【モナコGP】カルロスとの同時ピットインで全てを失ったルクレール  最強マシンをもつフェラーリよ、これでいいのか?

最速マシンをもつフェラーリチームの問題点

 フェラーリは、現在の上出来なマシンを得た事で大きな希望を持った。F1-75は昨年のシーズンを捨ててまで、開発に総力を上げてきたマシン。細部まで繊細な開発が行われてきた。結果、開幕からその速さを誇示し、その速さ故に今シーズンはいよいよフェラーリの年か? とまで噂されてきた。しかしシーズンが進むにつれて、フェラーリの強さにほころびが見え始めている。

 フェラーリはこれまでメカニカルには強力な信頼性を誇っていた。しかしこれがモナコでは、メカニカルではなくチームの信頼性にヒビが入った。これはこれまでのレースでも感じられていたことだが、チームのミスで、勝てるレースを落としてしまっている。マシンの出来の良さには問題はないのだが、ドライバーを含めたチーム全体の信頼性が揺らいでいるのだ。

 かつてのフェラーリ黄金時代、フェラーリの勝利はシューマッハの力だけではなく、チーム全体のきっちりと管理された総合力が根底にあった。計画的に物事を運び、作戦を駆使し……まさに管理レースが行われていたわけだ。この管理にはドライバーもデザイナーもマネージメントもメカニックも含まれ、強力な指揮者によって管理運営されてきた。ジャン・トッド、ロス・ブラウン、ロリー・バーン、ミハエル・シューマッハ……などがその指揮官であった。

ピットミスが後を引き、2位になったサインツにも笑みがなかった

周回遅れの処理に手間取ったサインツ。ペレスに先を行かれてしまった
周回遅れの処理に手間取ったサインツ。ペレスに先を行かれてしまった

 フェラーリは今、その指揮官がいない。それぞれの部門には立派なリーダーがいる。だからこそF1-75と言う傑作が産まれたのは確かだ。しかしこと戦略や咄嗟の判断力を要求される事象が起きた場合に、フェラーリ・チームにはその判断をする指揮官が欠けている。もちろんビノットのことだけを語っているわけではなく、彼をも含めての強権指揮官が必要そうだ。

 フェラーリに必要なのは、チームを構成する風通しの良い骨格造りなのではないだろうか。F1-75が上出来過ぎたことで、フェラーリは勝利への準備が整ったと思ったかもしれない。しかし現実には勝利は遠のき、上出来のマシンだけが行き場を失い空中を漂っている。昨シーズンを捨ててまで、F1-75の開発に打ち込んだことで、F1-75は上質なF1マシンとして生まれたが、それを使うチームが力不足だ。

マシンが速くてもチーム力なくしてF1チャンピオンにはなれない

 フェラーリ黄金時代の終りに、その時代を造り上げてきた管理システムは結局消滅してしまい、それ以前の渾沌のフェラーリに舞い戻ってしまった。

 今のフェラーリの誤算は、F1-75が上出来過ぎたことで、“チーム力なくして勝利を得る事は出来ない”と言う簡単な理屈を忘れたことかもしれない。もしそうならこれは勝利を失う大誤算になってしまうかも…。

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津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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