セダンの反転攻勢は実現できるか?
少々時代を辿ってみると、コンセプトカーの「エヴォーク」からキャデラックが生み出した数少ないオープンスポーツである1999年登場のXLRから、「アート&サイエンス」のデザインコンセプトを打ち出してキャデラックの“新時代”が始まり、第4世代のエスカレードもこのコンセプトに沿って登場した。
GMが前述の2008年のリーマンショックでの経営破綻を経験した後も、欧州の高級モデルを意識した中小型セダンであるATSやCTSなどは、ドイツのニュルブルクリンクサーキットでのテストで鍛え上げた足回りを仕立て、ドイツ勢と変わらぬコンセプトと上級な作りを目指して生み出されたことで、エッジの効いたスタイリングとしっかりとした感触をもたらすサスペンションなど、「新世代」といえる印象をもたらした。
話を2019年に戻せば、米本国では先代と言えるCTS同様に、最新のCT4/5/6にも高性能仕様のVシリーズを追加設定した。
Vシリーズはこれまで欧州高級ブランドのハイパフォーマンス仕様(メルセデスではAMG、BMWのM、アウディのRSなど)に対抗すべく、ATS/CTSの世代からスポーティかつパワフルでマッチョなイメージを加えることで、積極的なモデル展開を図ってきた。
新たに登場したCT4-Vは、2.8L、直4ターボ(320ps、500Nm)を搭載。CT5-Vには335ps/ 542Nmの3L、V6ツインターボを与え、CT6-Vに550psと850Nmを発生する4.2L、V8ツインターボを搭載。それぞれ10段ATを組み合わせている。
キャデラックは従来から最新技術の採用を積極的に進めてきたブランドだが、装備面ではこのCT5やCT4でも、高速道路における半自動運転を実現した先進運転支援システムである、「スーパークルーズ」が2020年から設定される予定だ。
このシステムは、最新の地図情報データベースや高精度GPS、3次元スキャナーを備えたLiDAR機構や最新のドライバーの注意喚起システムなど、カメラとレーダーセンサーのネットワークを組み合わせた機能によって、運転者が介在する余地を残した段階での自律運転機能を備えている。
CT4とXT4、そして新型エスカレードの導入に期待
ニューモデルとして注目されるのは、前述のセダンのCT4とともに日本市場では未導入のコンパクトSUVであるXT4だ。
2018年3月の米国ニューヨークショーでのデビューから多少の月日が悔過しているのは、今や日本市場では輸入車に限ってもライバルたちに伍して争うのは容易ではないと判断されているのか、近い時期での導入が慎重に検討されているのかもしれない。最新の情報では2020年内に500万円前後での日本導入が予想されている。
北米市場での直近の動きで見逃せないのが、2020年2月に発表されたエスカレードのフルモデルチェンジだ。5代目となった新型では、独立式リアサスペンションや内装でも「湾曲型OLEDディスプレイ」を採用した。
特にエクステリアの変化は大きく、ボディの前後端を垂直方向にフラットに大胆に変更。XT4とXT5同様に大型グリルと横長のヘッドライトを採用することで新世代のキャデラックのデザインが行き渡ることになった。
エスカレードはトップモデルとしてのイメージリーダーだけあって、今回の変更をマーケットがどのように評価するのか気になるところだ。
GMの「売れる商品を絞って売る」という、従来から続く日本市場でのビジネスコンセプトを展開することはクレバーな手法と認めよう。
それでも、SUVをメインとしたラインナップによって、キャデラックの魅力のすべてを表現できるとは思えない。
たとえば、今後の日本市場導入が期待されるセダンに関しては、先に触れたVシリーズはプレミアム性とスポーツ性を兼ね備えているから、生粋の高級ブランドとしての「キャディ」の存在感を示す有効な手段となるはず。
ぜひとも、新世代セダンとともに元気の良さを備えたモデルの日本市場への導入を検討してもらいたい。
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