70周年GPで優勝の栄誉 ホンダがF1史に刻んだ軌跡と復活への光明


 F1 70周年を記念する節目のレースで、レッドブル・ホンダが今季初優勝。F1史に“ニッポンのHONDA”が刻んだ足跡とその意義とは?

 コロナ禍の元で変則スタートをした2020年F1シーズン。今年は1950年のF1ワールドチャンピオンシップ制定から70周年の節目だ。英国のシルバーストーンでの第一回から始まり、今年同じシルバーストーンで70周年を迎えた。

 そのF1史の節目のレースを制したのはもちろんレッドブル・ホンダ、ホンダファンとしては実に感慨深い勝利であった。

文:津川哲夫/写真:Getty Images/Red Bull Content Pool、HONDA

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■戦後の日本に勇気を与えたホンダのF1参戦

カーナンバー11。ドライバーはリッチー・ギンサー。ホンダF1の、いや、自動車大国ニッポンの始まりだったといっても過言ではないホンダ RA272

 F1史の中には数多くの日本チームや日本メーカーの挑戦が記録されているが、歴史の中にしっかりとその名を刻んでいるのは何処よりも、誰よりも、やはりホンダをおいて他にない。

 1964年に独自の1500cc・V12横置きエンジンをクーパーベースのオリジナル車体に積んでワークスデビューを果たし、1500cc時代の最終戦を制したことはF1史にハッキリと刻まれた。

 それは日本にとってアポロが初めて月に着陸したのとほぼ同じレベルの事件であったはずで、1960年代の若者達が本気で海外に目を向け、海外に向かって胸を張ることができた、そんな瞬間だったはずだ。

RA272を駆るアメリカ人ドライバーのリッチー・ギンサー。1965年の秋、ホンダ初の、そして自身にとっても初のF1グランプリ優勝を成し遂げることになる

 第一期ホンダF1挑戦はホンダの挑戦という一企業の問題ではなかった。戦後産まれの団塊の世代間の激しいコンペティションに疲れ、欧米に敵わない意識が充満した世代に猛烈な刺激を与えてくれて、挑戦への激となり、それが将来の夢へと繋がる事を信じさせてくれた。

 第一期ホンダF1は、蹲る日本の若者に立ち上がり、歩き出す勇気を与えてくれたのだ。そして第一期終了間際にもモンツァでの優勝をもぎ取り、日本のホンダはF1史に揺るがぬ名前を刻んだ。

■日本の力を世界に示した第二期ホンダF1

第二期ホンダF1はマクラーレン、セナ・プロストとともにグランプリ全16戦中15勝という大記録をうちたて、モータースポーツファンに鮮烈な記憶を植え付けた

 そして第二期。スピリットからF1再デビューを果たしたホンダ。ターボV6エンジンを持ち込み、再デビュー2シーズン目にはウィリアムズとともにダラスでホンダ3勝目、第二期初優勝を記録し、これが怒濤の第二期へのトリガーを引いてしまった。

 結果、第2期はウィリアムズで、マクラーレンで勝ちまくり、F1界でホンダの名前を不動のものにしたのだ。

 行き場の無い若者たちを励まし奮起させた第一期ホンダF1。

 第二期は尋常でない経済成長を成し遂げた日本の怒濤の力を“これでもか”とF1界と世界に見せつけ誇示した、日本イケイケの時代である。第二期ホンダF1がそうであったように、日本人もまた堂々と世界に向かった時代である。

 ここでホンダは、ずば抜けたエンジニアリングだけでなく、ルールや政治的な戦略も実に大胆かつ巧妙に成し遂げていた。第二期ホンダF1は本当の意味で欧米の全てと戦い全てを制したと言って良いだろう。

第二期ホンダの快進撃の口火を切ったのはウイリアムズだった。F1再参戦の2シーズン目を迎えたホンダはダラスで勝利し、ホンダ通算3勝目、第二期初優勝を成し遂げた

 バブル経済などの話ではなく、このときのホンダは明らかに欧米に対して大きな政治力を働かせていた。

 政治的ロビーワーク等で如何に物事を有利に運ばせるか……現在では経済的な問題だけでなくあらゆるエリアで、悪い意味ではなく、政治的根回しやネゴシエーションが必要なのだが……これまでも、そして現在でも、日本の組織や会社、もちろん個人でも日本人の一番の苦手なエリアだ。

 しかし、第二期ホンダはこれを強かにやり遂げていた。だからこそ高度な技術を思い切り発揮できる環境が整ったのだ。

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