「いいクルマのハズなのに、どうして売れてないんだろう?」と思うクルマは常にあるものだが、マツダ3もそんな一台だ。
値段か、クルマのデキが購入の決め手に欠けるのか、それともアクセラという、すでに世間に浸透した名前を捨ててしまったことが響いているのか?
2020年末に実際にマツダ3を購入した自動車評論家、斎藤 聡氏に、マツダ3の魅力といまいち波に乗り切れていない現状を考察してもらった。
文/斎藤 聡、写真/MAZDA
【画像ギャラリー】極限までも磨き上げられたデザインも魅力!! マツダ3 セダン&ファストバックをギャラリーでチェック!(18枚)画像ギャラリー■自身購入の決め手は「SKYACTIV-X搭載車に乗りたかったから」 斎藤が語る可能性
ボクがマツダ3を買った理由は、ずばりSKYACTIV-Xっていうエンジンに乗っておきたかったからです。ガソリンとディーゼルのいいとこ取りをしたエンジン……なんて言われることがありますが、事はそんな簡単ではなくて、超希薄燃料をきれいに燃やすことのできるエンジンで、もしかしたら内燃機関の未来を切り開く可能性を秘めたエンジンでもあると思っています。
巷では電気自動車が話題の中心で、近々内燃機関はEVにとって代わる、といわんばかりの勢いです。もちろん、EVも魅力的な動力のひとつだと思うのですが、ボク個人としては、いまだに内燃機関にロマンを感じているんです。エンジンのシリンダーのなかで燃料が爆発することで直接的にパワーを作り出し、その力を動力にしている、それがとても面白いと思うんです。
世はカーボンニュートラルに向けて進んでいます。でも、それと内燃機関がダメということとは違う話ではないかと思うんです。一見するとCO2を排出する内燃機関は「悪」に見えるかもしれませんが、今この段階ですべての可能性を切り捨ててしまうのは、あまりにも拙速だと思うわけです。
可能性を徹底的に探ることはとても大切で、それをマツダがやっているのだからそこに一票入れて気分を共有してもいいなと思ったわけです。
■指一本分以下のステアリング操作にも反応 クルマの出来も「力作」
クルマの出来も個人的には力作だと感じています。サスペンションはリアサスがマルチリンクの独立式からトーションビームのリジッド式に代わっていて、後退しているように見えなくもありませんが、必要なのは、サスペンション形式ではなく、それで作り出される乗り心地とか操縦性にあるわけです。
乗り心地については……まあ、デビュー当初のサスペンションは比較的硬めでコツコツした乗り心地がありました。特にファストバックはリアシートにあまり積極的に乗りたいと思わないくらい硬めでした。ボクの選んだセダンのほうが乗り心地については上々で、適度に引き締まった足回りといった印象です。
これも先の年改(年次改良)でセッティングが変わり、しっとりした乗り心地になりました。
操縦性は、マツダの考える「人馬一体」を形にしようとしていて、ステアリング操作も指一本分以下の微舵応答からちゃんと反応が出ていて、しかも精度感もあります。つまり、微細なハンドル操作からちゃんとドライバーの意図をくみ取るようにクルマが反応してくれるということです。
それでいて神経質さとか過敏さがないので、緊張せずにクルマとドライバーである自分の運転操作がぴたりと一致するような一体感を実感できます。
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