F1開幕戦で完走最下位の15位とリタイアに終わった新生トロロッソ・ホンダ。厳しい船出に“見えた”一戦の2週間後、4月8日に決勝を迎えた第2戦でトロロッソ・ホンダは4位という好成績を残した。なぜ、ホンダF1は躍進できたのか?
その裏には、変化をもたらした新チームの気質があるとF1ジャーナリストの津川哲夫氏は見る。
文:津川哲夫
Photo:Getty images/Red Bull Contente Pool
「4位」は単なる運ではない
開幕2戦目、バーレーンGPで、早くも入賞得点を稼いだトロロッソ・ホンダ。4位入賞は2008年のイギリスGP以来。トップ勢の3台(レッドブルの2台とライコネンのフェラーリ)が消えたことを考えても、続く中団グループを完全にリードした形だ。
今回の結果が、レースでの“ラック”でないことは、トロロッソの2台の予選結果からも伺える。ピエール・ガスリーはQ3(予選3回目)に残り堂々の6番手、ブレンドン・ハートレーも0.3秒差でQ3を逃しての11番手。
わずか2戦目にしてトロロッソ・ホンダは、マクラーレン・ルノーを予選順位で上回ってしまった。
これはレースでも続き、ガスリーは新人らしからぬ安定したレースを展開、しっかりとしたマイペースを維持して、予選順位を上回る4位フィニッシュ。それも終盤ではトップ3と遜色ないラップタイムで走り抜けている。
初戦の苦戦が好成績の呼び水に
初戦メルボルンの結果は予選決勝を通じて、表面上ネガティブな結果に見えた。事実ホンダの熱エネルギー回生ユニット(MGU-H)のトラブルもあり、見る者には「またか!」感が強かったのだ。
また、マクラーレン・ルノーのアロンソが開幕戦で5位に入賞したことで、さらにこの2チームを比較してしまい、ほぼ全ての見解で「やはり、こんなものさ!」と言った意見が飛び交い、マクラーレンは持ち上げられ、トロロッソではなくホンダが批判された。
しかし、これがむしろトロロッソ・ホンダの今回の好結果に結びついたといったら、言い過ぎだろうか。
トロロッソ・ホンダは、昨季マシンをベースとした2018年規則対応型で、パワーユニットも昨年型の信頼性を確立する開発に徹し、短時間で無理矢理搭載。
したがって今シーズン、性能面での開発は、ある意味棚上げされてのシーズンの開幕であった。
最新型の、それも1年の経験とデータを踏まえて開発されたマシンとパワーユニット群を相手に回し、トロロッソ・ホンダの戦闘力が開幕から高いはずがなかったのだ。
実を言えばチームには、この状況への「納得」があり、これが逆にプレッシャーのない自由な環境を産んでいたといってよいだろう。
開幕戦の“見た目の結果”の陰には、テストでの好走や開幕戦での1台完走があり、たった1レースで弱点の発見と、今後の開発プランの方向性が見えてきた、と言って良いかもしれない。
事実、続く第2戦バーレーンで、車体開発で持ち込んだ空力パッケージは見事に効果を発揮。同パッケージ搭載のガスリーと非搭載のハートレー車の完走で、両車の比較と参照データが得られたはずだ。これは今後の開発に大きな資産となりえる。
もちろん、ホンダ製パワーユニットも僅か1レースを経て、2台を完走させた。それも予選でのパフォーマンスと、レース終盤でのしっかりとしたパフォーマンスを見せての結果だ。
レース後のアロンソ(マクラーレン)は、予選でのマクラーレン・ルノーの不発、レースでは偶然ではなくトロロッソ・ホンダの後塵を浴びて、今後のレースへ厳しい表情を隠さない。
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