これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、歴代マーチに設定されてきた特別仕様車「マーチボレロ」について紹介していこう。
文/フォッケウルフ、写真/日産
■レジェンド2代目マーチに設定された初代ボレロ
日産初のリッターカーとして1982年10月に登場したマーチは、2022年8月に惜しまれながら40年という歴史の幕を閉じた。ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手掛けた初代。小型車として効率を徹底した追求した2代目。親しみやすいオシャレなコンパクトカーを印象付けた3代目……。
そして、フレンドリーな魅力はそのままに洗練度を増した4代目モデルと、いずれも日産独自の技術をベースにしながら、時代とともに変化する価値観やユーザーの嗜好を考慮したクルマづくりがなされたことで、国産コンパクトカーのヒットモデルとなって40年という長きに渡って愛されたというわけだ。
人気車種であり、なおかつ1世代あたりの生産期間が長かったとこともあって、マーチにはさまざまな派生モデルが存在する。日本初のツインチャージドシステムを搭載した「マーチターボ」や、当時としては希少な国産小型オープンカーの「マーチカブリオレ」、リアのオーバーハングを延長してワゴン化した「マーチBOX」といったモデルのほか、特別装備をプラスしてオリジナリティをアピールしながらお得感を提供した特別仕様車も数多く販売された。
今回クローズアップする「マーチ ボレロ(以下ボレロ)」は、2代目マーチで特別仕様車として初めて設定され、3代目、4代目でも継続して販売された。
日産の関連会社であるオーテックジャパンが手掛けたカスタムカーとして販売されたが、歴代いずれもコンセプトは共通しており、「エレガント」をテーマに内外装をトータルコーディネートすることで上質な雰囲気を演出した小型車としていた。
ちなみにオーテックジャパンは、日産車をベースにした特装車を送り出してきた。セレナやエルグランドにラインアップされているハイウェイスターやライダーもオーテックが手掛けたカスタムモデルだ。
1997年に登場した最初のボレロは、フロントまわりを丸型ヘッドランプや大型のメッキグリル、メッキオーバーライダーといったレトロ調の専用アイテムをあしらうことで、独特の個性を主張しながら高級感を漂わせている。
車内もシート地や専用メーターパネルといったオリジナルのアイテムがプラスされ、エクステリアで表現した高級感やレトロ調テイストに溢れている。
ちなみにボレロに加えられた専用アイテムは以下の通り。丸型ハロゲンヘッドランプ&フロントターンシグナルランプ/大型クロームメヅキフロントグリル/クロームメッキオーバーライダー(フロント&リア)/フロントマスク組込みハロゲンフォグランプ(CIBIE製)/ウエストモールディング/クロームメヅキハーフホイールカバー/電動リモコンクロームメッキドアミラー(マットタイプ)/丸型リアコンビネーションランプ/カラードドアハンドル&ライセンスランプカバー(1000cc車のみ)/クロームメッキバックドアモール/ネーミングステッカー/専用シート地&ドアトリム/専用内装色/専用カラードメーターパネル。
これだけの専用アイテムを奢りながら、車両価格は132万3000円~168万5000円で、ベース車との価格差は40万円程度だったことを鑑みると、ボレロがいかにお得な特別仕様車だったかがわかるに違いない。
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