【日独仏伊】輸入車の味、日本車の味は絶滅したのか? まだ生き残っているのか?

 クルマを評価する指標のなかでエンジンスペック、差高速、加速性能、燃費などのように数字で優劣がハッキリとするものはわかりやすい。数字の持つ説得力は絶大だ。

 そのいっぽうで、エンジンフィーリング、ハンドリング、乗り心地、デザインなど数字ではなく好みや経験値を元に感性で評価するものもある。

 クルマを移動の手段、道具として評価するだけなら数字だけで評価できるが、クルマは趣味的な要素が重要なため、感性での評価が不可欠になってくる。

 その感性的な評価軸として『味』という表現がよく使われる。味って曖昧だけど、非常に奥深く示唆に富んだ表現でもある。

 昔から、日本車、ドイツ車、フランス車、イタリア車など、生まれた国によって独特の味を持っている。クルマという工業製品に文化、気性、嗜好、風土などが複雑かつ絶妙に絡み合っているためだ。

 日独仏伊の古来からの味とはどんな味なのか? その味を現在最も堪能できるクルマは何か? このテーマで渡辺敏史氏が日独仏伊のクルマを斬る!

文:渡辺敏史/写真:平野学、Mercedes-Benz、RENAULT JAPON、FIAT


日本車の味はクルマが立派な買い物だった時代の名残り

 日本に住む我々にとって、日本車の味を言葉で説明することはとても難しい。言わずとも肌感覚で理解しているところもあるし、分母が大きすぎて端的に纏めるのが難しいというところもある。

 敢えて言うならまず絶対的信頼性に基づく安心感。その安心感から思わず靴を脱ぎたくなるような応接間的室内環境。

2018年6月に21年ぶりとなるフルモデルチェンジを受け3代目となったトヨタセンチュリーは、日本の伝統、日本人の美意識などを色濃くクルマに残している

 お釣りが残ろうが鋭利な突き上げなどは徹底的になますピッチ&バウンドの味付けや、スピードを出してカーブを曲がる方が悪いと言わんがばかりのスタビ弱な足周り設定。

 キャビンに漏れ伝わる音に対する異常なまでの敵対心……と、そんなところになるだろうか。

 つまりこれらは家と同等にクルマが立派な買い物だった時代の名残りということなのかもしれない。

 一見、悪意満々に思われるかもしれないが、そんなことはない。個人的には歴代のクラウンやセルシオといったトヨタのサルーンは憎からず思っているし、アルファードをはじめミニバン関係のフロアマットに対する執念は外国勢には絶対に真似できないものだと思う。

 近頃はクラウンまでニュルで走りを鍛えてきたことがウリになったりするわけだが、そんななかで伝統的な日本車の味を守り続けているモデルといえば、センチュリーくらいしかないのかもしれない。

古来のドイツ車の味を継承しているクルマは激減している

 ドイツ車の味といえば何はともあれボディ剛性の高さ。それゆえ足回りも設計通りに動き正確に路面を捉え続ける。

 そのロードホールディング性は路面にしがみ付くかのごとしで、大きな入力にはめっぽう強いが、低中速域での乗り心地にはアラが目立つ。運動性能のためなら遮音など二の次……と、そんな感じではないだろうか。

威風堂々としたボディサイズ、押し出し感の強い顔、高級車ながら妥協のない走りを追求している点など、古来のドイツ車の味を堪能できるメルセデスベンツSクラス

 ともあれ日本車とは対象的……だったが、2000年以降は様相も変わってきた。これは日本車もドイツ車を目標にボディや足回りの作り込みを考え始めたからでもあり、ドイツ車の側も日本車の乗り心地や静粛性、きめ細かな装備や製造コストの感覚などを研究し採り入れたからだ。

 この辺りの経緯は代々のBMW3シリーズやVWゴルフをみているとよくわかる。

 旧きよきドイツ車的なテイストを今に伝えるクルマというのは探し出すのがなかなか難しい。

 プレミアム御三家やVWなどのモデルは洗練されすぎているし、そういうタッチを持っていたオペルやフォードは日本から撤退してしまった。

 一歩話を進めて、ドイツ車の理想主義と日本車の現実主義をともに吸収して誰も手のつけられない化け物になってしまったクルマとして、思い浮かぶのはメルセデスベンツSクラスだろうか。

フランス人の現実主義がフランス車の味にも如実に現われている

 クルマづくりの好敵手としてともに進化の手を緩めない日本車とドイツ車に対して、フランス車は商圏が限られていることもあり時流の鳥瞰に消極的だ。

 電動化やADASといった近年の先進技術への対応の遅れをみてもそれは明らか。でも「そんなん誰が求めてるわけよ」と開き直れる強さが彼らにはある。

 それは南米や北アフリカといったこれから伸びることが予想される地盤を背景に持つからでもあるだろう。その地においては、廉価で堅牢で乗員含む積載力が乗れることが望まれる。

先代モデルに比べてかなり大型化されたが、旧きよき時代のフランス車の持っていた『気持ちよさ』、『いい意味での割り切り』を具現化しているのがルノーカングー

 日独に対すれば、ある意味よほど現実主義でもあるといえるだろう。

 そんなフランス車の味はベーシックなクルマにこそ強く宿っていると思う。車格のわりにサイズも掛け心地もゆったりしたシート、形式云々関係なくあらゆる入力を丸く収めながらも路面の接地感はしっかりと伝えるバネやダンパーのセットアップ、トップエンドに個性はなくも低回転域から踏んだぶんだけしっかり仕事をするエンジン、形状的にきっちり使い切れる荷室等……。

 これを限りなく旧き佳き時代からのかたちで伝えている現行車といえば、ルノーカングーをおいてほかにないだろう。

イタリア車の味は最もわかりやすく五感を刺激する

 イタリア車の味はこれらの国別においては最も明快だと思う。

 回せば回すほど活き活きと力強く応えてくれる、踏まずにはいられないエンジン、好みはあれど力強く前向きで、確たる造形力を実感させるデザイン、クイクイと向きを変えるに調子の合ったステアリングのギアレシオやロールスピードは早いものの留まってから向こうの粘りがよく効く足周りなど、それらが織りなす重量や質量的な問題とは違う心理的な軽さがクルマに宿っている。

 もちろんフェラーリやマセラティのようなクルマは別枠だが、フランス車同様、廉価なコンパクトカーでもご当地感が存分に感じられるのが嬉しい。

各国のクルマが生き残りのためにドイツ車化しているのに対し、フィアット500、なかでも1.2ポップの4気筒エンジンがイタリア車の味を堪能できる。やや薄味になったが貴重

 とはいえ、そういうベーシックなイタリア車の選択肢は年ごとに絞られている。現在フィアットのホームページに掲載されているモデルは500と500X、パンダのみ。うち、最もイタリア車的なフットワークを持つのはパンダだと思う。 

 が、エンジンがツインエアのみという点が惜しい。

 イタリア車の真髄たるエンジンに昔ながらブン回してナンボ感が宿っているのは、200万円以下で買えるフィアット500の1.2ポップだと思う。この4気筒ファイアユニットのスポーティネスこそが旧きよきイタリア車の味だ。

最新号

ベストカー最新号

平成最後の日本自動車大賞|ベストカー 5月10日号

 ベストカーの最新刊が本日発売! 4月1日に元号が「令和」に決定し、いよいよ平成も残りわずかとなる。そこで、最新号では平成最後の日本自動車大賞を決定。  このほか、デビュー直後の日産デイズ&三菱など注目新車の情報も盛りだくさんの内容でお送り…

カタログ