雌伏の時を越えて生まれたのはあのクルマ! ロータリーエンジンの歴史を振り返る【第2回】

■低迷期の地道な改良があの名車を生んだ

レシプロエンジン併用を前提として設計された3代目ルーチェ。広いエンジンルームはロータリーエンジンにとってはやや大きすぎるスペースだった
レシプロエンジン併用を前提として設計された3代目ルーチェ。広いエンジンルームはロータリーエンジンにとってはやや大きすぎるスペースだった

 ただ、マツダが立派だったのは、この低迷期にも地道なRE改良を続けたこと。ガスシール性を向上させるためのアペックスシールの改良や、“スーパーインジェクション”と名付けられた吸気脈動利用の共鳴過給、可変吸気ポートでトルク特性を向上させた6PI(これは12A型のみ)など。

 電子制御燃料噴射システムの採用と相まって、さまざまな技術トライが行われている。そして、これらがのちにRE復活をアシストする技術要素となる。

 REにとっての逆風が続く70年代中盤、マツダ社内では「RE本来の持ち味とポテンシャルを活かすクルマはどうあるべきか?」という議論が続いていたが、その結論は「もういちど原点に戻って考える」というものだったという。

 REは高性能が大きな魅力だが、もうひとつ小型軽量というメリットも見逃せない。2代目コスモや、3代目ルーチェのエンジンルームは、レシプロエンジン併用を前提としているため、REにとってはスペース過剰。はたして、そこにREを搭載する意味があるのかという疑問が顕在化してくる。

 そこから導き出される答えは、REは軽量・コンパクト・ハイパワーを狙ったクルマにこそ搭載すべし、というもの。そのコンセプトから生まれるのが、1978年登場の初代RX-7(SA22C)なのである。

■REの長所である『コンパクトなパッケージング』が活かされた

軽量、コンパクト、ハイパワーというロータリーエンジンの長所を凝縮したような車として誕生した初代RX-7
軽量、コンパクト、ハイパワーというロータリーエンジンの長所を凝縮したような車として誕生した初代RX-7

 初代RX-7のエンジンルームを覗いてみるとわかるが、12A型REは前車軸より後ろ、いわゆるフロントミッドシップに搭載されている。低いボンネット内にここまでコンパクトにエンジンを収めるのは、レシプロではとても不可能。まさにREならではのパッケージングで、これこそがREの魅力なのだ。

 初代RX-7に搭載されたエンジンは、最初期のサーマルリアクター型12Aから、希薄燃焼型12A、6PI型12Aへと燃費向上のための進化を続けてゆくのだが、なんといっても最大のインパクトは1983年デビューの12A型ターボの登場だった。

 12A型ターボそのものは、約1年前に3代目コスモに搭載されてデビューしているが、軽量コンパクトな初代RX-7に与えられた165ps/6500rpm、23.0kgm/4000rpmのパフォーマンスは衝撃的。

 いまでは考えられないが、発表当時マツダ主催の最高速チャレンジ試乗会(!)が谷田部テストコースで実施され、ぼく自身も実速220km/hオーバーを体験している。REはスポーツカー用高性能エンジンとして、まさに劇的な復活を遂げたのだった。

 初代RX-7の成功によって、これ以降REの進むべき道がほぼ決まったといっていい。

 1980年代前半の時点で、マツダのRE搭載車はRX-7、3代目コスモ、4代目ルーチェの3車種だったが、RX-7以外はレシプロエンジンとの併用モデル。

 ソアラの2.7Lツインカムやセドリックのターボなど、ライバルのレシプロ高性能エンジンが充実してくると、レシプロ併用モデルではREの販売比率がどんどん低下してしまうのだ。

 やはり、REはRE専用スポーツカーに使わないとその魅力が発揮できない。マツダが腹を括ったのがこの時期だったといえる。

 それからのREは13B一本に絞ってスポーツカー用としてのポテンシャルに磨きをかけることに専念する。

次ページは : ■RX-7の進化と共に歩んだRE黄金期

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