■四輪操舵(4WS)
4WSと聞いて1980年代から1990年代にかけてホンダや日産、トヨタが積極的に市販車に投入していたことを思い出す人が多いはず。
そもそも操舵応答性というのは、ドライバーが動的な差異を感じ取る上で最も繊細なニュアンスが伝わるものかもしれない。それだけにその技術が市場に現われてから四半世紀以上になる4WSは人間の感性との差異を埋めるリニアリティの追求に多くの時間を費やしてきた。
今、世界で最も新しい4WSはポルシェが911GT3とターボに搭載した「リアアクスルステア」。低速域では逆相、高速域では同相となるだけでなく、50km~80km/hのゾーンでは両相をリニアにコントロールするそれがユニークなのは、ブレーキング時に後ろ両輪を車体内側に向ける、いわゆるトーイン制御を行っていることだ。制動時のスタビリティを改善するというポルシェらしいギミックは、不安定な姿勢に陥りがちなヨーを残しながらの高速ブレーキングなどで大きな効果を体感できるなど、逆相付4WSの新たな可能性をみせてくれる。
日本のメーカーでは最も4WSに熱心といえる日産は、この技術を継続的に採用、現在もフーガとスカイラインクーペに「4WAS」として搭載されている。システムはステアリングの操作量や車速に応じて、前後輪の舵角をアクチュエーターで最適化するもの。新型スカイラインに採用されたステアバイワイヤ、ダイレクト・アダプティブ・ステアリングとの連携は見送られたが、これらと自動運転技術が組み合わせられることにより、操舵に依存しない危機回避や車輌安定性の確立というまったく新しいステージがみえてくるはずだ。
日本メーカーでは最新の4WSとなるレクサスの「LDH」の制御ロジックは、日産の4WASよりさらに一歩踏み込んだもの。車輌の物理特性や挙動状態から今後求められる車輌の運動性を数式的に解析し、介入量を決定するという、いってみれば知能的判断を加えたものだ。一見複雑な制御にみえるが、低速域での逆相制御を採り入れながらも、全域でドライブフィールの違和感は極力抑えられている。最も精緻かつ高機能な世界屈指の4WSといえるだろう。(TEXT/渡辺敏史)
【画像ギャラリー】9速AT ヘッドアップディスプレイ シート 衝突軽減ブレーキ…… クルマの技術はどこまで進んだのか?最先端技術の世界(22枚)画像ギャラリー■ブレーキシステム
ブレーキシステムも、カーボンだからいい、とか、ブレンボだから凄い、といった時代ではなくなってきた。クルマの個性や性能、目指すパフォーマンス結果によって、選ぶべきブレーキシステムが異なって当たり前。普段乗りのミニバンに誰もコンポジットブレーキシステムなんて装着しようと誰も思わない。それと同じである。
例えば、スーパーカー界に新風を送り込んだマクラーレンのMP4-12Cというクルマでは、標準装備のスチールブレーキの性能がすばらしい。サーキット走行にも充分耐えうるもので、しかも、システムとして軽い。エンジニアも、常識的なスーパーカーの利用の範疇では、カーボンコンポジットブレーキなんて要らない、と豪語していた。しかし、例えば、サーキットの全開走行を何10ラップもしたい!! という人がタマタマいらっしゃったとしよう。そういう方には、カーボンブレーキをオススメする。
ブレーキ技術も日進月歩。最先端という意味でおそらく世界一のパフォーマンスをみせてくれそうなブレーキがある。われらが日本の曙ブレーキがマクラーレンP1に提供する、世にも美しいブレーキシステムだ。
ロン・デニス曰く、「P1の性能に必要だからアケボノを使った」。その言葉を聞いただけで、“踏んでみたい”と思った。(TEXT/西川 淳)
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