に再現し、動きもリアルだった。
ではどのように乗り味、ポテンシャル性能をテストしているか? 一例を挙げると、コーナーでは以下のような評価項目があるという。
・コーナー入口:リニアリティ、初期応答性、応答遅れ
・コーナー進入:切れ上がり(巻き込み)、旋回内向き感
・コーナーのクリッピングポイント:ロールモーション、弱前下がり、内外輪荷重移動、前後荷重移動
・コーナーの立ち上がり:ダイアゴナルモーション、尻下がり、めくれ上がり、リアサス収れん、しっかり感、接地感
もちろん、実際のテストコース、例えば栃木や鷹栖のプルービンググラウンドの路面をデジタルデータ化し、実車と同じサスペンションやタイヤモデルを組み込むことで、シミュレーター上でリアルな車両挙動を再現可能しているという。
これにより、同条件での繰り返しテスト、危険なシナリオの安全な再現、環境負荷の低減といった実車では難しい条件を効率的に満たすことができる。付け加えるとこのドライビングシミュレーター、実走テストのほかに、ベンチやテスターによる基礎データの計測やセッティングを行う台上試験がある。
このドライビングシミュレーターによって初めて開発されたのはホンダの次世代BEVのゼロシリーズで、2025年10月末から開催されるジャパンモビリティショーにも出展される予定。



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