ベンツ本気のEV! 「EQS」を発表したメルセデスはEV戦略でも世界をリードするのか?

■EV時代に直6エンジンを新開発する意義

ベンツ直列6気筒エンジン。ターボと電動スーパーチャージャーに加え、モーター兼発電機が装着される
ベンツ直列6気筒エンジン。ターボと電動スーパーチャージャーに加え、モーター兼発電機が装着される

 前型のSクラスで2014年に直列6気筒エンジンを新開発し、搭載した。現行Sクラスでも継続使用されている。衝突安全性能を向上させるため、V型6気筒エンジンを採用してきたメルセデス・ベンツが、なぜ改めて直列6気筒エンジンを新開発したのか?

 モーター機能付き発電機(ISG)と、電動スーパーチャージャー、さらにターボチャージャーまで搭載したこの新直列6気筒ガソリンエンジン。

 モーター機能による低速トルクの補助と、電動スーパーチャージャーによるアクセル操作への素早い応答、そして回転が上がってからのターボチャージャーによる伸びやかな加速を利用したエンジン特性をつくることで、あたかもモーター駆動であるかのような乗り味を実現した。

 当然ながら、直列6気筒であれば振動は極めて少ない。一方の衝突安全については、エンジン前端に通常ある補器のためのベルト駆動部分をなくし、全長を短くして前面衝突時の衝撃吸収構造を損なわないようにした。

 EV時代を見据え、EVをエンジン車に似せて違和感をなくすのではなく、エンジン車をEVに近づけ、来るべきEV時代に違和感なく消費者を導こうとしているのがメルセデス・ベンツだ。その逆を考えるのが、日本の自動車メーカーだ。例えば、マツダMX‐30のEVが象徴する。

 Sクラスは、2009年にBMWと同じ機構を利用したハイブリッドを導入し、2014年にはPHEVも車種に加えるなどしながら、多くの人が購入するエンジン車でモーター駆動の運転感覚を経験させ、EQSの導入を迎えたと私は見ている。

 周到な地固めはメルセデス・ベンツが得意とするところであり、同時にまた、長期的に未来を見据えて基礎を積み上げ、自ら描いた未来像を確かめるしたたかな戦略でもある。

 改良していけばよいクルマができるとし、将来の具体像を描かないクルマづくりに比べ、自動車を発明した自負と責任が、メルセデス・ベンツには体現されているのである。

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