重量は約2kg、DCTとシフターの長所を兼備する
ホンダはバイクのオートマ化に熱心なメーカーで、1958年のスーパーカブからクラッチ操作不要の自動遠心クラッチを搭載したほか、1962年にオートマスクーターのジュノオ、1977年にオートマスポーツバイクのCB750エアラを発売。
そして近年はバイクにもセミオートマのDCT(デュアルクラッチトランスミッション)搭載車を積極的に投入している。DCTはクラッチレバーが非装備で、オートマ走行のほか、手元のボタンか足元のペダルで任意に変速できる。
また近頃のバイクはクイックシフター(オートシフターとも)も普及してきた。これはクラッチレバーを備える通常のマニュアル車に装着するシステムで、レバーを使わずに足元のペダルだけで変速できる。センサーが足元の入力を感知し、エンジン点火のカットや回転数制御を行うことで、足元のペダルのみでギヤチェンジ可能だ。
両者のいいとこどりがE-クラッチと言える。DCTはクラッチレバーがなく、マニュアルクラッチ操作ができない。そしてシフターはレバーを備え、これを使わなくてもギヤ変更できるが、発進&停止時にはレバーが必要だ。
E-クラッチはクラッチレバーを備え、マニュアル操作が可能。さらに発進&停止時にレバーを使わなくてもいい。またDCTはクラッチを2つ備えるため、車重が10kg程度増加してしまうが、E-クラッチなら約2kgの重量増で済む。
構造は軽量シンプル、運転にはMT免許が必要だ
仕組みは意外にもシンプルだ。エンジン右側にある 2つのモーターに電流を送ることでクラッチを最適かつ繊細に制御。判断するのはMCU(モーターコントロールユニット)という頭脳で、車速やスロットル開度など多彩な情報に基づいてクラッチの接続と切断を行う。
同時にエンジンの点火時期や燃料噴射も制御され、半クラッチ制御が入るため、変速ショックによるギクシャクも少ない。プロ並みのシフトチェンジが可能になるのだ。
クラッチやミッションは従来の機構と同じだが、クラッチを操作するレリーズ部分の3分割構造がキモ。ギヤでカムを切り替えることで、ハンドル側クラッチレバーによる手動操作とモーターによるクラッチ制御が独立して作動する。また手動操作による強制介入も実現した。
こうした簡易な構造のため、既存エンジンに追加しやすいというのもポイント。なお、開発初期段階でシステムの大きさと重さは約2倍あり、リヤシートに載せる必要があるほど巨大だった。上層部から「大きさ、重さ、コストを半分にする」よう要請があり、特にコスト面で多大な苦労をしたと開発陣は口を揃えていた。
なおE-クラッチ仕様にはクラッチレバーが必須のため、AT限定免許ではなく、MT免許が必要。DCTはAT免許でOKなだけに、この辺もDCTとE-クラッチの違いだ。ちなみにAT限定免許で運転するには、クラッチレバーを外した仕様を設定する必要がある。
価格はシフターとDCTの間、今後の展開にも期待!
このタイミングでE-クラッチが登場したのは、DCTの普及が進んだことが背景にある。マニュアルとDCTが設定されている機種のうち、DCTを選ぶユーザーの割合が50~60%に達し、安楽なクラッチを選ぶ人が増えてきた。E-クラッチでは「機種ごとに60~70%を目標に展開したい」と開発陣は語る。
DCTは普及するまで10年かかったが、E-クラッチは「10年かからず普及するのでは?」との見通しも。E-クラッチを搭載したCB650R&CBR650Rのユーザー層は30代以上、初めて大型バイクにステップアップする人を想定した。
しかし既存エンジンへの追加が容易で、搭載機種の選定にあたっては「250~1000ccクラスまでを検討した」という。順次FUNバイクに適用されれば、ライダーになるためのハードルが一段下がることになるので、今後に期待だ。
気になる価格に関しては「シフターが約3万円、DCTが約10万円。その間ぐらいでは」と話す。となると価格はマニュアル車から+6万円前後か。十分価値あるプライスと言えるだろう。
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コメント
コメントの使い方この長所は、最も難しい単純化を徹底したことで、軽く実現できたことですね。
二十年前に四輪用が生まれた時も、欧州は超高額で半レーシングカーにしか設定できなかったのが、国産は単純で軽く安価を成し遂げました。
でも流行らなかった。今回はこの価値を認められる時代になっていて、流行することを願います。