■アメリカのユーザーにとっては大きなメリット
デジタルショールームにおけるオンラインでの新車購入は、すでにテスラがサービスを実用化しており、アメリカでは三菱自動車が2番目の事例となる。
こうしたオンライン新車購入について、衣料や食品など日用品から趣味用グッズまでアマゾンなどの電子商法(EC)が一般的になってきた2010年代から、ユーザーの間で要望する声が高まっていた。
その理由として、長年に渡るユーザーの自動車ディーラーに対する”不信感”がある。
アメリカでは一般的に、「日常生活で必要がなければなんとか行きたくない場所は、歯医者と自動車ディーラー」という認識がある。
歯医者は、治療中の痛みに対する不安感。
一方、自動車ディーラーに対しては、ディーラー販売員との値段交渉に対する面倒くささと、それに伴う値引き額の適正化に対する不信感が根強くある。
前述のように、クリックショップでは在庫がリアルタイムでわかるのだが、アメリカの自動車ディーラーはメーカー直系の経営体制を敷くケースはほとんどなく、独立系企業がディーラー契約をして、メーカーから新車を買い取る形で在庫を抱えて販売するのが一般的だ。
そのため、グレードや色、そしてメーカーオプションなど、最終組立工場に対する発注を各ディーラーが事前に、複数回に分けて行う。
もちろん、ディーラーからメーカーへの個別発注も可能ではあるが、多くの場合はディーラーの手持ち在庫から販売されるし、ディーラーとしてもユーザーに対して在庫販売を推奨する。クリックショップでのカスタマイズは、基本的にディーラー在庫に対するディーラーオプションを意味していると思う。
要するに、アメリカではイヤーモデルと称して、毎年夏前から翌年の春過ぎまでに、その年のモデルの販売を消化するというサイクルで動いているのだ。
そのため、ディーラー側の言い値がユーザーの来店する時期によってかなり差が出るなど、支払い総額が不透明というイメージをユーザーは持つようになった。
実際、筆者もこれまでアメリカでさまざまな新車を購入してきたが、その都度ディーラーでのやり取りに対して違和感があった。
こうしたアメリカにおける自動車販売の手法に対して、デジタルショールームにおけるオンラインによる新車購入の効果は高い。
■デジタルショールームは日本でも普及するのか?
このように24時間営業デジタルショールームでの新車オンラインショッピングは、アメリカでの導入メリットが大きい。しかし、ユーザーとの契約ごとにメーカーに発注する日本の新車販売形式では導入メリットがないのではないか、という解釈もできる。
だが、現実的には日本でのオンラインでの新車販売を実用化する動きが出てきている。
具体的には、ボルボが2021年中に発売するEVのC40から採用する。ボルボによると「2030年までにグローバルでEV専業メーカーに完全移行し、販売方法はオンラインが主体となる」としている。
日本市場では2025年までに販売台数の25%をEVとし、販売方法はオンラインとし、2030年に完全移行する。
日本メーカーにとっても、EVシフトをきっかけにオンライン販売強化の動きが高まる可能性もある。
2030年頃には日本でも新車はオンラインで決済まで完了する時代がやって来るのかもしれない。
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