■ホンダ ゼスト/2006年
1998年に軽自動車が今と同じ規格に改訂されると、売れ行きに弾みが付き、国内で新車として売られるクルマの30%以上を占めるようになった。
当時、ホンダの軽自動車ではライフが主力だったが、軽自動車人気の高まりに応じて上級車種も必要とされた。そこで2002年にザッツを投入したが、外観とは対称的に後席が窮屈で、内外装も不評だから売れ行きは伸び悩んだ。
そこで2006年にゼストが発売された。後席と荷室が広く、フロントマスクにも存在感が伴う。内装の質を高め、前席もベンチシート風の形状でリラックスできた。全高は2WDが1635mmだが、当時の軽自動車では開放感が伴い、発売された2006年には月平均で約6000台が届け出されて人気車になった。
この後、2011年の末に、全高が1700mmを超えてスライドドアを装着する先代(初代)N-BOXが発売された。ゼストも2012年の終盤までN-BOXと併売された後に、販売を終えている。ゼストが礎を築いた上級軽自動車の路線は、N-BOXが継承して大ヒットに繋げた。
■日産 初代リーフ/2010年
初代リーフは2010年に発売された。世界初の量産電気自動車だから、初代プリウスと並んで偉大なクルマだが、売れ行きは伸び悩んだ。2011年は東日本大震災があったから除くとして、2012年の登録台数は1か月当たり700~900台に留まった。
それでも初代モデルだから、改良を行う余地は多く、複数回のマイナーチェンジを実施した。2015年には30kWhのリチウムイオン電池搭載車を追加して、従来の24kWhに比べると、1回の充電で走行可能な距離を伸ばした。30kWhでは、1回の充電によりJC08モードで280kmを走行できた。
この間に大半の日産ディーラーには急速充電器が設置され、時間の経過に伴ってリーフの利便性も向上していく。リチウムイオン電池の劣化に伴う航続可能距離の低下など、リーフの課題も明らかになってきた。
そこで2代目の現行リーフでは、1回の充電で走行できる距離を伸ばした。現行型は40kWhがWLTCモードで322km、JC08モードなら400kmを走行できる。62kWhになると、WLTCモードで458km、JC08モードなら570kmに達する。初代リーフの築いた礎により、現行リーフの商品力が飛躍的に高められた。
■マツダ 3代目プレマシー/2010年
3代目プレマシーが礎になったのは、ミニバンや3列シートの話ではない。今のマツダが重視する走行安定性の転換点になったことだ。
2000年以降に発売されたマツダ車は、全般的に機敏に良く曲がる運転感覚を重視した。当時のマツダは業績が悪化しており、元気の良いクルマ造りをテーマに掲げることで(Zoom-Zoomコンセプトと呼ばれた)、売れ行きの回復を目指したからだ。
良く曲がる運転感覚自体は悪くないが、当時のマツダ車は、機敏な操舵感の影響で後輪の接地性が低下していた。初代アテンザ(2002年)、2代目デミオ(2002年)、2代目プレマシー(2005年)、CX-7(2006年)は、この傾向が強く走行安定性が悪かった。
特に2代目プレマシーは、高重心のミニバンだから、走行安定性の悪化が顕著だ。車両の進行方向が機敏に変わってスポーティに思えるが、危険を避ける目的でカーブを曲がっている時にアクセルペダルを戻したり、下りカーブでブレーキペダルを踏んだりすると、後輪の接地性が失われやすかった。
そこで2010年発売の3代目プレマシーでは、走行安定性と操舵感に対する考え方を改めている。後輪を最優先で安定させ、その上で操舵角に応じて自然に曲がる運転感覚を目指した。
そして2006年以降のマツダは、走りのバランスを高めた3代目プレマシーと併せて、スカイアクティブ技術の開発も並行して進めていく。
つまり機敏によく曲がる運転感覚を重視したZoom-Zoomコンセプトのクルマ造りと、先代CX-5から始まった正確性の高いスカイアクティブ技術の商品開発、この2つを繋ぐ架け橋が3代目プレマシーであった。まさに今のマツダ車の礎になるクルマだ。
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