クルマ界にジンクスあるか? ジンクスを打ち破ったクルマの秘密とは?

 スポーツ界で「1年目に活躍したルーキー選手が2年目に伸び悩む」といったジンクスがあるように、クルマ界にも「○○なクルマは売れない」というジンクスがある!

 さて、そのジンクスというものはどんなものがあるのだろうか? そしてそのジンクスを打ち破ったクルマはあるのか? モータージャーナリストの永田恵一氏が解説する。

文/永田恵一
写真/ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ

【画像ギャラリー】クルマの世界にも「ジンクス」があるんです…! 不穏な流れを断ち切り成功を収めたクルマたち


ジンクス/尻下がりのクルマは売れない

1963年5月に発売した2代目410型ブルーバード
ピニンファリーナによる尻下がりのデザインが不評で販売台数では初めてライバルのコロナに抜かれてしまう。1966年4月のマイナーチェンジで尻下がりのボディ形状を改める大幅な変更が行われ、独特の形状だった通称「鍵テール」から平凡な形状に変更
1965年10月に登場した2代目130型セドリックは410型ブルーバードと同様、ピニンファリーナが手がけた
フローイングラインと呼ばれるフロントからリアにかけて下がっていくラインが特徴
1968年9月、尻下がりのデザインが不評だったため、ボディスタイルを全面的に変更した
410型ブルーバードに続いて尻下がりのデザインが不評で大々的に変更された後期型の130型セドリック

 「尻下りのクルマは売れない」。このジンクスの始まりは1960年代前半に登場した日産ブルーバードとセドリックのそれぞれ2代目モデルである。

 当時黎明期だった日本の自動車メーカーはマツダがルーチェの初代モデルのデザインをベルトーネに依頼するなど、ヨーロッパのデザインスタジオとの交流を盛んに行っていたメーカーも多く存在した。

 2代目ブルーバードと、グロリアとは別のクルマだった2代目セドリックのデザインをイタリアのピンファリーナに依頼した作品だった。

 この2台のデザインは関係者を含めた玄人筋には高く評価されたのだが、クルマを見る目が養われていなかった当時の日本人には進みすぎており、受け入れられなかった。そのためこの2台のデザインはどちらもマイナーチェンジで尻下がりという点も含め、大幅に変更されたくらいだった。

 日産は1990年代に入り、9代目ブルーバードのセダン系とレパードJフェリー(それぞれ日産がアメリカに持つデザインスタジオであるNDIの意向が強く盛り込まれた)で再び尻下がりのデザインを採用するのだが、日本ではまたしてもあまり受け入れられなかった。

9代目ブルーバード(U13型)セダンのデザインは、日本の日産案とアメリカの日産デザインインターナショナル(NDI)案が比較され、独特なフォルム、尻下がりを持つ北米案が採用
悪夢よ再び。またしても尻下がりのデザインを採用して不評だった
1992年6月に登場したレパードJフェリー。エクステリアデザインを担当したのは、アメリカの日産デザインインターナショナル(NDI)
今見ると優雅デザインで美しいと感じるがやはり尻下がりのデザインは日本人にはウケなかった


■そのジンクスを打ち破ったクルマ→8代目セドリック&グロリアと2代目シーマ

1991年6月に登場した8代目セドリック(Y32型)。販売不振だったクラウンを再び上回った
8代目セドリック(Y32型)。やや大人しめの尻下がりのデザイン
1991年8月に登場した2代目シーマ。3L、V6と4.1L、V8エンジンを搭載
やや尻下がりは抑え目で英国車のような佇まいを魅せる

 このジンクスを最初に打ち破ったのは、ちょっと皮肉なことに、尻下がりで大失敗した9代目ブルーバードのセダン系とレパードJフェリーと同時期に日産から登場した8代目セドリック&9代目グロリア(Y32型)と2代目シーマ(いずれも大成功とはいえないが)だった。

 8代目セドリック&9代目グロリア(Y32型)と2代目シーマの後、しばらく尻下がりのデザインは見なくなるのだが、近年ではベンツがSクラスの現行モデルを皮切りにCクラス、Eクラス、Aクラスセダンで好んで採用している。

 尻下がりのデザインが受け入れられるようになったのは、尻下がりのデザインは機能的に見るとトランク容量や空力で不利な面もあるにせよ、8代目セドリック&9代目グロリア(Y32型)と2代目シーマとベンツのセダンは尻下がりの度合いが控えめになり、全体的なまとまりがよくなったためだろう。

ジンクス:ステーションワゴンは売れない

レガシィが大ヒットする前は、サニーカリフォルニアやシビックカントリー、レオーネワゴン、グロリア/セドリックワゴンなどがあった。しかし欧州のようなステーションワゴン文化は日本にはなかった

 昭和の時代まで日本ではボルボなどの輸入車はともかく、日本車のステーションワゴンの販売は低調だった。

 その理由はクラウンやセドリック&グロリアのステーションワゴンでも商用ライトバンがあるなど、多くのステーションワゴンにセットのように商用ライトバンも設定されていたことが、本来セダンより上位となるステーションワゴンのイメージを低下させていたことが大きい。


■ジンクスを破ったクルマ→初代レガシィツーリングワゴン

1989年2月に登場した初代レガシィツーリングワゴン。人気グレードのGTに搭載された2L、直4のEJ20型ターボエンジンは200ps/26.5kgmを発揮 。スポーツワゴンという新ジャンルを切り開いて大ヒットした

 そのジンクスを破ったのが1989年2月登場のレガシィツーリングワゴンの初代モデルである。

 初代レガシィツーリングワゴンがジンクスを破った理由としてはまず、商用ライトバンがなく、乗用車のイメージが強かったのに加え2段になったルーフなどデザインがカッコよかった。

 そして、デザインに加え、スバルはステーションワゴンに長い経験を持つこともあり使い勝手の良さや高性能な4WD、ハイパワーなGT系の設定によりスポーツワゴンというジャンルを切り開くなど、クルマ全体が新鮮だった、といったことが浮かぶ。

 レガシィツーリングワゴンの登場後、トヨタカルディナや三菱レグナムといったレガシィツーリングワゴンをターゲットにしたミドルステーションも登場したが、結局レガシィツーリングワゴンの牙城を崩すには至らなかった。

 レガシィツーリングワゴン人気は初代モデルから20年近くに渡って続き、現在はそのポジションをレヴォーグが引き継いでいる。

ジンクス:全高の高い乗用車は売れない

4代目アコード(CB型)
1998年7月に登場した5代目ビスタ。居住性を重視し、セダンにしては高い全高1505mmに設定した

 平成初期まで日本車の乗用車(セダン、ハッチバック)は日本人がキャビンスペースをそれほど重視しなかったこともあり、デザイン性を優先する傾向が強かったためか、乗用車でも全高が現在の基準で見れば低い1400mm以上あるモデルは非常に少なかった。

 そのため4ドアなのに全高が1310mmしかないカリーナEDが大ヒットしたり、クラウンやセドリック&グロリアのようにセダンとハードトップがある4ドア車でも全高が低いハードトップが圧倒的に売れていたくらいだった。

 そういった「不真面目なものが売れていた」とも見える流れを断ち切ろうとした1台が、昭和の時代まで全高の低いクルマが大好きだったホンダの4代目アコード(1989年登場、全高1390mm)だった。

 しかし、4代目アコードは内容こそ文句なかったものの日本人のイメージするホンダ車には雰囲気が真面目すぎ、地味だったせいなのか、日本ではあまり売れなかった。

 そのほか、居住性を高めるべく、やたら全高を高くした不格好なビスタセダン/ビスタアルデオというセダンとワゴンがあったがさっぱり売れなかった。

 全高を高くして、居住性を高くすれば売れるという考えは見事打ち砕かれ、スタイルが重要だということを改めて思い知らされたクルマだった。

 またレガシィツーリングワゴンよりも190mmも全高が高い1660mmのエクシーガも、全高が高いことが災いしたのか、生産終了に追い込まれた。


■そのジンクスを破ったクルマ→2代目マーチ

1992年1月に登場した2代目マーチ。ボディサイズは全長3720×全幅1585×全高1430mm

 このジンクスを打破したのが1992年1月登場の2代目マーチではないだろうか。2代目マーチはすべてがバブル経済崩壊直後の雰囲気に相応しい堅実なクルマだったこともあり、全高も1430mmと当時の日本車の乗用車としては高く、そのおかげでアップライトな着座姿勢による実質的に広いキャビンスペースや乗降性のよさなどを得た。

 また2代目マーチ以降、極端に全高に低い乗用車はほとんどなくなるなど、日本車の乗用車は全高を高めることに対する躊躇はなくなり、今では全高が高いクルマばかりになり、運転していて先が見通しにくいことがよくあるくらいだ。

 その逆も然り。背の高いミニバンじゃないと売れないというジンクスもある。現在、軽ハイトワゴン系、ミニバンは全高が高くないと売れない時代になってしまった。

ジンクス:初代モデルがヒットしたホンダ車の2代目は売れない

ミニバンブームを作ったといわれるほど大ヒットした初代オデッセイ

 1990年代までのホンダ車には「初代モデルはクルマのできはともかく、コンセプトが新鮮だったためヒットしたけど、2代目モデルは初代モデルのようには売れなかった」ということがよくあった。

 その例としてはオデッセイ、CR-V、ステップワゴン、インスパイアの初代モデルなどがあり、ヒットしたモデルの2代目がそれほど売れなかった理由には、2代目モデルを初代モデルのキープコンセプトとしたことでユーザーから飽きられてしまった、というのがある。

 そして、キープコンセプトとしたことで2代目モデルが出たときには他社からも似たクルマが登場しており、他社のクルマにアドバンテージがあると他社に流れてしまう、といったことが思い浮かぶ。そういったクルマはホンダ以外でもプリメーラ、ディアマンテ、イプサム、エルグランドなどがある。


■そのジンクスを打ち破ったクルマ→2代目フィット

2代目フィット。初代のキープコンセプトながら、商品力を高めて他社が追い付けない水準にまで進化した

 「初代モデルがヒットしたホンダ車の2代目モデルがそれほど売れない」というジンクスを打破した最初の例がフィットである。

 2代目フィットも広さ、安さ、低燃費、明るい雰囲気を理由にヒットした初代フィットのキープコンセプトだが、2代目フィットは初代フィットの美点をさらに伸ばし、他社が同じようなクルマを造れない、他社が追いつけないほど進化したことで好調に売れた。

 またフィットのコンセプトは現行型4代目モデルまで初代モデルからそれほど変わっておらず、初代モデルが築いたコンセプトの確かさもフィットが今も好調に売れている大きな理由だろう。

 フィットに近い例としてはN-BOXとフリードがあり、この2台も初代モデルのコンセプトの確かと完成度の高さにより、2代目モデルの登場から時間が経った今も好調に売れている。最近のホンダ車には、このジンクスは通用しなくなっているのかもしれない。

ジンクス:5ドアセダンは売れない

1987年5月に登場したスプリンターシェロ。従来のスプリンターリフトバックに代わるスプリンター専用モデル。スペイン語で天空という名が示すようにリアビューをガラスとして開放的なキャビンが特徴

 1990年代までコロナSF、スプリンターシエロ、3代目ランサー、4代目パルサーなど、日本車にもバックドアを持つ5ドアセダンはそれなりにあったが、ヒットしたクルマはなかった。

 その理由としては1990年代まで日本人は5ドアハッチバックより4ドアセダンを好む傾向が強く、5ドアセダンにまで興味を示さなかった。そして、5ドアセダンより5ドアハッチバックのほうが大きなものを積みやすい、といったことが考えられる。

 イギリス生産のP10プリメーラ2.0eGTやクイントインテグラなどの5ドアモデルが記憶の片隅には残っているがいずれもヒットはしていないはずだ。


■そのジンクスを打ち破ったクルマ→2代目プリウス

2003年9月発売の2代目プリウス。10・15モード燃費35.5km/Lという数値は当時世界最高レベルだった

 このジンクスを打破したのが2003年登場の2代目プリウスで、2代目プリウスは「空気抵抗の低減とキャビン、ラゲッジスペースの確保を高次元でバランスできるボディ形状」という理由で5ドアハッチバックボディを採用。

 2代目プリウスはハイブリッドカーへの注目と、モデルサイクル後半はガソリン価格高騰により人気車となり、空前のヒット車となった3代目モデルを経て、現行型4代目モデルも堅調に売れている。

 プリウス以外でヒットした5ドアセダンの日本車としては5ドアセダンということがプリウスのアイコンとなっているのは確かだ。

ジンクス:海外生産車は売れない

エンジンが3気筒に格下げされた4代目マーチはタイで生産された

 平成以降海外生産の輸入車となる日本車は珍しくない。現行日産マーチ、現行三菱ミラージュ、現行スズキバレーノ、トヨタキャバリエ、トヨタヴォルツ、ホンダエレメント、フィットアリア、トヨタアベンシスなどなど、成功しなかった例は山ほどある。


■そのジンクスを打ち破ったクルマ→初代、2代目アコードワゴン

アメリカで生産された初代/2代目アコードワゴン。初代は「U.S.アコードワゴン」という愛称で呼ばれており、それだけ北米生産のインパクトが強かった

 しかし、海外生産の日本車の成功例も少ないながらあり、具体的なモデルとしては北米生産の初代(1991年)と2代目(1994年)のアコードワゴン、アコードクーペ(1988年)、最近ではハイラックス(タイ生産)、キックス(タイ生産)、シビックタイプR(英国工場生産)が思い浮かぶ。

 海外生産の日本車の失敗例と成功例の違いは単純で、失敗例はクオリティが低い、価格が高い、日本や時代にコンセプトが合わなかった、成功例は合格点に達する性能やクオリティを持ち、魅力あるクルマだったというだけである。

 つまり日本メーカー製で総合的な商品力に問題がなければ、生産国は関係ないということだ。

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