男社会の壁に何度跳ね返されても決してめげない! 鋼材トレーラ乗りになっためぐみさんの素顔の自叙伝【前編】

家事・育児を旦那さんにまかせ本格的に運転手の仕事へ

 そんな生活をしているうちに、私は先輩の中の一人と結婚することになりました。旦那は元々腰と首が悪いらしく、調子の悪い時は立ちあがることもできない状態だったのと、私よりも全然マメな性格だったので、旦那が家族と育児を担当して、私が家族を養っていくことにしました。

 というか、私はもっと本格的に運転手の仕事がしたかったので、「ちゃんと養っていくので家のことをよろしくお願いします」と旦那にお願いしたのです。

 ここからが本腰入れての運転手としての生活のスタートです。今までお世話になった陸送会社を退職し、またまた雇ってくれる運送屋さん探しです。

 もう電話での門前払いも慣れっこで、次から次へと手当たり次第電話して、「やっぱり女はダメなのかな?」と諦めかけた頃、面接してくれる会社がありました。4t車でトラックの部品を工場に持って行くのをメインにやっている会社でした。

 面接では仕事内容をいろいろ説明してくれましたが、運送会社の仕事ってどんな感じなのか全く知らなかったので、話を聞いてもピンときません。

 フォークリフトで自分で荷扱いをするということで、恐る恐る「フォークリフトの免許は持っているのですが、実務経験は全くないので、もし採用していただけることになったら、入社するまでの1カ月の間、仕事が終わってからこちらでフォークリフトの練習をさせてもらってもいいでしょうか?」と面接の人に聞いてみたら、「いいですよ。ぜひ練習しに来て、入社する頃には少し慣れた状態にしてください」と言っていただきました。

 その「入社前にフォークリフトの練習をしたい」というところにやる気を感じてもらって、めでたく採用してもらいました。

 そして約束通り、入社の日まで仕事が終わってからフォークリフトの練習をしに通ったけれど、もともと運動神経もセンスも無い私には、なんともむずかしいこと! きれいにパレットを積み重ねることもなかなかできませんでした。

 あとから聞いた話ですが、新しい会社の運転手さん達も、女性が入社すると聞いて、「女がトラックに乗れるわけない」「シート掛けができるわけない」「ロープ、ガッチャ、荷扱い、全部できるわけない」と大反対だったみたいです。

さまざまな試練が待ち受けていた4t平ボディの仕事

 新しい会社では4tの平ボディに乗ることになりました。何もかも初めてのことで、まるでいきなり戦場に立たされたかのようです。

 部品を作っている工場で、自分の積む荷物を見つけて積み込みするのですが、他にも積み込みをする人が後ろに並んでいるので、フォークで手早く積んで荷締めをして出ないと、後ろの人に迷惑がかかります。

 降ろす工場でも同じで、自分で降ろして、空パレを積んでロープ掛けして……。後ろで待っている人達から「早くしろ」の圧力が伝わってきます。

 でもドンくさい私は、みんなのように手早く荷扱いができなくて、終いには後ろの人に「すぐ終わるからフォークリフトを先に貸して」ってまくられ、でも荷扱いが遅い私は何も言えず……。

 次々と後ろから来る人にフォークリフトを取られて貸してもらえず、思うようにできない自分に苛立ち、悔しくて悔しくて……。仕事中はとにかく必死でしたが、仕事が終わってから家まで泣きながら帰ることがしょっちゅうありました。

 私がやりたいって言いだしたことなので、旦那に弱音を吐くわけにもいかず、「とにかくできるようになって見返してやる!」の一心で、みんなより1時間以上早く出勤して、誰か来る前に1回目の積み込みと荷降ろしを終わらせて、あとは一番仕事ができると言われている先輩にコツを聞いたり、実際荷扱いしているところを見させてもらったり、休みの日も会社に行って練習しました。

 3カ月くらいたった頃には、やっと人並みにフォークリフトも扱えるようになって、並んでいると「先にやっていいよ」と譲ってもらえるようにもなりました。長かったー。たぶん、普通の人はすぐにできるようになるんだろうけど、センスのない私の3カ月、長かったぁー(笑)。

 メインの地場の仕事ができるようになって、長距離も行かせてもらえるようになりました。長距離に行くと、行きの荷物は自社のトラック部品なのでなんてことないのですが、帰りは他の運送屋さんやいろいろなところから荷物をもらうので、毎回どこに行くのか、何を積むのかわかりません。

 私的にはそれがドキドキワクワク楽しかったのですが、行く先々でやはりいつもの「なんで女の子が平ボディなんて乗ってるの?」「シート掛けとかできないでしょ」「トラックに乗りたいならダンプとかパレット積みのウイングとか乗ってれば?」。時には「女の子なんかにうちの荷物積ませて大丈夫?」とか「男の人はいなかったの?」とか……。

 とにかく「平ボディ業界は女の入るところじゃない」って言われているようで、悔しかったです。

 ちょっと何か手伝ってもらえば、「女の子はなんでも手伝ってもらえて良いね」と、色目を使ってやってもらっているみたいに言われる。男の人だって手伝ってもらうこともあるのに、私だけ自分ではやらないみたいに思われるのが嫌で、手伝ってくれようとするのを「大丈夫です」って断ると、今度は「女のくせに生意気だ」みたいなことになるし、うーん、むずかしい(笑)。

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