■池田直渡氏:日本の自動車文化を輸出
今、世界のモーターショーは衰退へと向かっている。という現状認識のなかで、東京モーターショーは、名称を変更してジャパンモビリティショーへと衣替えを図ることになった。名前だけ変えても中身が変わらなければ、意味がない。
では一体、何を基準に考えるのだろうか? 残念ながら、今後、少子化が進む日本国内の自動車販売がそうそう上向くビジョンは持てない。
アメリカはアメリカで独立したマーケットがあるし、中国は当面かなり厳しい不況に直面するはずで、日本で行うこの種のショーが、成長を目指すのであれば、おそらくはASEANとインドをターゲットにしたアジアのモビリティショーを目指す以外に出口があるとは考え難い。
幸いなことに日本の自動車文化は、まだまだアドバンテージがある。だから筆者は、ASEANとインドのメディアと富裕層に、どうやってこのショーへ来てもらうかの戦略をしっかり練っていくことが最も重要だと考えている。
具体的に言えば1000組の人々にしっかり日本の自動車文化を見てもらうことだろう。だから日本の自動車文化資産をツアーで回れる仕組みを提案したい。
ジャパンモビリティショーと富士のサーキットホテル、同じく富士のモータースポーツ村、鈴鹿のF1、あるいはS耐でのカーボンニュートラルチャレンジ、トヨタミュージアムなどを一度に見て回れるツアーを組むことで、日本の自動車文化を積極的に輸出していく形ができれば、成長を目指す面白い取り組みになるのではないだろうか?
■島下泰久氏:モビリティ版ダボス会議に
ジャパンモビリティショーに私が期待するのは、これを展示中心の博覧会に留めず、世界の自動車メーカーのトップ、業界のリーダー、注目の頭脳が集まって未来のモビリティのための議論の場にしていってほしいということです。言わば‟東京モビリティサミット”、あるいはモビリティ版ダボス会議の併催ですね。
華やかに開催されていた頃の世界のモーターショーは、新型車のお披露目の舞台というだけでなく、実はまさに世界の自動車メーカーのトップ、業界の要人が集結する場でもありました。これが非常に大きな意味を持っていたと思うんですよね。
何しろオフィシャルに会うのは面倒な相手でも、容易に顔を合わせられますから、ここから意外なビジネスに発展することも……。
我々ジャーナリストにとっては、普段はアポの取れないメーカーの首脳陣に比較的容易に話を聞けたのがモーターショーという場でした。経営陣だけでなくデザイナーや技術者などたくさんの人が集っていましたから公式メディアセッションで、あるいは歩いているのを捕まえて、貴重な話を聞くことができたのです。
ジャパンモビリティショーにも世界から人が集まってほしい。けれど単に日本ローカルのショーに留まっていては、それこそ海外メーカーのトップなどに来てもらうのは難しい。実はこれがサミットというアイディアの裏テーマ。
「これは顔を出さないと!」と世界の関係者の誰もが思うような場を創り、そして発信していく。そうやってTOKYOをモビリティにとっての世界最重要都市に育てていけたらと思っているのです。
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