S203/2005年1月
2000年頃から、STIのコンプリートモデルについても不定期で発売されるようになった。
最初に登場した「S201」のEJ20は300psを発生した。大いに話題となった特徴的なスタイリングは、いま見ても印象的だ。
一方で、ドライブフィールで印象的だったのが、2004年末発売の「S203」だ。GDBの中期型をベースに「グローバル ピュアスポーツセダン」をコンセプトに掲げ開発されたS203は、STIが手がけた歴代コンプリートカーの中でも、ベース車からの上がり幅やその完成度において際立つものがあったように思う。
タービン径の大型化やタービン軸受けのボールベアリングを採用をはじめ、各部をバランス取りし、専用スポーツECUを採用するなどしたEJ20は、当時歴代最強の320psを発生。全域にわたる俊敏なレスポンスと、爽快な吹け上がりを身に着けていた。
さらには、引き締まったなかにもしなやかにストロークし、フラットな乗り味を提供する足まわりや、意のままのハンドリングなど、シャシーの仕上がりも素晴らしかった。
S208/2017年10月
究極のEJ20エンジン搭載車はなにか? もちろん、人それぞれ見解は異なってくると思うが、ここはやはり最後はSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)が手掛けたS208にしたいと思う。
軽さが武器の現行WRX STIベースのRA-Rのほうがいい、RA-RのほうがSTIコンプリートカーらしさがある、といった意見もあるだろう。しかし、ここはSTIが考えうる最高のコンプリートカーにリスペクトしたいと思う。
S207と同様、フレキシブルドロースティフナーなどSTI得意の補剛パーツに加え、ビルシュタイン製ダンプマチック(フロント)サスペンションの最適化によって、車体の傾きや振動などがS207より約10%向上したほか、11:1のクイックステアリングギア比により、運動性能はS207を大幅に上回っている。
さらに低重心化とロール慣性モーメントが低減し、旋回性能が高まるドライカーボンルーフの採用が挙げられる。
極めつけはパドルシフトから操作できる、インタークーラーウォータースプレイだ。EJ20型エンジンはS207に比べ最高出力においては1ps向上と寂しい感じもするが、出力アップよりもあえて高回転バランスにこだわっている。
ピストン、コンロッド、クランクシャフト、フライホイール、クラッチカバーに至るまでS207からさらに回転バランスを高め、レヴリミットまで精巧な回転バランスで 7000回転を超えてもパンチがあり、よどみなく回る。高回転の気持ちよさは格別だ。
S208はまさに隅々までSTIがこだわり抜いた究極のドライビングマシンなのである。それでいて、スパルタンすぎず、懐が深く、快適性も高いから持てる実力を引き出しやすい。足の動きがよく、快適だからロングドライブも無理なくこなす。
こうして見ていくと、現行WRX STIがEJ搭載車、最後のマシンとなったのは実に感慨深い。みなさんはどのEJ20エンジン搭載車がベストだろうか?
すでに新しいWRX STIの開発はスタートしている。2021年、スバルグローバルプラットフォームにSTI専用のFA20ターボを搭載してデビューする次期WRX STIを期待して待っていようと思う。
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