かつて日本で売っていた新型ジュークやマイクラ(=マーチ)は未導入! 日産はなぜ欧州向けモデルを日本導入しない?
小型SUV(スポーツ多目的車)の先鞭をつけた日産 ジュークは、2010年に初代が発売された。2代目は2019年から欧州で、2020年からオーストラリアで販売されているが、国内にはジュークではなく、キックスが小型SUVとして導入された。
なぜ、ジュークの後継ではなくキックスなのか? マーチ後継車として欧州で売られているマイクラの例も合わせてその理由に迫る。
文:御堀直嗣、写真:日産、ホンダ
■なぜ欧州販売車の新型ジュークを日本に導入しないのか
日産自動車はその経緯を次のように説明している。
「2代目のジュークは、どちらかといえば外観の造形を重視した車種で、それに対し日本のお客様のSUVご利用の実態は、日常的な使い方に加え遠出などにも使われ、その際には多人数乗車や荷物の積載性も期待されるので、小型SUVという車種における“選択と集中”の意味も含め、キックスを日本に導入しました」とのことである。
同時にまた、日本ではノートやセレナでe-POWER仕様の人気が高く、この点でもキックスが有力となったようだ。ちなみに欧州などで販売されているジュークは、エンジン車のみである。
日本への導入に際し、2016年のブラジルを皮切りに、メキシコ、中国、中東で販売されてきたキックス(こちらはエンジン車で、タイのみe-POWERとなる)と比べ、さらなる改良が加えられ、上質な車格になっているという。
また、e-POWERをキックスに搭載するに際して出力を高め、ハイブリッド化に伴い車内への遮音性能を上げて上質さを増し、サスペンションも改良して操縦性と乗り心地が改善されている。試乗してみると、日産が説明した改良点の一つひとつにうなずけるよさを体感できた。
e-POWERは、バッテリーをより有効活用することにより、発電用エンジンの作動を日常の領域で極力減らしている。
バッテリーからの電力の出力を上げることによって通常走行ではほぼモーターのみで走れる。エンジンが始動するのはよほど強い加速をさせたときで、それ以外はあたかも電気自動車(EV)を運転しているかのようだ。
日産はe-POWER搭載車種について、「電気自動車の新しいカタチ」という宣伝文句を使っているが(メカニズム的には電気自動車ではなくシリーズハイブリッド車だ)、充電しなくていいEVという感触がある。
アクセルのワンペダル操作(e-POWERドライブ)も選択でき、これを活用すれば、減速するときの回生を利用して充電できるので、速度をワンペダル操作でうまく調整すればエンジンによる発電をより少なくできる。
発電用エンジンをできるだけ始動させないことに加え、防音や遮音性能を高め、窓ガラスも厚くするなどしているため、室内の静粛性は高く、上級車感覚がある。
その上級車感覚は、サスペンションの改良も活きていて、減衰のきいたダンパーの働きと、突き上げのないしなやかな乗り心地によって上質な運転感覚と乗り味をもたらしている。
4ドアセダンの上級車種を選ぶ意味を失わせるのではないかと思えるほど、その満足度は単なる小型SUVの魅力にとどまらない。
荷室は容量が大きく、すっきりと整理された様子は、荷物も積み込みやすそうだ。2代目ジュークの実車を見る機会はないが、小型SUVとしてe‐Powerのキックスで正解だと実感した。
コメント
コメントの使い方