メルセデスW13 突然の好調はなぜか。大アップデートの中身を探ってみた

リアブレーキダクトフィンの変更が功を奏した

 今回W13は大きくアップデートを施してきた。もちろんポーポシング対策に始まり、フロアエッジの数々の変更とリアブレーキダクトフィンの変更が功を奏し、これでポーポシングを起こさないダウンフォースが増加した。これが上手く機能してカタロニアサーキットにマッチングしたと考えて良いだろう。

 オーバーテイクの難しいサーキット故にトップスピードの確保は戦い易く、特にディフェンシブなレースには有利に働く。ラッセルの様に。

DRS不調のマックスを押さえ込むも、ペレスには簡単に抜かれてしまう
DRS不調のマックスを押さえ込むも、ペレスには簡単に抜かれてしまう

 今回もラッセルは危なげのない、かつアグレッシブなレースを展開し、彼の存在感は高まる一方だ。癖があり、走らないじゃじゃ馬を馴らすが如く扱い、乗りこなしてきて、いよいよトップランナーの風格を醸し出してきた。ではハミルトンはどうだろうか?

 前回のピットインの無線、そして今回の“リタイアしたい”オーラを発したハミルトンの無線会話、これだけ聴いているとハミルトンは終ったかもしれないと思う者は多かったはずだ。もちろん筆者もその一人だった。

 しかしエンジニアからの激が飛んだ後、ハミルトンは確実にハミルトンの在るべき姿に戻ってきたと思う。遅れを確実に取り戻し、トラブルを抱えながらもバトルを展開。好調ボッタスの追い上げも意地で抑えての5位フィニッシュだった。予想以上の出来だったと思うのだ。

 今ハミルトンの心は揺れている。ヤングラッセルに先を越され、周囲の雰囲気はラッセルに偏り始めてきた。昨年最終戦でチャンピオンを失った痛手から立ち直れず、そして与えられたマシンは思ったように走ってはくれない。ハミルトンの落ち込みは当然かも知れない。……が、“お前ならもっと行けるはずだ、諦めるな!!”の激で5位になったのだから、まだまだ闘争心はあるんじゃないかな……と言うより、ハミルトンVSラッセルが見たい!! と筆者は勝手に思っているのであった。

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津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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