「新車の匂い」は薄くなっている!?
前述した新車の匂いは、ケミカル(化学的に合成したもの)なだけに、好きな人は好き、気にしない人は気にしない、嫌いな人は嫌いと、好みが分かれる。
しかし、新車の匂いの原因となるVOCやホルムアルデヒドといった化学物質の成分は、新築の住宅などでこれらが原因で倦怠感、頭痛、めまいなどの症状が出るシックハウス症候群の原因に共通するところがある。
そのため新車に乗ったことが原因でこれらの症状が出る人もおり、シックカー症候群という症状、言葉があるくらいなのだ。
こうした事情もあり、自動車メーカーや部品メーカーは、クルマのインテリアの生産時に使われる接着剤などの成分の濃度を薄くする、無害なものにするといった努力をしている。
代表的な例を挙げると、ボルボは10年以上前から生産の際に無害な化学物質を使い、クルマが解錠されている際には自動で車内を換気するシステムを装備している。
また、ウレタンを自動車メーカーに供給する東ソーでは2013年にVOCの発生をゼロにしたアミン系環境対応型ウレタン発泡触媒を開発し、2014年あたりから供給が始まっている。
こうした背景や、自動車メーカーと部品メーカーの動きを見ると、新車の匂いが薄くなっているのも当然の話だ。
なお、新車の匂いはクルマを使ってきた歴史が比較的短いためなのか、中国や韓国といったアジア圏で嫌われる傾向が強いようだ。
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かつて「新車の匂い」は新車の証のような、好意的な意味で使われたが、近年はあまりよくないものとなっている。
これは「有害だった昔のクルマの排気ガスは、(ガソリンの質や精製が現代と違ったことも含め)いい匂いがした」と言う人がいるのと、似たところがあるのかもしれない。
もちろん、クルマから出る有害なものが少しでも減るのは大歓迎なのだが、一部の人だけだとしても新車の匂いという“お楽しみ”のようなものがなくなることには、時代の流れとはいえ一抹の寂しさを感じるのも事実だ。
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