なぜ国産は衰退!? 水野和敏が語るセダンの本質と「あるべき姿」

なぜ国産は衰退!? 水野和敏が語るセダンの本質と「あるべき姿」

 ミニバンや軽、さらにはSUVブームに押され「凋落の一途を辿る」といった表現が定着してしまった感のあるセダン。

 しかし、R35GT-R開発責任者・水野和敏氏はそこに異を唱える。「日本のセダンマーケットが縮小したのではない」と。一体どういうことなのか。長文になるがお付き合いいただけたら嬉しい。

※本稿は2021年3月のものです
文/水野和敏 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年4月10日号

【画像ギャラリー】歴代クラウン、欧州のプレミアムサルーンたち…ギャラリーで「日本のセダン」の現在地を俯瞰する


■「セダンが売れていない」「セダンの時代は終わった」は本当か?

 読者の皆さん、こんにちは、水野和敏です。

 今、「日本ではセダンが売れていない」、「セダンの時代は終わった」などと言われていますが、本当にそうなのでしょうか?

 私はエンジニアとして言いますが、それは違うと思います。

日本のプレミアムクラスセダンが販売低迷に陥っている理由を分析する水野さん
日本のプレミアムクラスセダンが販売低迷に陥っている理由を分析する水野さん

 国産のプレミアムセダンがセダン本来の価値“プレミアム・ステータス”という本質の進化や提案を忘れ、前型からの代わり映えを狙ったり、さぼったモデルチェンジを繰り返した結果の、市場での反応にすぎないと思っています。

 日本国内でもプレミアムの新しい価値を提案し、技術進化や性能向上に裏付けされたデザインの欧州製セダンやクーペは売れていますし、需要も減少していません。

 モデルチェンジの内容が希薄で、作り替えのように感じさせる国産車とアメ車のセダンが売れていないだけです。

 では、なぜセダンが売れていないと言われるのでしょう?

 みんなが言っているのではなく、国内自動車メーカーの販売とマーケティング部門の担当者、そしてディーラー、それらを記事にする評論家の方々が言っているのです。

 確かに国産車の結果はそうです、しかしプレミアムセダンというカテゴリーが原因ではありません。

 昨年の販売台数を見てみましょう。

昨年(2020年)のセダンの年間販売台数
昨年(2020年)のセダンの年間販売台数

 日本を代表するプレミアムセダンのクラウン、昨年1年間で2万2173台の販売台数でした。月間平均にして約1848台です。これは前年対比61.4%に落ち込んでいます。

 ちなみに国内年間販売台数の上位は、例えばヤリスが10万4660台(8721台/月)、フィット=9万8209台(8148台/月)などで、大型ミニバンのアルファードも9万748台(7562台/月)、人気のSUV、RAV4は5万4848台(4570台/月)です。

 クラウンは国産セダンとしては「圧倒的に」売れているのですが、それでもヤリスやフィットのようなコンパクトカーの4分の1、RAV4の半分以下です。

 そのクラウンも、前型だった2015年の販売台数は3万6860台(3072台/月)、2010年は4万636台(3886台/月)、2005年は7万9557台(6629台/月)で、20年前の2000年は10万1031台で、昨年のヤリス並みの販売台数でした。つまり、この20年で4分の1に減っているのです。

2000年からのクラウン販売台数の推移
2000年からのクラウン販売台数の推移

 クラウン以外の国産セダンは壊滅的です。

 昨年の年間販売台数を見ると、カムリが多少は存在感を示しているものの、それでも1万2085台。

 スカイライン=3891台、アコード=3731台、インサイト=3414台で、レクサスISが1889台、レクサスLSが1781台と惨憺たる台数です。

 孤軍奮闘ともいえるクラウンですが、そうはいっても現行型になって、前型から半減と、大きく販売台数を落としています。重要なことは、モデルチェンジで台数を減らしているということです。

 しかし例えば、ベンツCクラスやBMW3などのプレミアムセダンは世界で年販20万台超える生産台数で途轍もない収益源になっています。

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