プレミアムブランドとフルラインメーカーが違って当然
輸入車も国産車も、近年はSUVの充実に力を注いでいることに間違いはない。そのうえで、先に述べたように、メルセデスベンツやBMWではクーペやカブリオレといった趣味性の高い車種も豊富にそろえる点が、トヨタや日産と違って見える。
理由は、メルセデスベンツにしてもBMWにしても、年間の世界販売台数が200万~250万台水準であり、付加価値の高いブランドであることを承知しているからだ。
逆にトヨタや日産は、トヨタが単独ブランドで970万台、ダイハツと日野自動車を含むグループ合計で1074万台になる。日産は約500万台だ。そして両社はフルラインメーカーであり、軽自動車も国内では戦力のひとつとなる。
自動車メーカーとひと言でいっても、販売台数と立ち位置によって車種構成の考え方は違って当然だ。プレミアムブランドと位置付けられるメルセデスベンツやBMWは、トヨタの4分の1、あるいは日産の半分程度の販売台数で収益を高めることを考え、付加価値の高い車種を増やすことが重要だ。
いっぽうで、フルラインメーカーとして世界で販売することにより大規模であることを維持しようとするトヨタや日産は、小型車から高級車まで世界の市場でどのように迎えられるかを視野に車種構成を考えなければならない。
単に車種を増やすだけでなく、世界的な共通化も視野に入れながら、効率よく売っていく戦略が必要になるだろう。その点は、同じドイツ車でもフォルクスワーゲンと似ている。VWの国内販売車種は、12車種ほどだ。
なおかつ、トヨタや日産のみならずホンダなどでも販売店系列を止めているとあれば、余分な車種を整理するのは当然といえる。
買い替えユーザーの心理
しかし現状のままでよいかというと、考えさせられる点もある。
たとえばトヨタのプレミオやアリオンの場合、カローラが3ナンバー車となりより上質なクルマとなったため代替の対象になるのではないかと自動車メーカーは考えるかもしれない。
しかし過去の歴史を知る消費者にとっては、車格を落としての買い替えとなり、心のうちに抵抗が生じるのではないか。
逆にプリウスやアクアのように新しく生まれた車種であれば、ダウンサイジングという世の中の動きもあり、時代に合わせた購入と自身を納得させることができるだろう。
SAIからカローラセダンのハイブリッドへ買い替えた人が近所に住んでいる。昔からの上下関係とは無縁の車種での買い替えは素直にできるという一例ではないか。
自動車メーカーの都合もあるだろうが、消費者心理といったことへの配慮も車種の統合の際には意識してもらいたいと思う。
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