なぜ三菱はコルトをやめてミラージュを復活させた?? “まじめ”な力作だけにもったいない!!

ヴィッツやフィットにも見劣りしなかった力作「コルト」

三菱コルト(販売期間:2002年~2013年/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)
三菱コルト(販売期間:2002年~2013年/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)

 ちなみに三菱は、2002年にコンパクトカーのコルトを発売した。コルトは2003年には6万2453台、月平均で約5200台を登録しており、同年のヴィッツ(1か月平均で約5900台)に迫る売れ行きだった。三菱の販売店舗数が少ないことも考えれば、当時のコルトは人気車だった。

 コルトがミラージュに比べて多く売られた背景には、当然ながら商品力の違いがある。初代コルトは、当時のライバル車だったヴィッツやフィットの初代モデル、2代目デミオ、3代目マーチなどと比べても見劣りしなかった。

 全長は3870mmとコンパクトだが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2500mmと長く、後席の足元空間にも余裕があった。

 内装ではインパネ周辺の造りが上質で、前席が座り心地の快適なベンチシートになるグレードも用意している。コンパクトカーでありながら、ミドルサイズセダンのような質感を味わえた。

 助手席の座面を持ち上げると、買い物袋を引っ掛けるフックが備わり、走行中に荷物が倒れにくい配慮も見られた。

コルトには、標準装備以外の装備を自由に選択できるカスタマーフリーチョイスというサービスがあった
コルトには、標準装備以外の装備を自由に選択できるカスタマーフリーチョイスというサービスがあった

 さらにコルトは、カスタマーフリーチョイスという新しい装備の選び方も生み出した。推奨パッケージはあるが、全車に標準装着される装備以外は、基本的に自由に選べる方式だ。

 従って上級の1.5Lエンジンを搭載しながら、電動格納式ドアミラー、オーディオ&スピーカー、タコメーターなどを省く選び方も可能だ。カスタマーフリーチョイスを成立させるため、三菱は社内の受注システムを大幅に刷新した。

 ただしカスタマーフリーチョイスを実践すると、人気の装備を標準装着しながら、価格を割安に抑えた特別仕様車は設定できない。コンパクトカーとは相性が悪く、ミニバンのグランディスにも採用されながら定着しなかった。

 それでもポルシェなどは、細かな装備まで自由に選べる。高価格車から実践すれば、成功した可能性もある。後年になって三菱の開発者は「パジェロなどで始めるべきだったかもしれない」と振り返った。価値のあるシステムだっただけに残念だ。

廃止されたコルトと復活したミラージュの“ジレンマ”

6代目ミラージュ(販売期間:2012年~/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)※写真は2016年マイナーチェンジ版
6代目ミラージュ(販売期間:2012年~/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)※写真は2016年マイナーチェンジ版

 このように力の入ったコルトに比べて、ミラージュは2012年の発売時点から魅力がいまひとつであった。

 この時点ではコルトがモデル末期ながらもラインナップされ、ミラージュは後継車種とされながら、ボディはひとまわり小さい。現行ミラージュの全長は3855mmだが、発売時点では3710mmだ。全幅は今でも1665mmと狭く、ホイールベースも2450mmと短い。

 それならミラージュのセールスポイントは何かといえば、新興国でも販売しやすい低価格、低燃費、コンパクトな扱いやすさを挙げている。

 エンジンはコルトが直列4気筒の1.3Lと1.5Lだったのに対して、発売当初のミラージュは直列3気筒1Lだ(今は直列3気筒1.2L)。車両重量は870kgと軽く、JC08モード燃費は27.2km/Lを誇ったが、燃費数値は時間が経過すればいつかは追い抜かれてしまう。

 運転すると乗り心地の硬さに驚いた。ブリヂストン・エコピアEP150など低燃費を追求したタイヤを装着して、指定空気圧は270kPaと際立って高い。サスペンションもコスト低減を強いられ、乗り心地に不利な条件が重なっていた。

 ボディは軽いものの、直列3気筒1Lエンジンの最大トルクは8.8kgm(5000回転)だったから、実用回転域の駆動力は乏しい。

 登坂路ではアクセルペダルを深く踏むことになり、ノイズも高まった。内装の質感にも不満があり、ホイールベースが短いために後席の足元空間も狭い。

 その結果、発売の翌年に当たる2013年の登録台数は月平均で1000台に達したが、2014年には466台と半減した。改良を受けながらも、2017年は326台、2020年は先ほどの185台まで下がった。

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