[冷たすぎ]ても[熱すぎ]ても[ダメ]!? クルマの冷却系の隠された技術

■インタークーラーは冷却系の最前列に配置する

エアコンコンデンサーも冷却系。80℃を50℃まで冷やすため、エンジンルームの最前部に配置される
エアコンコンデンサーも冷却系。80℃を50℃まで冷やすため、エンジンルームの最前部に配置される

 最近多いターボエンジンでは、過給により熱を帯びた吸気を冷やすためにインタークーラーを装備します。

 ターボチャージャーで圧縮された吸気は80~100℃にもなります。これをそのまま吸気管からシリンダーに送り込むと、ノッキングや異常燃焼を起こします。吸気の適温とされる40~50℃に冷やすためにインタークーラーを通すのです。

 以前は空冷式インタークーラーが一般的でしたが、最新のエンジンでは水冷式が多く使われています。これは、より精度の高い吸気温度コントロールのためです。空冷式インタークーラーは「冷やす」ことしかできません。外気温がマイナスになる冬場の北海道などでは吸気が冷えすぎてしまいます。

 特に直噴ガソリンエンジンでは、冷えすぎた吸気がシリンダーに供給されると、直噴された燃料との混合が不十分となり、不完全燃焼になり、出力の低下だけでなく燃費も大幅に低下してしまいます。

 そこで水冷式なのです。インタークーラー周囲は40~45℃の冷却水に覆われています。外気温にかかわらず安定した水温で吸気温度をコントロールできます。夏場は「クーラー」ですが厳冬期はむしろ、エンジンの冷却水も使って吸気の温度を加熱する「ヒーター」の役割を果たすのです。

 この水冷式インタークーラーの冷却水を冷やすため専用のラジエターが必要となりますが、水温を40~50℃に管理するため、70℃の風を吹き出すエンジン冷却水用のラジエターの後方に置くことはできません。インタークーラー用ラジエターはエンジンルームの最前端、走行風が直接当たる位置に置くのです。

 冷却系統といえばエアコン用コンデンサーもあります。コンプレッサーで圧縮された冷媒(エアコンガス)は80℃ほどの半液体になり、コンデンサーでおおよそ50~60℃に冷却されエバポレーター(減圧熱交換器)に送られます。

 エアコンは、高圧縮された液体冷媒が一気に気化する際の気化熱により温度を下げるのがその原理です。気化した冷媒を再びコンプレッサー圧縮で液体化→コンデンサー冷却→エバポレーター気化のサイクルでエアコンは機能します。

 エアコン・コンデンサーも80℃の半液体物資を50℃に下げるため、通過風は外気温度程度が必要です。やはりインタークーラー用ラジエターと並んで、エンジン冷却用のラジエターより前方に置かれます。

 このほかにもエンジンオイルクーラーやATオイルクーラーなどもあります。ATオイルは100℃前後が適温なので、ATオイルクーラーはエンジン冷却水用ラジエターのロアタンク内に内蔵されています。

 エンジンオイルクーラーはオイルフィルター部から配管し、小型ラジエターで120℃前後のオイルを100℃前後に冷却するため、エンジン冷却用ラジエターの横か、後方に配置します。

 このように、冷却系といってもその作用温度域によって配置が決められているのです。冷却効率を、腐食を防止するため、コア部分の冷却フィンはこまめに優しく清掃しましょう。

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