もはや“オートマ”も風前の灯火!? 自動車から変速機が消える日はくるのか

HVも国産の主流は変速機「なし」 高級車はどうなる?

ホンダ フィット。ハイブリッドはトランスミッションが介在しないe:HEV。7速DCTを採用した先代モデルから刷新された
ホンダ フィット。ハイブリッドはトランスミッションが介在しないe:HEV。7速DCTを採用した先代モデルから刷新された

 また、ハイブリッド車のなかでも、最高速度140km/h程度を想定した、e-POWER(日産)やe:HEV(ホンダ)、THS II(トヨタ)を積んだコンパクト~ミドルクラスハイブリッド車は、有段トランスミッションになることでのデメリット(レイアウト、メンテナンス性、コスト等)を避けたいという狙いがある。

 超高速までカバーするのではなく、使われやすい速度領域を狙ったうえで商品化されている。そのため、これらのハイブリッド車においても、日本の道路事情がよほど変わらない限り、今の姿のままいくだろう。

 しかしながら、冒頭で触れたような、多段トランスミッションをもつ高級ハイブリッド車は、ちょっと事情が異なる。

 これらのクルマには、燃費向上や加速強化といったパフォーマンス以外にも、加速のサウンドやフィーリングといった、「感性」に訴えるような魅力性能を重視する必要がある。

 モーター駆動のシームレスな加速は、一度慣れると「退屈」になりがちだ。そのため、高級ハイブリッド車たちは、燃費効率と加速強さを上げながらも、如何にして、他社に対して差別化を図り、魅力として売り込むかを考え、多段トランスミッションとしているのであろう。

レクサスのマルチステージハイブリットは、10速ATを模した変則制御を行っている。高速走行時のエンジンの回転数が可能なかぎり低く抑えているため、低燃費かつ静かな走りを実現した
レクサスのマルチステージハイブリットは、10速ATを模した変則制御を行っている。高速走行時のエンジンの回転数が可能なかぎり低く抑えているため、低燃費かつ静かな走りを実現した

 トヨタ レクサスのマルチステージハイブリッドは、10速ATを模した変速制御を行っている。10速に入った後は無段変速となり、エンジンの回転数を可能な限り低く抑えるように設計されている。

 また日産の1モーター2クラッチのハイブリッドシステムも、気持ちのいい加速フィールを目指したという。この手の複雑なシステムには、コストが多くかかるが、顧客の満足度を考えると、譲れないシステムなのであろう。

 このような有段トランスミッションもつ高級ハイブリッド車は、将来的には、プラグインハイブリッド車やBEVへと置き換えられ、姿を消すかもしれないが、個人的には、メーカーエンジニア達が拘った究極のハイブリッド車たちには、生き残っていてほしいと思う。

海外のBEVに2速トランスミッション化の流行が!?

2019年に登場した、ポルシェのBEVタイカン
2019年に登場した、ポルシェのBEVタイカン

 ポルシェ タイカンが、業界初となる自社製「2速トランスミッション」を備えて登場したことは、ちょっとしたニュースになった。

 前述したとおり、低速から高速走行まで、モーターと1速の固定ギアで対応ができるはずだが、ポルシェによると、その狙いは、「加速の強さと最高速度を両立し、さらには航続距離を伸ばすこと」だという。

 タイカンの最高速度は260km/hにも達する(※タイカンターボS)。560kW(761ps)を発揮し、0-100km/h加速は2.8秒。まるでガソリンターボ車のようなパフォーマンスだ。

 ここまでの高性能を、他の自動車メーカーが追うとは考えにくいが、航続距離を伸ばせる可能性があるならば、導入を考える可能性は多いにありうる。

後輪のアクスル上に配置されたトランスミッションは、初期加速用の1速と、高速走行時用の2速を持つ
後輪のアクスル上に配置されたトランスミッションは、初期加速用の1速と、高速走行時用の2速を持つ

 実際に、ドイツの自動車サプライヤZFでは、BEV用の2速トランスミッションの開発を発表している。航続距離の延長に振ることもできるし、同等の航続距離であれば、バッテリーの小型化もできる、としている。

 問題は導入コストだが、VWグループや、ステランティスグループといった単位で導入すれば、ぐっと身近なものになるはずだ。

 こうした流れを考えると、トランスミッションは無くなってしまうことはなく、むしろ海外のBEVにおいては、採用が進んでくることも考えられる。ただ、膨大なコストがかかるため、国内メーカーがすぐに動くことは考えにくいであろう。

【画像ギャラリー】本稿で登場したポルシェタイカン&タイカンターボS写真20枚+α

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