純ガソリン車の魅力は「音と振動」
ハイブリッド車であっても、「クルマを操る喜び」や「爽快な加速」などのドライビングプレジャーは体感できる。むしろ、電動化されたことで、静かかつ滑らかで力強い加速フィールは、純ガソリン車よりも、「爽快感」を感じる人のほうが多いと思う。
筆者も、電気自動車を初めて運転した際には、モーター駆動によるあまりの滑らかさに感激し、もう純ガソリン車に戻らなくてよいと思ったほどだ。そうした状況を元に、リーフを手に入れたという流れでもある(ちなみに、定額で充電し放題で、コスパが良かったことも気に入ってた)。
だが、いざリーフを所有してみると、快適な無音走行がつまらなく感じるようになった境目があった。クルマが無機質な移動体のように感じ(実際のところ機械なのだが)、長年慣れ親しんだ「エンジンの音や振動がない」こともあり、愛情が注ぎきれなかった。
航続距離の少なさや充電の手間などが問題ではなく、再びEVを買いたいとは思えなかったのは、慣れ親しんだ「エンジンの音と振動」に対する喪失感が原因だったのではないか、と思っている。自動車メーカーとしては、技術的には消さなければならないはずのノイズだが、それこそが「純ガソリン車の魅力」だと筆者は思うのだ。
環境保全のため、そして人間の健康を阻害しないため、排ガス規制や車外騒音規制を厳しくするのは仕方がないことだ。そして、ハイブリッド車やプラグインHV車の動力性能と燃費には、本当に恐れ入る。試乗レビューなどで「お薦めは?」と聞かれれば、(もちろんクルマによるが)ハイブリッド車を推すことが多い。
しかし、筆者にとっては、クルマの音(音色と表現したい)」とは、けっこう大切な「魅力性能」だ。昔のなごりでもある、スバルのボクサーサウンドや、第2世代スカイラインGT-Rの直6ツインターボの痛快なサウンドなど、クルマの「音と振動」は、クルマが呼吸しているような感じがするのだ(ちょっと大げさかもしれないが割と本気で思っている)。
ポルシェがBEV(Battery EV)のタイカンを出したように、今後、残されている国産スポーツカーたちも、電動化やEV化は避けられないかもしれない。だが、GT-RやフェアレディZ、ロードスターのような国産スポーツカーがハイブリッド化しようとも、「サウンド」は残してほしい。
五感のひとつである「音」を刺激されることに対して魅力を感じるのは、筆者だけではないはずだ
ASCにはめっちゃ期待!!
最近では、特定のノイズを打ち消すためにスピーカーから逆位相の音を発生させるANC(アクティブノイズコントロール)の反対に、最適なエンジン音を、スピーカーを通して車内に流すようなASC(アクティブサウンドコントロール)なる技術も増えてきた。
かつて試乗したプジョー308は、ドライブモードをSPORTに入れると、エンジンサウンドがはっきりと「野太い音質に変わった」のを覚えている。電子的なギミックとはいえ、こういった「遊び心」は、電動化時代において、クルマの魅力のひとつとなるだろう。
ぜひ皆さんの意見を聞かせてほしい。自動車メーカーとしては環境対応への流れを受け入れつつ、一方で重要な顧客である「クルマ好き」の意見には触れたい、と思っているはず。みなで未来の理想のクルマを語っていくことは、クルマ業界を盛り上げていくことになるはずだ。
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