日本車史上を彩った「あの名車」が今作れない事情と理由

日本車史上を彩った「あの名車」が今作れない事情と理由

 クルマ好きが集まると「1990年代の、あのクルマよかったな」、「今あれば買うのに」という話が必ず出る。

「20年前は作れたんだから、今だって同じ感覚のクルマを作れるだろう」

 そう思う人は少なくないはずだ。

 あの頃の「名車」を、中身だけ最新技術に載せ替えて発売すれば、売れるのではないか。もちろん安全技術や現行ラインナップとの関係もあるだろう。「それほど売れないのではないか」という懸念も強いかもしれない。

 本企画では1990年代に活躍した「名車」たちの復刻版を作れないものか、作ろうと思えば作れるんじゃないか、作れないとしたらどんな理由があるか、という考察をお届けしたい。

 なお、今回当時の名車の価格を調べていてその「安さ」に衝撃を受けた。そのいっぽうで1995年と現在とで日本人の収入、平均給与はほとんど変わっていない。

文:片岡英明


■やる気があれば復活できるはず!

 かつての名車を、当時、そのままに再現するのは至難の技だ。

 当時は憧れの存在だったが、今、乗ってみると設計の古さに驚かされることも多い。とくにコーナリング性能やハンドリング性能の違いには愕然とするはずだ。学生時代の憧れたマドンナに、同窓会で会ったときのようなほろ苦さを感じることになるだろう。

 また、今は衝突安全に代表される安全性の規格や排ガス規制が厳しくなっている。だからまったく同じように造るのは難しい。

 とはいえMINIやアルピーヌA110のように、似せて作るだけならハードルはグッと低くなるだろう。パワートレインやシャシーも最新のものを使えるから走りの実力だって現代レベルだ。

 ヨーロッパでは大ヒットしたフォルクスワーゲン・ビートルをニュービートルとして復活させたし、MINIも現代に甦らせた。アメリカのマスタングやカマロなどのマッスルカーも同様だ。最近ではアルピーヌの伝説の名スポーツカー、A110が当時の面影を色濃く残しながら生まれ変わっている。フォードGT40も復活した。

 ヘリテージやレガシィを持つ名車を現代の技術で甦らせることは、それほど難しいことではない。最新のテクノロジーや安全装備を盛り込み、コンセプトやデザインを寄せていけばよい。

 もちろん「そのままでないなら復活させないほうがいい」と思う人もいるだろう。しかしかつての名車の、日本車が最も輝いていた時期に登場したモデルたちのコンセプトが、いまの時代に改めて求められている、ということもあるだろう。そういう名車を紹介していきたい。

■日産R32スカイラインGT-R

R32スカイラインGT-R、1989年発売、新車時価格445万円(93年に発売したVスペックは526万円)
R32スカイラインGT-R、1989年発売、新車時価格445万円(93年に発売したVスペックは526万円)

 年号が平成に変わった1989年8月にBNR32の型式を持つGT-Rが発売された。エンジンは2568ccのRB26DETT型直列6気筒DOHCツインターボだ。トランスミッションは5速MTを組み合わせている。駆動方式は電子制御トルクスプリット4WDのアテーサE-TSだ。サーキットでも大暴れし、デザインも美しかった。

 名車ぞろいの歴代スカイラインのなかでも、このGT-Rを復活させてほしい、という声は特に大きい。

 600万円くらいのプライスタグを付けてでも再販すれば、それなりに売れるだろう。

 プラットフォームや4WDシステムは最新のものを使うことができ、その上に2ドアのクーペボディを被せればいい。衝突安全もなんとかクリアできるはずだ。だが、今の日産には肝心の直列6気筒エンジンがない。パワーユニットを復活させるには多額の投資を必要とする。だから「そのまま」で実現する可能性は低い。

 しかし、百歩譲ってメルセデス・ベンツの最新ストレート6を積むという奥の手もある。今の技術で造れば、かなり魅力的なクルマに仕上がるはずだ。

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