■フォード傘下で迎えた大きな危機と思わぬチャンス
その後のマツダはバルブ崩壊のあおりで経営危機に見舞われ、1996年にはフォードからの出資比率が25%から33.4%に引き上げられてヘンリー・ウォレスが初の外国人社長に就任する。
バブル崩壊後の景気低迷期に求められたのは何よりもコストダウン。フォード傘下で厳しいコスト管理が行われ、REは再び存続を危ぶまれる事態に追い込まれてしまう。
おりしも、1996年には4代目コスモの生産が終了し、REは3代目RX-7用の13B-REW型を残すのみ。もはやREの命運は尽きた。誰もがそう思っていた。
ところが、世の中というのは面白いもので、ここから思いもかけない奇跡が起こる。
きっかけを造ったのは、REをなんとか存続させるべく活動していたマツダの技術者有志だったが、彼らがこっそり温めていた次世代ロータリースポーツの企画案に、なんとフォードからやってきた技術担当役員が食いついたのだ。
英国人マーティン・リーチとその後継者となった米国人フィル・マーテンス。この2人の“ガイジン”が居なければRX-8は生まれなかった。担当主査を務めた片渕昇をはじめ、すべてのマツダ技術者がそう口をそろえるほど、彼らは熱烈な応援団となってフォード本社にRE復活を粘り強く訴えるのだ。
その成果が、2003年にデビューしたRX-8と、それに搭載された“RENESIS”13B-MSP型である。
■最後のロータリーと未来のロータリー
燃費規制の強化を見越してNAとなった13B-MSP型は、デビュー以来はじめて排気ポートをペリフェラルからサイドに変更。吸気ポートはノーマル仕様の4ポートとハイパワー仕様の6ポートの2種が用意され、ハイパワー仕様で追加された2つの補助ポートはモーター駆動の可変ポート(S-DAIS)として機能する。
ターボを廃した結果パワー特性は徹底した高回転型となり、ノーマル仕様で210ps/7200rpm、22.6kgm/5000rpm、ハイパワー仕様で250ps/8500rpm、22.0kgm/5500rpmというスペック。
初代コスモスポーツを彷彿させるような高回転型REが21世紀に復活するとは意外だったが、高回転領域でのフリクション増加がレシプロに比べて緩やかなのがREの特徴。高回転型エンジンが生き残る余地が、レシプロよりほんの少し大きかったわけだ。
RX-8の生産が終了した2013年4月以降、現在まで市販REは絶版となっているが、REファンにとっての朗報は2020年にレンジエクステンダー用エンジンとしてRE復活するというニュース。
これまでのREとはまったく異なる発電専用エンジンで、スペックその他すべて未発表なのだが、やはりマツダにとって市販REの復活はブランド戦略的にも無視できない。電動化時代のREの登場を、ぼくも大いに楽しみに待ちたいと思います。
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