日本の塗装技術は世界一!! 汚れを撥ねのけ小キズを直す超塗装の実力と落とし穴

日本の塗装技術は世界一!! 汚れを撥ねのけ小キズを直す超塗装の実力と落とし穴

「新車時のボディの輝きをいつまでも持続させたい」、これはクルマに乗るすべての人に共通した願望だろう。洗車キズやドアノブ回りのヘアスクラッチが気になって仕方ない、という人は多い。

 現在人気の高い黒をはじめとする濃色系は淡色系に比べて、小キズが目立ちやすい。特にボンネットなど広い面積の部分のヘアスクラッチが目立ち、オーナーにとっては悩みのタネとなる。

 そんななか、洗車キズなどなら、放っておくだけで時間の経過とともに自己修復する、という塗装が存在する。まさに夢のような塗装ではあるが、落とし穴もある!

文:ベストカーWeb編集部/写真:NISSAN、TOYOTA、ベストカー編集部


日本車の塗料、塗装技術は劇的に進化!

 日本車の塗装の進化は特筆レベルだ。塗料、塗装技術の両面で進化していることで、すばらしい発色、光沢(輝き)を実現している。

 さらに発色、艶を長持ちさせる耐久性の向上も見逃せない。

 1990年頃までのクルマは塗装が経年劣化のスピードが速く、特に赤や黒の劣化は激しかった。対して今のクルマは10年以上経過しても発色、光沢ともに劣化が非常に小さい。

今の日本車の塗装はすばらしい。光沢、耐久性ともに90年代までの日本車とは比べものにならないレベルの進化を見せているので、ユーザーの満足度も高い

 クルマの塗装は下から順に下塗り、中塗り、上塗り(ベースコート)、クリアという4層構造で、下塗りは防錆効果、中塗りは耐衝撃性を上げることとボディカラーの発色をよりきれいにするために行う。

 そして上塗りはソリッド塗装、メタリック塗装、マイカ塗装、パール塗装などがある。

 最も上に塗られるクリアは、光沢を出すためと塗装の保護という2つの役割を担っている。

 厚い塗装のほうが丈夫だと感じるかもしれないが、薄いほうが強度が高まり耐久性も上がる。今では中塗りと上塗りを合わせてほぼ髪の毛の太さとほぼ同じ0.08mm(80ミクロン)、4層合わせても0.1mm前後の薄い塗装を実現している。

 そこで注目したいのは、一番上に塗られるクリア塗装で、このクリアにより魔法のような技術も登場している。

世界初のキズが自己修復する塗装は日産が開発

 日産は古くから塗装の研究開発に熱心で、フッ素系樹脂のクリアを使ったスーパーファインコーティング(SFC)を1988年にローレルに世界初採用。

 その後日産はSFCをスーパーファインハードコート(SFHC)へと進化させた。SFC、SFHCともに、①水はじきがいい、②汚れが落ちやすい、③光沢が長持ちする、④洗車機にかけても傷が付きにくい、というメリットがあった。

 ちなみにアクリルウレタン系クリアが5年、アクリルシリコン系クリアが10年で20%光沢が減少したのに対し、フッ素系樹脂クリアは20年経過しても10%ほどしか光沢が減少しないという。

 2000年頃になると日本車に大きな異変が起こる。ボディカラーが白、シルバー一辺倒だったなか、黒をはじめとする濃色の人気が高まってきた。

 しかし濃色系のボディカラーは、淡色系に比べて洗車機などでつく小キズ、ヘアスクラッチが目立つ。自動車メーカーの次なるターゲットは傷がつきにくい塗装へと移行していった。

 その結果生まれたのが、現在の高機能塗装として浸透し、採用車が拡大している『耐スリ傷性クリア』だ。これによりスリ傷のつきにくさは大幅に進化し、ユーザーの満足度も高い。

 クルマの塗装の耐スリ傷というテーマに対し、またまた世界初の技術を登場させたのは日産だった。

 塗装の表面に生じるスリ傷を防ぐ方法として、従来からクリアの塗膜に柔軟性を持たせる手法があったが、耐候性や耐熱性という問題を抱えていた。

 しかし、日産はクリア塗装部に特殊な高弾性樹脂を配合することにより、柔軟性と強靱性を備えたクリアコートを開発。

上の写真が通常のノーマルクリア塗装。光に当たるとヘアスクラッチが目立つ。それに対して下の写真がスクラッチガードコート塗装のエクストレイル。その違いは明らか

 これによりスリ傷がつきにくいだけでなく、時間の経過とともに塗装表面がほぼ傷が生じる前の状態まで復元するという魔法のような塗装『スクラッチガードコート』を完成させた。

 2005年12月、日産はエクストレイルに『スクラッチガードコートエディション』という特別仕様車を設定して初の商品化。

 ベースモデルに対し5万2500円高いだけだったので人気となり、2006年のエクストレイルの一部改良を機にカタログモデル化された。そして、2007年8月にエクストレイルがフルモデルチェンジした時に、黒のボディカラーのみの設定から、ほかのボディカラーにも拡大採用された。

2006年にフルモデルチェンジして2代目になった時に、黒以外のボディカラーにもスクラッチシールドが設定されるようになった。特に濃色系のボディカラーで重宝

 このスクラッチガードコートは、一般的な塗装のクルマに比べて、洗車時などのスリ傷を5分の1程度まで減らせる(80%減)というから凄い。現在ではスクラッチシールドと名前を変え、多くの日産車に採用されている。

 このスクラッチシールドは異業種にも展開されていて、NTTドコモの携帯電話(N-03B)、ビフレステックのスピーカー(2011年)に採用された。

【スクラッチシールドを採用する現行日産車】(2019年3月15日現在)
プレジデント/シーマ/フーガ/フーガハイブリッド/スカイライン/ティアナ/フェアレディZ/GT-R/エルグランド/セレナ/エクストレイル

 この魔法のような小キズを自己修復する塗装は、日産のほかにはトヨタ/レクサスが採用している。裏を返せば、日産車、トヨタ車、レクサス車でしかスリ傷の自己修復という恩恵を手に入れることはできない。

 トヨタ/レクサスの自己修復塗装は、『セルフリストアリングコート』という名称だ。コンセプト、効果などは日産のスクラッチシールドとほぼ同じで、どっちがいいというレベルではない。

 トヨタ車/レクサス車では、2009年10月の年次改良時にレクサスのフラッグシップモデル、LSに標準設定されたのが最初となる。いっぽうトヨタ車に初搭載されたのは、2014年にデビューした燃料電池車のMIRAIだ。

トヨタ系でスリ傷が自己修復する塗装はレクサスLSに初めて採用された。セルフリストアリングコートはこれを機に高額車、ミニバンに拡大採用

 その後、トヨタ/レクサスともモデルチェンジ、マイナーチェンジのタイミングで拡大採用を続けている。基本的に高額車量+ミニバンというラインアップ構成はトヨタも日産も同じ。

【セルフリストアリングコートを採用するトヨタ車】(2019年3月15日現在)
センチュリー/MIRAI/クラウン/マークX/アルファード/ヴェルファイア/エスティマ/エスティマハイブリッド/ヴォクシー/ノア/エスクァイア

【セルフリストアリングコートを採用するレクサス車】(2019年3月15日現在)
LXを除く全車(LS、GSなどはボディカラーによってはグレード限定の場合もあるので要確認)

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